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PMOのお仕事~人材育成~

はじめに

何年か前と比べるとPMO関連の求人をみかけることが多くなりました。
私が勤めている会社でもほとんどのプロジェクトで体制にPMOやPMO組織が組み込まれています。
これらは概ねプロジェクトを支援するプロジェクトPMOだと思われます。
PMO関連求人をみてよく知らずに応募する人も多いようですが、そういう人たちはPMOにどのようなイメージをもたれているのだろうと不思議な気持ちになります。
想像されているイメージと合致するかどうかわかりませんが、PMOのお仕事についていくつか紹介してみたいと思います。
今回は人材育成に関して少し触れてみて、次回にプロジェクト支援の話を書いてみようと思っています。

PMOによる人材育成とは

PMO業務のひとつに人材育成があります。そもそもPMOが人材育成する目的は何でしょうか。
大きな視点で見ると組織レベルのPMOが人材育成する先には必ず組織の(会社の)業績向上があります。PMOの立場で業績向上に貢献するには、直接的なPMO活動として失敗プロジェクト撲滅、赤字プロジェクトの撲滅、品質向上、納期遵守などによる事業部門の受注拡大、売り上げ拡大利益率向上などが例として挙げられます。また、経営幹部に正しい経営判断をしてもらうために正確かつ整理された情報を適切に提供する必要があります。

そういった活動を効果的に実施できる人の多くは、数々のプロジェクトを成功に導いたり、時にはプロジェクトを危機的状況からリカバーして最悪の結末から救い出すような経験を積んだり、さらにはある程度の大きな組織の組織長やそれに準ずる役割を担った人でしょう。
そのレベルに達するまでに要する年月を考えると、これからPMOを目指す人には気が遠くなりますね。

さすがに一朝一夕にそんな人物になれるとは誰も思わないでしょうが、できるだけ楽に早くスキルアップしていきたいのは皆同じではないでしょうか。上級のPMO職の方々も組織が大きくなるにつれて自分で対応しきれるプロジェクト数やカバーできる組織範囲の容量を超えてしまうと責任をとれる活動ができなくなります。PMOの責務として、職務として後進のプロマネやPMOを育成していく必要があります。

プロマネのキャリアパス

プロマネやPMOを育成するには大まかに言って以下のようなパスが想定されます。

プロマネの育成

  1. プロジェクトメンバにプロジェクトマネジメント教育を施す

  2. プロジェクトリーダ、プロマネを育成する

PMOの育成

  1. 育成したプロマネの中から希望者・適任者を選出しPMOに職種変更

  2. 初めからPMOを育成する(これは難しい)

育成のパスに素直にのってくれるメンバが多い方がよいですが、誰もがそういうキャリアパスを望んでいるというわけではないし、そもそもパフォーマンスの良いプロマネがなかなか育たない状態では、せっかく育ったプロマネ職を現場から外してPMOに専任させる決断は相当難しいと思います。
とはいえ、一定レベル以上のプロマネがたくさん育成できれば、そこからPMOに職種変更する人が少なくても上級PMOにとって手がかかるプロジェクトが増え続けることを抑止できますね。
そういう意味では、上級のPMOがプロマネを育成することはPMOにとっても組織にとっても多くの価値を生み出すと言えるでしょう。

未成熟な組織で先にやるべきこと

未成熟な組織ではプロマネ育成と並行して、まずは組織でプロジェクトを成功させるための基礎・基盤として次の点を実行することが最初のステップとなります。

  • プロジェクトマネジメントそのものの普及

  • 組織としてのプロジェクトマネジメント・プロセスの展開、周知、徹底

これらによって、まずは個々の単一プロジェクトの成功率を上げ、組織でプロジェクト責任を担保するという組織文化を作ります。

プロマネや組織が体系的なプロジェクトマネジメント知識や技術を有効に活用できるようになってくると、次の段階として大規模案件や多数のプロジェクトが並行して稼働する状況のマネジメントに直面します。現実には、そのレベルに達していなくても、複数プロジェクトをかけもって苦労されている方も多くいます。

さらにマネジメントがうまく機能してくれば、そこには所属組織や他の組織との協働、他社との協働も視野に入れたマネジメントが必要となってきます。

プロジェクトマネジメントの基礎教育から

プロジェクトマネジメント教育と言っても、未だに品質教育に偏っている組織が多いのではないかと推測します。さらにいうと品質マネジメントシステム(ISO9001)だけに向いていることが多く、未だに組織の規定に書いてあることだけをやるのが目的になっている場合がよくあります。

プロジェクトを成功させるためには幅広い知識領域の学習が必要です。今さらではありますが、体系的なプロジェクトマネジメント知識を学習するにはPMBOKガイドやプロジェクトマネジメント標準を参考にするのが良策でしょう。
PMBOKガイド第6版か、今ならPMI実務ガイド「Process Groups: A Practice Guide」あたりの知識は押さえておくべきでしょう。PMBOKガイド第7版も大事ですが、その前に6版や実務ガイドの知識を身につけておく方がよいです。

また、プロジェクトに参画するメンバの誰もがマネジメントの基本的な知識を習得しておくのがよいでしょう。基礎的な知識はPMBOKガイド等を活用した教育で学習するとして、次の段階として、適性や実績を考慮して本格的なプロマネ教育を施すことになります。
プロマネのキャリアパスに進まないメンバも出てきますが、そういったメンバにもプロジェクトに参画するからには一定以上のマネジメントの知識を習得してもらいたいです。

対象となるメンバ全員に同等の教育を実施するのは時間的にも費用的にも難しいのが実情です。各メンバの現在の役割や近い将来なるであろう役割に応じてプロジェクトマネジメントのどの領域をどのように習得するかといった重みづけが必要となります。

教育でPMOを育成することが課題

育成すべき対象にPMOが含まれることは確実だと思いますが、PMOを育成するための教育やキャリアパスが明確に定義されている組織はそれほど多くないと思います。

多くの場合、プロマネのキャリアパスを通じてプロジェクト実務の失敗・成功の経験を数多く積み重ねた後、その経験やノウハウを組織に還元・反映すべくしてPMOに任命されることが多いでしょう。その結果、(事務局的なPMOではない)実務型PMOの多くが中堅というよりもお年寄りばかりというのが実態になっています。数々の大規模プロジェクトを指揮してきた人だけが実務型PMOになれるという状況にしてしまってはPMOのなり手が少なくなってしまいますね。

果たして、PMOという言葉が示す業務範囲や機能はどれほどのものなのか。詳しくは別の機会に譲りますが、私が所属する組織は全社レベルのPMOを標榜する組織ですが、そのうちの比較的若いメンバのほとんどは事務方として会議体の運営をしたり、会社のプロジェクト情報管理システムに登録されたデータを集計・加工して情報発信したりしています。何名かの重鎮が実プロジェクトのレビューや審査に出席したりプロジェクトルームへ赴いて直接指導したり、問題プロジェクトなどの状況確認をして経営層が経営判断をできる情報をエスカレーションしたりしています。
PMO専任組織を標榜する以上は、事務方オンリーやデータ加工屋ではなく、
プロジェクトを指揮・指導できるレベルのメンバをそろえたいものですね。

会社としてもPMOに関するキャリアパスが定義されつつありますが、その育成は従来のプロマネ育成の域を出ないのが現状のため、リスクの大きいプロジェクトや既に重大問題が発生しているプロジェクトを支援できるPMOを育成するための教育体系が求められます。

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