偏質的俳句鑑賞-第百四十回 濡れてゐる土のにほひの夜店かな-藤本美和子『俳句 2023年10月号』
夜店は懐かしい香りがする。当然焼きそばとかかき氷とかの香りもするけれど、それ以外に懐かしい記憶の中の片隅にある香りがある。
それをこの作者は「濡れている土の」ものだと言っている。確かに湿ったような独特な匂いが雨が降った後にはする。
でもそれは、大人になってからは感じ取る余裕もないぐらい微妙な匂いだ。
社会の香りしか感じ取ることができなくなった大人たちはもう雨上がりの土の匂いを意識することは子供の時と比べると少ない。
しかし、夜店にはその匂い、郷愁がある。幼い時の匂いを求めて、祭りのあの喧騒の中に本能的に行きたくなるのかもしれない。
それだけです。次回も良ければ読んでください。
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