見出し画像

句集を読む:『むずかしい平凡』

『むずかしい平凡』 中村晋(なかむらすすむ) 2019 BONEKO BOOKS
著者は1967年生まれ、福島市在住。金子兜太に師事。
現在は「海原」同人、定時制高校の国語教師。
本書は第一句集:全259句

[章立て]
むずかしい平凡 (主にここ数年、震災に関わらない句)
春の牛     (主に2011年以降、震災に関わる句)
青い胸板    (主に2005年「海程」入会以降、2011年までの句)
初期句編    (主に1995年より「海程」までの句)

福島市在住の俳人の句集なので、どうしても震災に関わる句にまず注目してしまう。福島市といえば何といっても「桃」。それだけに桃を詠んだ3句は突き刺さる。

フクシマよ夭夭と桃棄てられる
生きるため桃もくもくと棄てる仕事
桃棄ててふくしまをなお愛すなり

「夭夭と棄てられる」…とは……。
並んでいる3句で「フクシマ」と「ふくしま」では明確に意味が違う。この使い分けは他の句でもみられる。

八月や屋根も柱もない国家
肩に蜻蛉じっと線量測る人
夜景などなきフクシマの冬銀河
母子草ふくしま去らぬ父祖たちに
人間よ万緑をどう除染する

[好きな句 5句]
愚直とは忘れないこと冬木の芽
吊革の揃ってゆれて日脚伸ぶ
夜景などなきフクシマの冬銀河
人間よ万緑をどう除染する
春キャベツざっくりとしたよい意見



この記事が参加している募集

最後までお読み頂き、ありがとうございました。