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『マルコと銀河竜』クリア後感想 期待・想像通りにとどまるが、過度に感情的にならず「ちょっと良いな」と思える良作

この作品に対する感情を言葉にするのは難しいかもしれない。「好き」か「嫌い」かで言えば、間違いなく好きです。だけど、それはきっと「恋」とか「愛」とかそういうものではないんだろうな。でも、なんとなく好きだな、ちょっと良いな。これが、ぼくの『マルコと銀河竜』をクリアしたときの感情だ。これは感情を激しく揺さぶる作品ではないのです。

本作がどのような作品であるかやストーリーについては、ぼくがIGN JAPANに寄稿した「今週の注目作コーナー」の記事とインタビュー記事(1人でやったものではなく、手伝いですが)を読んでほしいです。このnoteでは本作クリア後の感想を書いていきます。

過度に感情的にならず、「ちょっと良いな」と思えるストーリー

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ストーリーの本筋については家族、友達、友情、ライバルなどを「当たり前」のように描くもの。「どういうストーリーなの?」と言われても、いい意味でそうとしか言いようがないです(あらすじは上の記事を見てほしい)。そういったものが、「公園に行ったら、わけのわからない生き物がいた」みたいなシーンを挟みながら、コメディータッチのノリで少しずつ描かれていきます。

個人的に似たような感情を抱いた作品は「大長編ドラえもん」です。「大長編ドラえもん」も本筋はそんなにすごい話ではないし、感情を大きく揺さぶるわけでもない。でも、どちらの作品にもちょっとした家族愛や友情がある。そういったものを過度にエモーショナルには描かない作品で、それが良いのです。「ちょっと良いな」と思えるストーリー、それこそがこのゲームの本質でした。

本筋はどこかで見たようなストーリーですが、本作は1000枚超のCG・スチルで構成されたノベルゲームです。本作はストーリーもゲームを構成する要素もすべてが、体験版をクリア後の期待と想像通りにとどまっています。ですが、テンポの良いテキスト、多数のCG、楽曲とちょっとだけ感情的になれるストーリーが組み合わさった体験は唯一無二。間違いなく良作でした。

ノベルゲームをやらない人にまでリーチする作品なのか

本作は上記のインタビューなども読んでいると、ノベルゲームを知っているけどやらない人や、ノベルゲームをやらなくなった言い訳を潰すような作品だとされているところがあります。それを達成しているか、で考えると難しい部分がある。

海外であれば『Doki Doki Literature Club!』、日本であれば『STEINS;GATE』などがノベルゲームの地位を引き上げ、やらない人ややらなくなった層にリーチした作品だと個人的には思っています。

『マルコと銀河竜』のCG枚数、テンポの良いテキスト、カートゥーンなどのフォーマットはすごい。だけど、それはノベルゲームを知っているからすごいと思えるのではないでしょうか。例として挙げた作品群は感情を激しく揺さぶるストーリーとゲームプレイ上でのトリッキーなことがある作品です。

一方で『マルコと銀河竜』はフォーマットはすごいが、ストーリーの感想はあくまでも「ちょっとだけ感情的になれる」作品。目標達成しているか、できるか、で言えば難しい部分があるでしょう。ここは今後の評判次第になるはずです。

点数を付けるなら99点

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ぼくが本作に点数を付けるとしたら、体験版が気に入ったのを前提とした点数ですが、99点です。あと1点足りないのは期待・想像通りの内容で、それ以上ではなかったからです。ぼくがアドベンチャーゲームで100点を付けると思う作品は『STEINS;GATE』、『CHAOS;CHILD』、『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』あたりでしょうか。これらの作品は期待以上の内容だったと思っています。

わずか1点、本当に惜しい作品でした。でも、期待以上の内容でなくてよかったなという感情もあります。あっさり終わりますが、過度に接近しすぎない友情や愛を描いていた作品な気もするのです。なかなか複雑な感情……。あと突っ込むとしたら、中盤のとある宇宙人が出てきてからのパートなどはCGも話もややグダる。だけど、このゲーム基準でのグダりで、ほかのゲームだったら気にならない程度です。

買うのを迷っている人向けに言っておくと、体験版が気に入ってお金を払う価値を感じたら、すぐに製品版を買ってしまっていいでしょう。体験版をやっていないのなら、体験版を今すぐやりましょう。ですが、体験版以上の内容が製品版にないことも理解していたほうがいいです。想像通りのストーリーが展開されます。体験版が気に入ったのなら、99点の作品に必ずなります。

価格は高いが、それに見合う

まとめると、本作はテンポの良いテキストと怒涛のCG枚数、カートゥーンパートで家族愛などの普遍的なテーマを描く作品でした。過度にエモーショナルではありませんが、ちょっと良いなと暖かい気持ちになれる作品です。

価格についても考えましょう。本作の価格はパッケージ通常版が7800円(税別)です。プレイ時間は音声をできるだけ聞いてプレイして8時間でした。オートモードだと10時間ほどになるようです。体験版をクリアしてから買い、音声をスキップするプレイならば数時間で終わるでしょう。

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↑異常な書き込みの宇宙船。背景のクオリティが高い。

では、値段分の価値があるのか。短く思えるかもしれませんが、CG枚数やテンポ、カートゥーンで無駄なテキストを省いた結果プレイ時間が短くなったのだと思います。ストーリー全体を考えると、従来のノベルゲームのスタイルであれば15~20時間分ぐらいの密度の話をやっている。また、背景やアニメパートのクオリティなども考えると間違いなく値段分の価値はあります。

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↑本作の価格は海外では約20ドル。画像はSteamDBより。

また、本作は海外では約20ドルになっていて、いわゆる「おま値」だと話題になっています。なぜこうなってしまったのかと考えると、海外でのノベルゲームの地位の低さが問題だったのだと思います。本作は数時間~10時間ぐらいで終わってしまうゲーム。フルプライスの59ドルであれば、Steamレビューで炎上してしまう可能性はあったでしょう。

正直に言って、自信をもった価格をつけてほしかったとは思います。ですが、この作品1本で海外におけるノベルゲームの地位を上げるのは難しいでしょう。ノベルゲームの地位を引き上げるだけのパワーがあるとは個人的には思っていますが、本作が踏み台になって価格の高いノベルゲームが認められる世の中になってほしい。価格は関係なくても、ノベルゲームの地位が向上してほしい。そう願い、このnoteを終えます。

オマケ。『マルコと銀河竜』クリア後ボイスチャット会を企画中

このnoteは「game game」というぼくが所属するゲームコミュニティのマガジンとして執筆しています。game gameはゲームや映画、アニメなどを語るコミュニティです。そこで『マルコと銀河竜』のクリア感想を語っていくボイスチャット会を企画しています。たぶん2020年3月中にやれるかな、やれるといいなぐらいに思っています。

生放送もやりたいと思っていますし、最近はポッドキャストにチャレンジもしようとしています。もし参加したい人がいたら、私のTwitterにでもメッセージを送ってください。ただし、何人くるかわからない、人が多すぎたら大変などもありますので、参加できない可能性もあります。いつ開催かも曖昧なので、そのへんはご了承ください。

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