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『積極財政宣言』のあらすじ

2015年4月27日に発売開始となった拙著『積極財政宣言:なぜ、アベノミクスでは豊かになれないのか』のあらすじをまとめてみました。

同書は、日本の経済や社会が「失われた20年」と呼ばれる長期停滞を続けているのは、政府が財政支出を抑制する「緊縮財政」を続けていることが原因であることを、様々なデータに基づいて解明した本です。
その意味では、いわゆるアベノミクスも、金融緩和に偏重した誤った経済政策である、というのが本書の結論であり、こうした状況を立て直すための「経済政策のあるべき姿」についても提言しています。

普段は経済本にあまり馴染みのない知人の意見も参考にして、できる限り簡単にまとめたものなので、既に手に取っていただいた方はもちろんのこと、そうでない方にも、「日本経済はなぜ長期低迷しているのか」「現状を解決するためにはどうすべきなのか」を理解するヒントとして、何らかの参考にしていただけるのではないかと思います。
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(以下はあらすじとなります)

日本経済は1998年以降成長が止まり、長期にわたるデフレ不況が続いてきました。
「経済成長=国民全体の所得の拡大」ですから、経済成長が止まったことで家計の収入は伸び悩み、雇用環境も若年層を中心に悪化し、企業の国内での収益環境も厳しい状況が続いています。
これに対して、日本銀行による大規模な金融緩和によってデフレ脱却を目指しているのが、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降行われている「アベノミクス」と呼ばれる経済政策です。
そして、こうした政策を提唱してきたのが、ミルトン・フリードマン以降のアメリカの主流派経済学の影響を受けた、「リフレ派」と呼ばれる経済学者・エコノミストのグループです。

しかしながら、こうした考え方は、「日本銀行は、ゼロ金利政策・量的金融緩和といった言葉に代表されるように、1990年代後半以降、通常をはるかに上回るペースで金融緩和を行ってきた」という事実と明らかに矛盾します。
むしろ、1997年の消費税増税と共に始まった政府支出の切り詰め、すなわち緊縮財政が経済の低迷を引き起こしているのが日本の現実です。
そして、「経済成長と密接なかかわりを持っているのは、金融政策ではなく財政政策である」というのは、1930年代の世界恐慌のような歴史的事例でも確認できる、世界共通の現象です。
すなわち、日本経済を再生して国民を豊かな生活に導くのに必要なのは、政府が増税を前提とせずに支出を持続的に拡大する「積極財政」と呼ばれる政策なのです。

そして、積極財政を行えば、経済成長が実現するだけではありません。
積極財政は、日本のバブル経済やリーマン・ショックの時に見られたようなグローバル金融危機、言い換えれば人間の経済活動に内在する不安定さを緩和し、社会全体に安定をもたらします。これは、第4章を中心に述べている「内生的景気循環論」から導き出される結論です。
また、一見逆説的なようですが、積極財政とは、国の借金あるいは財政破たんの問題を解消する政策でもあるのです。
さらに、積極財政のもとでは、東日本大震災に代表される大規模自然災害リスクや、原発事故によって顕在化したエネルギー供給リスクを軽減することによって、より良い社会の実現に近づくことも可能となるのです。

これに対して、ややもすると混同されがちなのですが、「アベノミクスの第二の矢=機動的な財政政策」とは、2014年度以降の景気低迷を引き起こした消費税増税を前提とした政策で、積極財政とはまるで異質のものです。
しかも、「成長戦略」や「構造改革」というスローガンのもとで、いわゆる新自由主義と呼ばれる非現実的な世界観に基づいた、社会の不安定化や格差拡大を促進するだけで経済成長にも国民の豊かさにもつながらない、あるべき姿とは逆行した政策を推し進めようとしています。

本書は、マスメディア等で述べられている一般的な議論とはある意味で真逆な上記の事実を、様々な具体的データを示しつつ、かつリフレ派や主流派経済学の議論の誤りを正しながら、一つ一つ解き明かしています。
そうした真実を一人でも多くの国民が理解し、投票行動や世論形成を通じて現実の政策に影響を与えることこそが、日本の経済や社会にはびこる停滞感を打破する真の処方箋なのです。
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【本書の目次】
第1章 「積極財政宣言」とは何か
第2章 失われた二〇年を検証する―「マクロ経済政策の失敗」以外の説明は可能か
第3章 金融政策か、財政政策か―大恐慌、昭和恐慌、そして失われた二〇年
第4章 内生的景気循環論で読み解く日本経済
第5章 経済政策のあるべき姿
第6章 おわりに―「より良い社会」を実現するために

【著者プロフィール】
島倉 原(しまくら・はじめ)
1974年生まれ。経済評論家。1997年、東京大学法学部卒業。株式会社クレディセゾンに所属し、株式会社アトリウム担当部長、セゾン投信株式会社取締役などを歴任。景気循環学会会員。現在、京都大学大学院工学研究科博士課程に在籍中(都市社会工学専攻)。会社勤務と学業の傍ら、インターネットを中心に、積極財政の重要性を訴える経済評論活動を行っている。


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