柴田爽子

【俳句とお話】俳句に合わせた短い物語を綴ります。フィクションです。『蜻蛉』同人。俳人協…

柴田爽子

【俳句とお話】俳句に合わせた短い物語を綴ります。フィクションです。『蜻蛉』同人。俳人協会会員。

最近の記事

『草の種と猫の背中』

「 猫の背に乗って旅する草の種 爽子 」 僕は草の種。この雑然とした野原で生まれ育った。 このままだと僕は種としてここで眠って春を待ち、 この野原で芽吹き花を咲かせ、新しい種を結んで一生を終えることになるだろう。 いやだ! そんなのいやだ。 どこか遠くへ。 見たことのない場所へ。 僕が強くそう思った時、目の前を大きな(僕には大きく見えたが普通の大きさの)トラ猫が通りかかった。 僕は自分のいる草の茎を精いっぱい揺らして、猫の背をめがけてジャンプした。 僕を背中に乗せたトラ

    • 『白藤の花房のクジ』

      「 幸運のクジのごと揺れ藤の花  爽子 」 月の光る夜の空からたくさんの長い白藤の花房が垂れて誘っている。 そのひんやりとした美しさについ手を伸ばし、花に触れてみる。すると花房がわたしに言う。 さあ、選んで。選んだらそっとにぎってそっと引いて。 引くとどうなるの?花がちぎれてしまうでしょう?いくらそっとでも。こんなにきれいに咲いているのにそんなことできない。 わたしがそういって首を振ると白藤はかすかに揺れて笑う。ちぎれたりしないわよ。ひとつだけ、当たりがあるの。 当たり?

      • 俳句とお話

        学生の頃から俳句を続けています。 もう30年以上です。 年数だけ重ねてきましたが、 ずっとなんとか続けているだけの低空飛行な活動でした。 時々、気に入った句が出来ることもありますが 知識も実作も年数に伴っていません。 「もっと句作や勉強をしっかりやりなよ!」という心の声がある一方で 新しいことを試したくなりました。 俳句に短いお話を書くことです。 作者の句作のときの状況に添うのではなく、 その句を読んで広がった物語を書いてみたいと思います。

      『草の種と猫の背中』