金曜日一首評:「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳/岩倉曰
「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳
/岩倉曰『ハンチング帽のエビ』
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岩倉曰さんの第二歌集『ハンチング帽のエビ』からの一首。
この「わかるなあ…」感。大好きです。
とてもよくわかるのだけど、これまでそう思っていたのかといえば気がついていたわけではない。些細で、ありふれているようで、非凡でシャープな視点が岩倉さんの歌の魅力のひとつだと思います。
「英語ポーチ」っていう略し方、あたりまえのように登場するのだけどとても巧みだと思っていて、この文脈だから「…という英文が書いてあるポーチ」と伝わる感じがする。短歌ならではの省略といえばそうかも。
チープなイメージの「百均」と「洗脳」の取り合わせがまた良い。日常への異物の侵蝕のようなおそろしさがある。
昭和のファンシーグッズとかでも、こういうやたらとポジティブな英語(よく見たらただの日本語のローマ字表記だったりすることもある)が書かれたやつあるよね。自分なんかは実際にその時代に生きたわけではないので推測なんだけど、今と比べるとその時代は"みんななんかしらそういうものを持っていた"みたいなイメージがある。
ちょっと穿ち過ぎかもだけど、この歌の「弱い洗脳」っていうのはポジティブな英文の意味に対してだけではなく、そういうある種の同調圧力(とくに10代前後の女の子たちにみられるような)に対しての懐疑心みたいなところを感じる。
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スーパーのイルカのロゴの絶対にこっちを見ないという賢さ
/岩倉曰
古参のオタクが言ってることを遠くからそうなんだぁ……と思ってる夜
/同
花束とニラ束がありニラにするあなたもそうするだろうと思う
/同
(開いたページに必ず好きな歌があるので引用が追いつきません…。)
夜の静かな時間に読むというよりは、朝の満員電車で人がどっと降りたとき(座れはしない)みたいな、生活の中で読みたい気がします。
心からおすすめの歌集です。
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