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1-1,逃避訓練/Rehearsal


逃避訓練/Rehearsal

サイレンが鳴り止んで静かになって「ただの訓練」だって放送。
みんな哀しい振りをする。
君はそうフィクションだ、きっと。

一体、何から逃げるつもりなのか?
プラクティスは曇り顔で。
左へ揺らいで二人で揺らいで。
机の下で君が言った事。
聞き取れなかった一言。
聞き返せないで「二度とは会えなくなってしまったな」って思ったよ。

サイレンが鳴り止んで静かになって「ただの訓練」だって放送。
みんな哀しい振りをする。
君はそうフィクションだ、きっと。

題名のないまま幕が上がって今日も世界から逃避。
机の下から顔出して、逃げるけど走らないんだ。

モラトリアムが終わるまで私は「私が世界そのもの」だって思っていたからこそ知っていた。
私が燃えたら避難される。
私が揺れたら避難される。
校舎が人を吐き出すみたいに、私の中が空になりそうだ。
いつまで待ってもいつまで経っても本番が来ない。
困難が怖い。
そうなんだ弱い心が「時間が無いよ」と二酸化炭素を吐いては泣いてた。
震えたりして、揺れたりして、燃えたりして、消えたりして、見えた一面。
真っ赤な空を睨んでいて、また言えなくて避難訓練。

無愛想の裏に守っていた。
明日はなくったっていい。
世は末で。
気になっては揺れ続けるこの火のようにたやすく消してほしい。
嫌なら、まあ、いいか。
また会いましょう。

授業が潰れて喜んでいた。
校庭の砂を指でなぞった。
校舎が燃えたなんて想像しながら眺めて見てようと特に何も変わりはしない。
ハリボテみたいな校舎と風景。
今日が竦んでまるでフィクションみたいな訓練。
数年前の映画のように数年前に感じない感じ。
消火器で火を消してみたい人、手を挙げる人、それを眺める人。
何から逃げるためのそれなのかと考えたくて机の下に、潜り込んで君と校内放送をずっと待ってたんだ。







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