見出し画像

Blenderシェーダーノード辞典/アンビエントオクルージョン(Ambient Occlusion)/前編

※記事製作時のバージョン:Blender 3.6
Blenderシェーダーノード辞典/目次

※今回の記事は長いので、前・後編に分けています。
▼前編


▼後編(作成中)
・AOの仕組み
・各パラメーターの働きと設定方法
・AOのベイクについて

概要

アンビエントオクルージョン(以下「AO」と表記します)は、面の凹んだ部分に陰影をつけるノードです。
くぼみ・溝・入り隅(内側に折れて凹んだ部分)などが暗くなり、全体的な立体形状が陰影で表現されます。

また凹みだけではなく、面と面の間が狭い部分も陰影が表現されます。


より正確に言うと、AOは「環境光(ambient light)さえぎられる(occlusion)割合を計算する技術」の名前です。
そして、それをノードでも扱えるようにしたのがAOノードです。
この「技術としてのAO」と「AOノード」を区別できると、いろいろ理解しやすくなるので、ちょっと詳しく説明します。

AOの基礎知識

AOは、もともとはリアルな陰影を表現するために開発された技術です。
陰影には「直接光の陰影」「間接光(環境光)の陰影」の二種類があり、それぞれ次のような性質があります。

  • 直接光の陰影:光源からの光が直接当たって生じる陰影。光源に向いている面ほど明るく、反対向きの面ほど暗くなる。

  • 間接光(環境光)の陰影:他のオブジェクトからの照り返し(間接光)や、ワールドの背景(環境光)など、周囲全体からの光に対して生じる陰影。正確に計算するのは大変なので、AOを使って近似的に表現される

つまり、「AO=間接光(環境光)の陰影」と考えればOKです。
CGでは、直接光の陰影とAOを組み合わせることで、リアルな陰影を表現しています。

これを知った時、まだまだ初心者だった頃の私は
「え? それなら間接光(環境光)の陰影を表現するには、全部のマテリアルにAOノードを組み込まないといけないの?」
と驚きましたが、これは早合点。
実はCyclesとEEVEEにはAOの陰影を描画する機能が標準で備わっているので、AOノードを使わなくても間接光(環境光)の陰影は表現されます
※EEVEEのAOはオプション設定です。設定方法は後述します。

「え? だったらAOノードは何のためにあるの?」
というのが次の疑問でしたが――

答:AOの陰影(明度情報)を応用して、マテリアルの質感表現に使うため

にあります。
主な例としては、次のような使い方があります。

▼陰影を強調してオブジェクトの立体感や重量感を表現する

▼凹んだ部分のサビや汚れなどを表現する

▼凹んだ部分の塗装の剥げ残りなどを表現する

▼人の肌色(血色)の変化を表現する

では、実際にAOノードはどのように使うのか、基本的な設定方法を見ていきましょう。

AOノードの基本的な設定方法

下の画像は、素のままの新規マテリアルの質感です。
基本的な間接光(環境光)の陰影は表現されていますが、かなり淡い陰影になります。

ここにAOノードを追加して、[AO]出力をプリンシプルBSDFの[ベースカラー]に接続します。
これで、AOによる陰影そのものがベースカラーに設定され、間接光(環境光)の陰影が強調された見た目になります。

なお、CyclesとEEVEEではAOの処理方法が違うため、かなり異なる陰影になります。
AOノードを使う時は、どちらを使うかを先に設定してからマテリアルを作ります。

※EEVEEでAOを描画したい場合は、[レンダープロパティ]>[アンビエントオクルージョン]をONにします。


陰影をくっきりさせたい場合は、[AO]出力の後にガンマノードを接続して、[ガンマ]の値を大きくします(最大値:10)。

▼Cyclesの場合

▼EEVEEの場合

白黒の境界をくっきりさせたい場合は、カラーランプを使います。
(下図はCycles)

こうして調整した陰影を元に、最終的な色を作ります。
よく使うのはカラーミックスの[乗算]で合成する方法。
[色1]に元になる色、[色2]にAOを設定することで、陰影が強調された色ができます。

カラーミックスの[ミックス]で、AOの陰影を任意の2色に変換することもできます。
この場合、AOはカラーミックスの[係数]に接続します。

3色以上に変換する場合は、カラーランプを使います。

範囲マッピングなどを使って陰影を数値に変換し、係数を操作することもできます。
下の画像は、AOの陰影を元に[放射の強さ]を変化させて、凹んでいる部分だけを光らせています。
(下図はEEVEE)

ここまではプリンシプルBSDFに対してAOを使いましたが、他のシェーダーのカラーや係数にも応用できます。
工夫次第で様々な質感表現に使えるので、いろいろ試すと面白いです。

////////////////

というわけで、前編はここまで。
後編(作成中)では
・AOの仕組み
・各パラメーターの働きと設定方法
・AOのベイクについて
について解説します。

Blenderシェーダーノード辞典/目次

【使用した3Dモデル】
Material ball in 3D-Coat - Download Free 3D model by 3d-coat (@3d-coat) [a6bdf1d] - Sketchfab is licensed under Creative Commons Attribution
男性マネキン3Dモデル

【参考サイト】
アンビエントオクルージョン・はじめの一歩

#Blender #3DCG #シェーダーノード #マニュアル #解説 #ノード #マテリアル

ここから先は

0字

基本プラン

¥500 / 月
このメンバーシップの詳細

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは次の記事の制作費になります。