平均を求めすぎた後悔⑤
妻の陣痛がはじまった。病院では息子は、妻から離れることをイヤがった。息子なりに何か感じるものがあるのだと思った。
妻から「長引くから息子を連れて帰ったほうがいい」と言われ、私は泣く息子を抱き上げ一度自宅に帰っ
た。
このとき、痛がる妻を見て私も心に余裕がなくなっていた。義母が助太刀に来てくれていたが、自宅に帰ってからも気が気でなかった。
21時ぐらいだっただろうか、入浴を済ませ寝るために息子と布団に入ろうとすると、息子が私の手を取りキッチンの方を指差した。
私はお菓子が欲しのだと思い、「ハミガキしたからダメだよ」と手を息子の膝の上に乗せた。
一度は諦めて布団に入った息子だったが、再び起き上がり私の手をまた取り、先ほどより強い力でキッチンへ連れていこうとする。
私はこのクレーン行動を止めさせたくて「お菓子はダメ!もう寝るよ」と再度息子に目線を合わせて話をした。息子は目を見つめてうなずいたが、「ンッ!ンッ!」と指差し手を引いていこうとするのだ。
埒が明かないと思い、「ふぅ~!」とため息をつきながら私は息子に手を引かれながらキッチンへ向かった。
お菓子のある棚の前できつめに食べさせないと伝えれば、息子もあきらめるはずと考えたからだった。
しかし、そんな私の思惑はハズれ、息子が指差していたのはお菓子のある棚ではなく冷蔵庫だった。
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