女装をしてみた話

僕は女の子になりたかった。
なりたいと言うか、女として生まれたかった。
女として生まれていたほうが、何倍も人生を楽しめたのではないかという、漠然とした思いがあったからである。
昔ツイッターで、女に生まれ変わったらとか言ってる男は何故美少女想定なのか、みたいなツイートがバズっていたが、僕は美少女の確信があった。
しかし現実は男で、性転換する覚悟があるわけでもない……

そんなことを考えていた大学2年の頃、意を決して女装にチャレンジしてみた。
顔の造り的に女装が似合う気がしていたし、やるなら若いうちだと思った。

結果は大失敗だった。
メイクと着替えが終わって、鏡の前にいたのは若い頃の母に少し似てはいるが、女の格好をしただけの自分だった。

選んだ女装サロンがいまいちだったのもあると思う。
いかにも女装が趣味ですみたいなおじさんが選びそうな服しかなく、今思えば僕のような若い人間とはセンスが違うサロンだった気がする。

あと、女装姿で股を開いて座ったいたら店員に「女の子らしくないよ」と窘められたのが面白くなかった。
女の子になりたいが、僕は男だ。
女の格好をしたいわけではない。
所詮女装サロンでは女の格好しかできないのだなと悟り、体験は終わった。


しかし、この体験は数年間、後を引くことになった。
ふと、リベンジしたいと思い、どうせ同じだと諦めるのが続いていたが、28歳を迎える1ヶ月前にもう一度やってみようという気になった。

28歳は母が僕を生んだ年齢で、何となく28歳からが大人という感があり、さすがに立派な成人男性が女装はキツイだろ……という思いと、少し気になる女装サロンを見つけたからだった。

利用した女装サロンはコスプレがメインだった。
コスプレなら「自分」が薄れて、以前よりは女に近づけるのではと考えていた。
サロンのインスタを見るとかなりクオリティが高く、自分が目指す方向性に近い方の写真もあり、女装をイメージしやすかった。(後から知ったが、写真の方は女装ではなくコスプレした女性だった。詐欺では)

コスプレの候補は『ローゼンメイデン』の翠星石と『この素晴らしい世界に祝福を!』のめぐみんと、ゴシック系のメイド服の3つに決めていた。
当日3つとも試着してみて、結果メイド服に決めた。
翠星石とめぐみんの衣装を着た自分を見たとき結構ダメージを受けたのが決め手だった。
メイド服は肩にボリュームがあり、華奢だが肩幅はある自分の体型をカバーしてくれたのも良かった。

メイク自体は前回より上手かったと思うが、期待していたほどではなかった。やはり若い頃の母に似た自分だった。

今回はスタジオ撮影付きのプランだったので、カメラマンの方に写真を撮ってもらった。
写真で見てみると意外と女装が映えていて、カメラマンの乗せ方も上手く、自然と可愛いポーズを取ろうと努力してしまった。
こうやって美しく写ることが日常的だからモデルは美しいのかな〜なんて考えながら写真を撮られていた。

100カットくらい撮ってもらって、その中から後ほどデータ送付してもらう用に気に入ったものを5枚選んで体験は終了した。

今回もやはり、女になるのは無理なんだなと思ったものの、送られてきた写真を見ると意外と満足できたので、まあ、悪くなかった気がする。

おしまい

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