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「肺」は「気や水を巡らせる」「皮膚を主る」「悲しみ」「繊細」【新訳五臓六腑解説④】

「肺」の解説です!

東洋医学が考える「呼吸」のイメージ

西洋医学的な解釈だと、肺は「呼吸」に関係していることは、多くの方はわかっているはず。

東洋医学の呼吸のイメージなのですが、呼吸は「気」を作るのに重要なので、まずは東洋医学が考える、気の生成のイメージを持っていただきたいんです。

「腎」の説明で、気の生成を料理に例えました。

もう一度簡単に説明すると、料理を作るのに、鍋があって、ガスコンロがあって、食材があって…と、鍋が「脾」で、「腎」がガスコンロで、食べものを煮ていくと出る湯気が「気」だと簡単に書きました。

気ができるのに、腎の熱源エネルギーが必要で、胃腸である脾が、食べものから得た栄養を肺に送り、肺で呼吸から取り入れた外界の気を混ぜて、気は生成されると東洋医学では考えているんです。

…なんとなくイメージできましたか?

吸うだけではなく、濁った気を外に出す働きもしています。

長くなりましたが…気の生成に必要な空気を取り入れ、濁った気を外に排泄するのが、東洋医学的な呼吸のイメージなんです。

肺は「気」を全身に行き渡らせる

肺は、呼吸の他に、気を全身に行き渡らせる働きがあります。

料理の例えをもう一度使うと、肺は「蓋」に例えられ、立ち上る湯気である気を上に持ち上げ、蓋に当たった湯気が下降し、からだ全体にくまなく気を循環させるイメージ。落とし蓋みたいなイメージでもわかりやすいでしょうか。

胃腸である脾で作られた気を、全身に巡らせるのが肺の働きです。

肺が気をめぐらせる作用を、「ふいご」に例えられることもあります。

ふいごでイメージがわかない場合、浮き輪に空気をシュポシュポ入れる、蛇腹になっているポンプをイメージしてください。

肺が開いたり、閉じたりして、その勢いで気が巡るイメージ。

「宣発(せんぱつ)」「粛降(しゅくこう)」について

たぶん、東洋医学を勉強したことがある方、肺の項目で必ず「宣発」「粛降」という言葉を目にしているはず。

東洋医学はですね、難しい感じとか、四字熟語が多いんです…だからこそ、すごくわかりにくく感じるんですよね…

そして、どの本の解説もめちゃくちゃ難しいことばを使うんです…やる気がなくなるんですよね…

「宣発」は、毛穴を開いて汗を出したり、からだの中にある澱んだ気を外に排泄する作用のこと。からだの内側から、外側に向かっての排泄作用というイメージでしょうか。

「粛降」は、「粛」が清らかにするという意味。「粛清」などに使われていますね。「降」は下降です。「粛」と「降」を二つ合わせると、汗をかいたりするのの逆で、毛穴を閉じたり、気やからだに流れる水を下降させたりするという意味。

宣発と粛降の作用は、呼吸汗によって水分を排泄する働きがあったり、水を下降させて膀胱へ運ぶ働きもあるため、水の代謝にも関係しています。むくみにも関与しますが、全身のがむくむというよりも、頭が重くなったり、からだの上部の水が下降せずに停滞する感じ。

気圧変動で影響を受けやすいのが「肺」で、気圧が変動すると、からだを護るオーラのような膜である「衛気(えき)」という層が弱まるんです。

肺が毛穴を閉じたり、開いたりしているので、ダイレクトに気圧変動の影響を受けやすいんです。

気圧変動で頭痛が起こるのも、衛気の層が弱まり、からだの中に冷えが入ったことにより、軽い「風邪」を引くからなんですよ。

気圧変動、温度差などにからだがついていかない場合、肺がくたびれて疲れている場合が多いです。

皮膚を主る

肺は、皮膚とも密接な関係があります。

皮膚は、東洋医学的には「皮毛(ひもう)」と表現されていることが多いです。

汗腺を調節したり、皮膚を潤したり、オーラのような膜(衛気)でからだを護ったり。

ちなみに、「腎」の説明でも書いたのですが、「衛気」が生まれるのは腎の熱源による働きなのですが、衛気を調節するのは「肺」の働きなんです。

皮膚を主るからこそ、アトピー性皮膚炎が、実は肺の気がめぐらないことから起こることもあります。

アトピー性皮膚炎に限らず、肌のかさつき、肌荒れに関しても、肺は大きく関わっています。

東洋医学的にはアトピー性皮膚炎と喘息は関連性があって、表面の浅い皮膚に出るのがアトピー性皮膚炎で、深い部分に病が浸透すると喘息という考えているんです。

同じことが原因でも、病の深さで違った反応になると東洋医学では考えているのです。

肺は「感覚」に関わる

肺は、「感覚」に関わりがあります。

感覚というと、ちょっと捉えにくいかもしれませんが、皮膚の感覚で、「かゆい」とか「痛い」、「痺れ」などの感覚を形成するのも、肺の働きが大きく関与します。

また、感覚を大きく考えたとき、「五感」にも関わっているんです。

例えば、目は肝との関わりが深いのですが、肝は目という、ものを見るためのレンズ的な役割に関わりが深く、五感としての「視覚」としては、肺の働きが深く関わっているんです。

