映画レヴュー(159)「百円の恋」

2014年東映

「第1回松田優作賞」グランプリに選ばれた足立紳の脚本を映画化したもの。主演の安藤サクラは、第39回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を獲得。
主人公の一子は、32歳になっても実家にひきこもりの自堕落な生活を送っている娘。これが男ならよくある話なのだが、女性にすることで、俄然、同時代性を獲得している。妹の二三子が子供を連れて実家に出戻ってきたことにより実家にいられなくなり一人暮らしを始める。
100円ショップのバイトをはじめて、色々な人と出会う。初めて恋をし恋に破れる一子。
そんな彼女が、自己回復していくきっかけがボクシング。年齢上限ぎりぎりの一子はそれでもプロテストを目指し始める。
この自己回復の経過をボクシングの上達具合で描いていくシーン、もうお分かりですね「ロッキー」です。
これはジェンダーを逆転させた「ロッキー」でもあるのです。巧い。
第39回日本アカデミー賞の最優秀脚本賞(足立紳)も受賞している。
「百円の恋」

(追記)
安藤サクラさんの肉体の作り込みもみごとでした。スポーツや武道などによるメンタル面での改善には自分も経験がある。義務教育から高校まで、優等生病でメンタルを病んでいた自分が、曲がりなりにも立ち直れたのは大学で始めた少林寺拳法のお陰だった。
入部当初、体育会の封建的な制度や人間に嫌悪を抱いて退部を考えたこともあったが、今までの自分に欠けていたものを知ってから辞めよう、と私の心を踏ん張らせてくれたのが、他ならぬ映画「ロッキー」だった(苦笑)
心が強く何かに囚われて自己肯定感が薄れた時に、それをリセットしてくれるものの一つが肉体的な運動であるという気づき、その後の自分の人生に大きく影響している。

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