水槽のフラペチーノ (252字)

画像1 頭のくらくらが今日はとくに酷い。最近は生きることすら困難だ。僕はコーヒーショップでいちばん暗い色のコーヒーを注文する。そのコーヒーも揺れている。天井のスピーカーから音割れのバッハ。小フーガト短調。揺れる脳みそ。揺れるコーヒー。自動ドアがひとりでに開く。揺れる女の子が揺れながら現れる。革命家みたいに長い名前の飲み物を注文する。「本物なんてどこにもない。ここは水槽。飛び交う電子にもきみを感じる。連続殺人みたいなあの笑顔。すべて架空の恋の病。タイムラインがまるで別。トールサイズ。ミルク多めでお願いね」 #小説