映画レビュー(141)「ノベンバー」

2017年 エストニア映画

モノクロ映画。恐ろしく抒情的な映像美で酔わせてくれる。
物語の舞台は、東欧エストニアの寒村。雪待月の11月「死者の日」
村には死者が帰ってきて家族と会食をする。村では悪魔と契約をするようで、教会の権威は地に落ち、村人はクラットと呼ばれる使い魔を使役している。隣人や男爵の家から物を盗み暮らしている村人たち。この村人たちが一様に小汚く狡いのは、悪魔を信奉しているからだろうか。
農夫の一人娘リーナは村の青年ハンスに一途な想いを寄せているが、ハンスは領主であるドイツ人男爵のミステリアスな娘に恋い焦がれる余り、森の中の十字路で悪魔と契約を結んでしまうのだった──。
リーナは人狼らしく、狼の姿が随時登場し、ハンスを遠くから見つめていたりする。リーナの秘めた想いのメタファかもしれない。両方ともとれるような描き方をしていて上手いと思った。
このすれ違いの恋は、美しくも悲しいラストを迎えるのだが、情感にあふれる映像を見ながら最後まで引っ張られてしまった。派手な展開はないけど、ムードだけで十分異世界を堪能できる。おすすめ。
ノベンバー

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