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チョコレート滅亡(333字)

「都市計画の時代はもう終わりだ」致死量のチョコレートを食べて彼女は饒舌になりすぎている。見渡す限りチョコレートの海。一人残らず溺れ死に、一つ残らず沈んでゆく。人類を包み込む災厄の波動だ。「文明はチョコレートと共に始まった。製法は幾度も失われたが、マヤより遥か以前、オルメカの時代には復活している。最初期の神と言えよう。神による文明の完全破壊。これは単なる摂理に過ぎない」平然と彼女は言った。「ま、好きなときに生きてて良いよ。それ以外は死んでいて。街も人も醜いでしょう。何もかもが消えたあと、密かに思い出すと美しいものだけど」最後のチョコレートを彼女はかじる。「初めてチョコレートを口にしたのは3歳の冬。銃弾みたいな未知の甘さに貫かれ、あの瞬間から私の余生が始まった」


※数年前にnoteにあげた小説のリメイクです。最近はtumblrに過去作のリメイクをどんどん載せていますので、よかったらそっちも見てください。新しいのも書くかも。

オルドビス紀バレエ団