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It's Automatic~ されど。。

 前回は自動露出についてお話ししました。
露出計を内蔵したカメラは被写体の明るさを計り、それに応じてシャッター速度や絞りを自動的にセットしてくれるのでした。
 ところで、「被写体の明るさを計り。。」と、サラッと書きましたが、被写体のどこの明るさを計っているのでしょうか?

1.測光方式

 カメラを被写体に向けると、ファインダー、またはモニターに「今から写す映像」が映ります。画面の中にはいろいろな物が映っているでしょう。白い物もあれば、黒い物も。
 画面の中には明るい部分もあれば暗い部分もあります。さあ、どこの「明るさ」を計りましょう?
 明るさを計るのに実はいろいろ方式があって、中級以上のデジタルカメラであれば、各方式を切り替えられるようになっています。

・平均測光方式

 これはその名の通り、画面全体の明るさの平均をとって計る方式です。基本となる測光方式と言って良いでしょう。比較的間違いが起こりにくい方式ですが、苦手な被写体もあります。
 たとえば、夜空に浮かぶお月様を撮るとします。月そのものは実はかなり明るいです。それに比べてバックの夜空は真っ暗。この状態で「平均測光」で明るさ(露出)を計ると、画面のほとんどを占める「真っ暗な夜空」と、ごく一部分を占める「明るい月」の平均をとりますから、「真っ暗な夜空」が圧倒的に勝利し、ほぼそちらの明るさに露出が合わせられてしまいます。つまり、カメラの露出計(と自動露出機構)は、
「この画面は平均するとむちゃくちゃ暗い。だから絞りを開けよう。シャッター速度も落とそう!」
と判断するわけです。
 結果、明るい月の光を撮るには、絞り開きすぎ、シャッター速度遅すぎになり、月は完全に露出オーバー。真っ白けに写ってしまいます。

・スポット測光方式

 画面の中の、ほんの一部分だけの明るさを計る方式です。普通は画面のど真ん中だけを計るようになっています。周囲には目もくれません。ど真ん中のごく狭い範囲が全てです。「スポット測光」と呼ばれる所以です。
 この方式であれば、先ほどの「夜空に浮かぶ月」であっても問題なく撮れます。月がこのスポット測光の測光範囲(エリア)にぴったりハマるようにすれば、月の光だけを計ってくれます。
 だから、月が適正露出で写り、クレーターなど月の模様がしっかり映ります。真ん中に狙いを付けたターゲットに、確実に露出が合うのです。
「だったら、いつもスポット測光にしておけば良いではないか。これさえあれば、他の測光方式は不要ではないか。」
。。そうもいきません。
 スポット測光で、普通に景色を撮るとどうなるでしょう?
お昼間、青空の下で建物が建ち並ぶ街の風景を撮るとしましょう。
構図を決めた時に、画面の真ん中にたまたま暗い物、たとえば開けっ放しにした家の玄関(昼間は外に比べて玄関の中はかなり暗いです)が入ったら、カメラは玄関の中だけを適正露出で撮ろうとするでしょう。その結果、玄関の中だけがしっかり写って、建物の外壁を含めた周りの景色は完全に露出オーバーで、ほぼ真っ白に飛んでしまいます。
 このように、スポット測光は一般的なスナップ写真を撮るのには、あまり向いていません。
 ちなみに、フィルムカメラ時代、キャノンの代表的なプロ用一眼レフだった「キャノンF-1」は、数少ないスポット測光式カメラでした。

・中央重点測光方式

 人が写真を撮る時、普通は画面の真ん中に撮りたい対象物を捉えることが多いだろう。だからといってスポット測光だと、癖が強すぎてちょっとでも構図が変わると露出が大きく狂いすぎる。
 じゃあ、平均測光とスポット測光の間をとって、「ほど良い加減」の妥協策が採れないかな?
 その考え方に基づいたのが、中央重点測光方式です。一応画面の中央付近を重点的に計りますが、周囲も少し計って全体の平均をとります。
 昔のフィルム式一眼レフに良く使われた方式です。

