「リーダーの心得」とは

 これからの企業は、メンバー一人ひとりがほんとうの意味で自発的に行動しなければ成果があがらない。したがって「黙ってついてこい」式のリーダーシップや家父長型のリーダーシップは通用しないだろう。

 メンバーの自発性を起点にするという意味では、「フォロワー」とか「フォロワーシップ」という言葉にも多少の違和感をおぼえる。むしろ「メンバー」と呼ぶほうがふさわしい。

 市場や社会の要求に応えようと自ら行動するメンバーに必要な情報を与え、側面から支援するリーダーシップ。それを私は「インフラ型リーダーシップ」と呼んでいる(『仕事人(しごとじん)と組織 -インフラ型への企業革新-』有斐閣、1999年)。

 ただ「インフラ」の中身は、組織と人が置かれている環境によっても差がある。とりわけ日本人、そして日本的風土のもとでは、メンバーは自分の利害や本音を表に出さない(出せない)。しかし、それがメンバーの行動を左右していることは間違いない。それどころか、表に出ないだけに無秩序に暴走する危険性もある。

 したがってわが国のリーダーは、メンバーの隠れた利害や本音をくみ取り、それを組織の目標と調和させる必要がある。

 いくら立派な目標やビジョンを掲げても、メンバーの隠れた利害やホンネと調和しなければ、ほかの理由をつけて反対される。逆にそれと調和し、互いにWin-Winの関係になれば、放っておいても協力する。どんな組織を見ていても、失敗するリーダーと成功するリーダーを分けるのはそこである。

 メンバーの隠れた利害や本音を敏感に嗅ぎ取り、組織の目標と調和させること。それが日本型リーダーに求められる能力であり、心得である。


「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。