#18 大学の癖強な先輩

私が大学に入学した時は野球部に入るつもりはなかった。
高校の野球を経験して、もう自分は野球はやらないと決めていた。

野球が嫌いになった訳では無い
おそらく私が野球に嫌われたのではないかと思っていた。

詳細は以前の記事
"高校時代の自分"を読んでいただけるとよくわかると思います。


まあいろいろありまして、大学の野球部に入ることになった。

しかし最初は野球をやりたいと言うよりも
同じ学科の先輩2人がマネージャーをしていると聞いたので
色々教えてもらったり情報収集することがメインの目的だった。
テストや単位のとり方などは情報戦だと思ったからだ。


だがその希望は儚く散ることになる。

その先輩マネージャー2人が
私が入部して12週間後に2人とも野球部を辞めたのだ。

ちょ待てよ。

いきなりメインの目的を失った私は野球をやることを余儀なくされる。まあ野球部なのだから当たり前なんだけども。

この時の私はまさか4年の春まで野球を続けるなんて思ってもいなかった。

ゆるーく楽しめたらそれでいいやと思いながら入った野球部が
いつの間にか私にとって大切な"居場所"になっていたのだ。

それは私の1つ上の先輩方の存在なしには語れない。

そして、私の大学4年間は野球部なしには語れなくなった。


野球部に入って間もない頃、チームの主要メンバーのほとんどは1つ上の先輩達だった。

これがまた個性の塊の世代だった。
一人一人性格や価値観は全然違うのに"我が強い"というところはみんな同じ。
でもお互いに変に気を使ったりし合わず仲はとても良かったようなイメージだった。

1つ上の先輩」とこれから何回も書くのは邪魔くさいのでこれ以降は「癖強世代」と書くことにする。

「癖強世代」の中でも群を抜いておかしい先輩がいた。
彼の名は「コーヘイさん」

以前の記事に書いた 
私に女の子を紹介してくれたとても優しい先輩だ。

その優しさだけで良かったのに、どういうわけか「優しさ」と同時に「意味不明さ」まで持ち合わせてしまっている先輩だった。

コーヘイさんの意味不明エピソードを全て語ると記事5つ分くらいになってしまうので、エピソードを5つに絞って記事1つ分にしたいと思います。

①貝塚ってどんな街ですか?

コーヘイさんはとても活発で行動力がある人だ。気さくに話しかけてくれるし、コミュ障だった私でも気軽に話すことができる人だった。

そんな彼は大阪の貝塚出身だ。

私はそんなコーヘイさんに「貝塚ってどんな街なんですか?」
と聞いたことがある。

その質問に対しコーヘイさんは

「ポッチャマみたいなやつがいっぱいおる所や。」

と言い、その場を後にした。

私がもしおいでやす小田さんだったら絶対に

「どんな街やねえええん!!!」

と言っているところだ。

命拾いしましたね。コーヘイさん。

「いやいや、どういう意味ですか?」とついて行くと別の先輩が私の肩に手を置き

「あいつにはもうそれ以上聞くな。」
と言われ、コーヘイさんの後について行くように歩いていった。

入部したばかりの時にこのような事があったので
私はとんでもない世界に足を踏み入れてしまったのかなと思った。

②ベンチからの声援

野球部のチームメイトに「やまと」という選手がいた。やまとは県内でも有名な高校の野球部出身で
長打力もあるし、頭も切れる。
チームの中でも頼もしい存在だった。

しかしその日のやまとは調子が悪かったのか
いつもの力強いスイングができておらず、2球で簡単にツーストライクに追い込まれた。

ベンチからは
「やまとー!力抜けー!」
「粘れー!」
「次、変化球くるぞー!」
「ストライクゾーン広くー!」
などの声が飛び交う中、
1人だけ全く関係ない声援を送っている人がいた。