・評価測光方式

 画面を何分割かして、それぞれのエリアの明るさを計り、
「たぶん、この人は今こんな写真を撮ろうとしているのだろう。」
と機械が判断し、それに応じて露出を決めるやり方です。判断のアルゴリズムは各社の腕の見せ所です。
 素人が撮る分には失敗が少なくなる無難な方式と言えますが、機械が何を考えているかわからず、たまにとんでもない失敗をやらかす可能性も秘めています。決して万能ではありません。
 なお、この評価測光方式は複雑な計算を必要とします。カメラの電子化が進み、露出制御にコンピューターを使うようになって初めて可能となった方式です。(ここで言う電子化は、いわゆる現在のデジタルカメラの意味ではありません。フィルムカメラでも後期になると露出制御にデジタルコンピューターを使うカメラがたくさん出てきました。)

2.黒猫と白猫

 宅配便の話ではありません。
 前項では、いろいろな測光方式があって、それぞれ一長一短があることを説明しました。
 ではたとえば、比較的無難な平均測光方式で計るとします。平均測光の苦手な被写体は画面の一部分だけが、極端に明るかったり、逆に暗かったりする場合で、しかもその極端な部分が実は撮りたい対象物だった場合でした。
 逆に言えば、明暗の差があまりない画面ならば、平均測光で上手く写るはずです。
。。。本当にそうでしょうか?

1.黒猫と白猫、それぞれどアップで撮ってみる

 黒猫さんを、画面いっぱいに写してみます。
画面のほぼ全部を、黒猫が占めます。
画面上の明暗の差はなくなり、画面はほぼ黒一色になります。
カメラは黒猫だけに露出を合わせ(画面に黒猫しかないから)自動的にシャッター速度と絞りを決めてくれます。パシャっ!
 さて、上手く撮れたでしょうか?
答えは、「ノー」です。
なぜでしょう?
画面がほぼ黒一色になりますから、カメラの露出計は
「わー!暗い暗い!暗すぎる!もっと絞り開けなきゃ!シャッター速度落とさなきゃ!」
って思うわけです。
結果、黒猫が明るく写り過ぎてしまい、「グレー猫」に写ってしまいます。

 白猫の場合は、真逆です。
画面がほぼ白一色になって、カメラは、
「まぶしい!明るすぎる!絞り絞らなきゃ!シャッター速度上げなきゃ!」
と思って、白猫が暗く写り過ぎてしまい、これまた「グレー猫」になってしまいます。

これは、スポット測光に切り替えても、中央重点測光にしても同じです。
どアップで撮る限り、避けられません。

3.機械は万能では無いのだよ

 結局のところ、機械は撮影者の心を読んでくれません。
「俺は月を撮りたいんだよ!月に露出合わせてよ!」
「私は白猫をちゃんと白く撮りたいの。だからもうちょっと明るく写して欲しいんだけど。。」
思うだけでは、機械に伝わりません。
 やはり、機械の動き(判断)に、人間が直接手を下して「介入」しなければ上手く写りません。
 その、「介入の仕方」をここでは学びましょう。

1.露出補正

 白猫のどアップを撮るのに、機械に任せっきりにしていると、前述のように「グレー猫」の写真になってしまいます。
そうならないために、「もうちょっと明るく写して」あるいは「もうちょっと暗く写して」とカメラに伝える方法があります。
 それが、「露出補正」です。
カメラのボタンやダイアルで操作するようになっています。
カメラの推奨してきた露出より、もっと明るく写したければ、+1とか+2。。、もっと暗く写したければ、-1とか-2。。にセットすれば良いのです。
 この数字は実は今まで何度も出て来た、「段階」というやつです。
+1にすれば、写真が1段階明るく写ります。
-2にすれば、写真が2段階暗く写ります。
今まで、「段階」という言葉を使ってきましたが、これを「EV」と書くこともあります。
+1EV-2EV。。といった感じで使います。

