目を閉じるとあなたはずっと野球帽のままだ夕陽と傷は似ている

SNSのアカウントが墓標になり得るというのをこの数年間で何度か(具体的には三度)経験した。悲しいけれど。
エックス(旧Twitter)はマスク氏の意向でなんぼでもどうとでもなるというのがここ一年で実感できたし、彼らの墓標は非常に脆い土の上に立っている。



『王様戦隊キングオージャー』が先週最終回を迎えた。
良かったですねえ…………(オタク特有の長余韻)。
昨年は実家にしばらく帰っていた時期があったため、毎日曜日の朝に必ず実母に「キングオージャーに変えていい?」と確認してチャンネルを変えるという特大羞恥イベントが発生していた。そういう意味でも思い出深い戦隊になった。
スーパー戦隊はずっと好きだ。


わたしは中学生のころ通っていた女子校でいじめに遭っていた時期があって、いじめと一言でいうのはむずかしいけど、わたしの場合は持ち物を隠されたり傷付けられたり、無視をされたり、わざとじゃないというふうにどつかれたり、プールに顔を沈められたりした。ある朝登校したら自分の机が廊下に出されていたので教室で立っていて、それを見た担任教師にとても情けないことばをかけられたとき、これはもうだめだと思って学校に行くのをやめてしまった。
その時期はとても苦しかった。けど内心では(これが"戦隊"なら必ず最後に勝つのはわたしだな)という確信があったし、特撮のヒーローだけではなく好きだった本や映画が自分を(自分の心のなかの判断基準や倫理や正しさを)守ってくれていた。だからわたし自身は、わたしの心はあまり変わらずにいられた。

(変わらずにいられたのは、そもそもの事のきっかけが、クラスに蔓延していた他の子へのいじめや授業妨害にわたしが一切乗らなかったから という事情も大きい。
けどまあそのひとつだけではないのだろうし、当時わたしはかなり早熟で生意気でそのわりにぼんやりとした子どもだったと思うので、少しは変わった方が良いところもあるにはあったのだと今は思うけども……。)

学校に行かなければ気が楽になると思いきや、平日は"学校に行かなければいけないのに行っていない"というプレッシャーで死にそうだったので日曜日になると少なからずほっとした。ただほっとして休んでいることにも罪悪感があったし当時は心地のよい居場所というのが本当にどこにもなかったので、平日よりはましというくらいだった。
ちょうどわたしが中学生のころにやっていたのは『魔法戦隊マジレンジャー』で、そういうこころと体が内側から爆発しそうな状況のなかで観ていたこともあって"世代"の番組よりも思い出深い気がする。
『マジレン』は思い出補正を抜きにしても面白くて、熱くて、いまだに好きな戦隊のひとつだ。

スーパー戦隊は本当にシンプルに正しくいることを教えてくれる。大げさだけど、日曜朝にこれがある限りわたしのこころは大丈夫だという気持ちになっている。大人になって、居場所と思えるところをたくさん持てた今でも。


目を閉じるとあなたはずっと野球帽のままだ夕陽と傷は似ている
/湯島はじめ

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