デジタル性暴力/ステルス性暴力を考える
SNSは女性を性的消費する画像や動画で溢れている。児童ポルノや盗撮は明確な犯罪行為であるが、最近は摘発を逃れるかのようなデジタル性暴力画像や動画が多い。
各種SNS、スマホ、小型カメラ…私たちをとりまく環境はソフト面でもハード面でもここ10年で大きく変化した。それに伴い”デジタル性暴力”の手口も巧妙にそして多様になっているが、法整備はその変化のスピードにまるでおいついていないし、被害の実態について知らない人も多いのではないだろうか。
今回は備忘録もかねて、デジタル性暴力について考えてみたい。
被害に気が付けないデジタル性暴力
ネットで自身の画像が拡散された場合、それが性的なものであったとしてもなかったとしても、その事実に気づくことは非常に難しい。
多くの場合写真は名前と切り離され『◯◯コラ』『晒し』といったデジタル性暴力を検索するための情報を付加されて拡散される。
ある種の業界用語を知らなければそうした画像やアカウントにたどり着くことはなかなかないし、ましてやそこに自分の写真が紛れているかどうかなど、確かめようがない。
こうして被害者が気付かない間に画像は拡散され、何百人、何千人もの人間がその画像を目にするのである。そういう意味でこうした行為はステルス性暴力だと言える。
被害を防げないデジタル性暴力
性行為や裸体などをアップロードする”リベンジポルノ”のようなものは、多少は気をつけようがある。
しかし昨今のデジタル性暴力は、より巧妙にそして法の穴をかいくぐるようなものなのである。
今ネットで拡散されるのは、裸や下着、水着姿といった写真ばかりではない。
友人と撮ったであろうプリクラ、テーマパークに遊びに行ったときの写真、学校行事の一場面…こうした普通の写真が性的なものに加工され、投稿されている。
例えば
写真の解像度や明度を変えたり、あるいは他の下着画像を重ねて下着が透けているように見せるコラージュ
写真に『チ◯ポ大好き』『肉便器です』『中出しして』など性的な文章を付加したもの(官能小説のようにしてあるものもある)
写真に精液をかけた画像や、写真を見ながら自慰している動画
などがある。
自分でSNSに写真をアップロードしなくても、友人が自分も一緒に写った画像をアップロードしたり、学校の卒業アルバムなどを転載されたり、ネットに画像を100%流出させないという方法は存在しないのである。
つまり、誰もがこうしたデジタル性暴力の被害者になる可能性があるのだ。
被害の本質は何なのか
弁護士に話を聞いてみたのだか、こうした加工画像は名誉毀損にあたる可能性もあるとのことだ(詳しくは脱法手口を広めないため書かないが)。
例えばアイコラやディープフェイクなどであれば見たものが『その(顔の)人が裸になったように、あるいは性行為をしている』と思うという点で、名誉が毀損されていると私も思う。
しかし、例にあげたような加工画像は見た人を『勘違い』させるものではない。ここで被害者が毀損されているのは『性的に消費されない自由』ではないだろうか。
意図しない形で、知らないところで勝手に性的なモノとして自分の画像が拡散されるというのはとても傷つくものである。この今までなかった形のデジタル性暴力をどう防ぎ、どう罰し、どう被害回復していくのか。
政治やSNSプラットフォームも巻き込んで考えていく必要のある問題だと思う。
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