2.AEロック

 もう一つの「介入法」はAEロックです。
さきほどの月の写真を撮る場合を考えてみましょう。
月の写真を撮るには、スポット測光にして画面のど真ん中に月が入るようにすればOKでした。
画面の真ん中にあるスポット測光の測光エリアに月がぴったり重なるようにすれば、月の適正露出が得られます。
 でも、構図の関係で月をあえてセンターから外したいこともありますよね? たとえば、花札みたいな写真を撮りたいとか。
 スポット測光だと、月を画面のど真ん中から外した途端に露出が狂います。さあ、困りました。
 こんな時は、AEロックを使います。
中級以上のカメラであれば、AEロックボタンというのが付いています。
これは名前の通り、露出を固定(ロック)するボタンです。
 花札みたいな写真を撮りたいのであれば、まず月を画面のど真ん中にもってきます。スポット測光になっていれば、カメラは月に正確に露出を合わせてくれます。この状態でAEロックボタンを押すと、カメラはその適正露出を固定してくれます。この後は構図を変えて月を画面の真ん中から外しても、露出はそのまま、つまり月に露出が合ったままになります。後は、自由に構図を決めてシャッターを切れば、月が端っこの方に写っていても、ばっちり(月に)露出が合った写真が仕上がります。※

(※実際に花札写真を撮ろうとすると、これだけでは上手くいきません。月には露出が合いますが、山のシルエットは暗すぎて写りません。両方きれいに写すには実はもう一工夫必要になります。)

4.余談「入射式露出計」

 皆さんは、プロの写真家がモデルさんを撮ってる風景に出くわしたことは無いでしょうか?
 写真家が大きなカメラを構えて、モデルさんの横にはスタッフがいて、銀色の反射板(銀レフ)を持ったり、髪をセットしたり。。そんな風景を見たことはありませんか?
 注意して見ると、スタッフの一人、あるいは写真家自身がモデルさんの顔のところに、何やら白い半球みたいなのが付いたメーターを重ねて、何かを計っている。何をやっているのだろう?と不思議に思ったことはありませんか?

 実は、あれも「露出計」です。ただし、今まで話してきた露出計とは違います。

 ここまでは、カメラの中に内蔵された露出計についてだけ話してきました。カメラに内蔵された露出計は「カメラが今見ている風景」の光の量を計るものです。言葉を変えると、
カメラの露出計は「被写体に当たって反射してカメラに届いた光」の量を計っています。

 これに対して、プロがモデルさんの顔の横で使う露出計は「入射式露出計」と言って、被写体(この場合はモデルさんの顔)に当たる光の量そのものを計る仕組みになっています。
モデルさんの顔に当たって反射した後の光ではありません。
 たとえばカンカン照りの太陽の下でモデルさんが立っていたとすると、そのモデルさんの顔に降り注いでいる太陽の光の量そのものを計っています。

 そんなことをして、何が良いのでしょうか?

 先ほどの、白猫、黒猫の話を思い出してください。
同じ太陽の下で撮ったとしても、白猫は白いので反射光が多く、カメラの露出計は明るすぎると判断してしまい、黒猫は黒いので反射光が少なく、カメラの露出計は暗すぎると判断してしまうのでした。
それに合わせてシャッター速度や絞りを調整してしまう結果、白猫も黒猫も「グレー猫」になってしまうのでした。

 もし、入射式露出計だったらどうでしょう?
猫のすぐ横で、太陽からの光、猫で反射する直前の光を直接計ります。
猫が黒かろうが、白かろうが、露出計は太陽からの光だけを計りますからブレません。
つまり、白猫、黒猫問題は起きないわけです。

モデルさんは猫ではありませんが、肌の色も違えば服の色も違います。被写体がどう変わろうと、そこに降り注いでいる光、肌や服で反射する前の光は変わりませんから、それを計るということは、ある意味、便利なのです。

 今回のキーワード
「測光方式」「平均測光」「スポット測光」「中央重点測光」「評価測光」
「露出補正」「AEロック」
「黒猫、白猫」??
「入射式露出計」








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