そう、コーヘイさんだ。

「やまとー!
本マグロシバいてた時のあの感覚を思い出せーー!
本マグロや!
本マグロをシバけー!!」


「本マグロシバくってなんやねえええん!!!」

またまた、命拾いしましたね。

その打席はアウトコースの変化球を引っ掛けて内野ゴロで凡退した。

本マグロしばいた方が凡退しやすいのでは?
知らんけど。

③独特な例え方

フリーバッティング中の出来事

フリーバッティングは読んで字のごとく、自由にバッティングをする練習である。

打つ人がいて、打っていない人は順番が来るまで守備に入ったりピッチャーとしてボールを投げたりする。
コーヘイさんは守備をしていた。

そしてコーヘイさんに向かって痛烈なゴロが飛んできた。
コーヘイさんはビビりながらも捕球した。

軟式球はバウンドが不規則なので地を這う様なゴロは怖かったりする。

先輩「コーヘイ、いくらなんでもビビりすぎちゃうかー?」

コーヘイさんはこう答えた。

「いやー、すまん。アマゾン川みたいなゴロやったからつい。」


④プラカード事件

リーグ戦が始まる時に開会式をすることになっている。
不参加だと罰金になるので全員参加しなければいけないことになっていた。

開会式に参加するにはふさわしい服装と大学名が書かれたプラカードが必須だ。

部員の中で車を持っている人は数少なく、その1人がコーヘイさんだったのでプラカードはコーヘイさんの車に積むことになっていた。

野球部のグループLINEが動いていた。

コーヘイさん「えぐい。プラカードどっか行った笑」

先輩A「なんでやねん!そんなでかいヤツどっかいくわけないやろ!」

先輩B「心当たりあるところないんか?」

コーヘイさん「さっきまで大学の最寄り駅のファミマおったんやけど、もしかしたらファミマに置き忘れたかもせん。」

先輩C「そんなことある??」

結果、ファミマのそばでプラカードを発見したようです。


⑤学祭のからあげ

我々野球部は学祭で毎年恒例、からあげを売ることになっている。

業務スーパーで冷凍の唐揚げと揚げ油と調味料を買って、5個入り300円くらいで売っていた。

私たちは野球部だと遠目でも分かるように試合用ユニフォームを着てダンボールで作った看板を首にかけて
「からあげいかがですか〜!」といいながらお客さんを呼び込んでいた。

これがまあ飛ぶように売れるし、コストもほとんどかからないし、つまみ食いし放題だし。

だが人間は同じことを長時間ずーっとやっていると疲れたり気が狂ってしまう生き物である。

最初はみんな大声で客を呼び込んでいたが、昼過ぎになって疲れて声が小さくなったり、徐々に眠たくなってきたり……

その時、コーヘイさんが立ち上がり、
語り口調で前を通る人たちにこう言った。

「鶏の命を殺め、
皮を剥ぎ、肉を切り落とし
衣をつけ、油で揚げた唐揚げ
いかがっすか〜〜?」



その後、この唐揚げの売れ行きがどうなったか私ははっきりと覚えていない。

なぜなら私が笑いのツボにどハマりし、2分くらいずーっと腹を抱えて笑っていたのでそれどころではなかったからだ。


その後、双子の女の子をつれたお母さんが唐揚げを買いに来てくれた。

コーヘイさんは「買っていただいてありがとうございます。」と会釈をし

双子ちゃんを指して唐突に
「りかちゃんとりこちゃんですか?」

お母さん「いえ、違います。」

お母さんは苦笑いで
双子ちゃん達は、この人何言ってるんだろう?
みたいな顔でその場を後にした。


このような話を後になって「この前こんなこと言うてましたよねー?」とコーヘイさんに言っても

コーヘイさんは
俺そんなこと言うてないよ。と頑なに否定する。

きっとコーヘイさんにとってそのようなことをすることは普通だとおもっているから無意識にやってしまうのだろう。だから記憶に残らないのだろう。

コーヘイさんは今、大手居酒屋チェーンで社員として働いているのだが、インスタのストーリーで仕事の事をちょくちょく上げている。

その中で私が1番好きなストーリーを最後にこの記事を終わろうと思います。

「奈良のヘルプやっと終わった〜
疲れた〜眠すぎる〜。
とりあえずそこら辺の鹿、シバいていい?」


彼はきっと、こんなストーリーを上げたことを何一つ覚えていないだろう。