他もそう。耳は腎と関わりは深いのですが、「聴覚」としては肺との関わりが深いイメージ。

…伝わったでしょうか?

五感を正しく認識するために、肺の働きが大切であると。

感性を発生させるというイメージでしょうか。ものごとを、より深く身体認識するのに、肺が一役買っていると。目で見たものから、微妙なニュアンスを受け取る能力を高める感じ。

「悲しい」という感情と肺

肺は、「悲しい」という感情をつくる臓器だと東洋医学的に考えているのですが、秋の物悲しい感じとか、「焦燥感」は、肺から発生することが多いです。

肺って、すごく繊細なイメージを私は持っているんです。

ガラスのようなこころを持っていて、傷つきやすいイメージが私の中にあって、擬人化するときゃしゃな感じがするのですよね…

感性は豊かだけれど、すぐに傷ついてしまう感じでしょうか。

肺は、心という王様を、影で補佐する臓器だと東洋医学の本には書いてあるのですが、民からあがってくる訴えを、繊細に考えながら、何を王様に伝えたらいいのか?どう王様に伝えたらいいのか?微妙なニュアンスまでくみ取る能力があるんです。

だからこそ、肺が病むと大ざっぱになる 笑
大ざっぱも、大胆になるというよりは、細かい部分をシャットアウトしてしまう感じ…

音楽を聴いたり、芸術を鑑賞する際に、うまくこころまで入ってこなくなるんです。

肺が疲れた時の対処方法

肺が疲れた時の対処方法なのですが、肺が疲れてくると、焦燥感が出てきたり、気分が塞ぎがちになるんです…

気分が上がらない時は、片腕を万歳して、脇の下を伸ばします。

右腕を上に挙げたら、左に倒すと脇の下、側胸部は伸びますよね?

筋肉でいうと、「前鋸筋」と言う筋肉があるところ。肋骨にくっついています。インターネットで「前鋸筋」と調べると、場所はみつかるはずです。

悲しい気持ちになっている時、ここが縮んでかたくなります。かたくなっているところを軽く伸ばして、脇の下から側胸部にかけて、上下にゆっくりシャバシャバと動かして、肋骨の間を開いてあげるようにします。

片側、一分くらいで効果は出ますよ。

仰向けに寝て、背中と床の隙間に息を入れ、背中が下にゆっくり腰の方まで下がっていくように、呼吸を深く吸い込んでいくのも効果的です。息を深く吸って、下腹部まで呼吸をひろげるのでもいいです。

行ってみると、呼吸がしやすくなって、息がお腹の深いところまで降りるようになるはずです。

その他、辛い食べものを食べるといいです。肺の気が発散して、気分も上向きになるはず。

「肺」のまとめ

肺は単純に「呼吸」に関わっているんですだけではなく、気を巡らせたり、濁った気を吐く息に乗せて外に出したり、水を巡らせたり、皮膚の汗腺から水を出す働きもあります。

皮膚と関わりが深く、肺がくたびれるとアトピー性皮膚炎の原因にもなると。

また、悲しいという感情と関わりが深かったり、五感などの感覚にも影響を及ぼすとイメージしていただけたら幸いです。

五臓六腑の解説も回数を重ね、これで4回目となりました。

徐々に、ご自身の内側の認識は変わってきましたか?五臓六腑をイメージできるようになりましたか?

自分のからだの内側って、見えないからこそイメージすることが大切だと思うのです。

あなたがイメージして、認識したものが「からだ」です。

単に肺の形や、腎臓の形を思い描くだけではなく、働きを自分がいかに認識するかが、自分のからだを知る鍵になるんです。

最初はイメージでいいと思います。

もしかすると、東洋医学って物語にたとえたら、、ファンタジーのようなフィクションなのかもしれません。

でも、そのフィクションが現代に伝わっていること、残っていることに意味があると私は思うんです。

あなた自身で、全力でからだの中をイメージしてください。

一緒に、ファンタジーの世界を冒険しましょう。

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