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阿佐ヶ谷ハーネスにて


「歯車くん、来週のハーネスで一曲いっしょにやろう」
という話が双葉双一からあったのは、先週のスタジオでのプーシキンの練習終わりだった。それを聞いたときにぼくは何秒か固まってしまった。

これは理解が得られない話かもしれないが、プーシキンにいる双葉双一と、双葉双一の単独ライブに参加するということはまったく話がちがうことだ。いっしょにバンドで練習しているときは双葉さんも、りこさんも、高萩さんも同じところにいる、とぼくは思っている。なぜならば、バンドだからだ。これはちょっとぼくの理想というか、考え方の問題であって、他の人からしたらまったく意味のわからない話かもしれない。はいはい、いつものお前のやつね、と片付けられる話かもしれない。当たり前の話になるしこんな書き方をしたところで意味がないわざわざな話だけど、ぼくよりもギターがうまくて、パフォーマンスも優れていて、人気がある人はゴマンといる。当たり前の話だ。カレーはうまいとか夕焼けはきれいみたいな話だ。そういう話ではないからぼくがいると思っているので、そこでじぶんを否定したところでなんにもならない。みんな同じ場所にいるからやっていて楽しい。ここまで書いて、なにをお前みたいな奴が何をバンドについて語っているのだ、寒いわ、とかなんとかそういうツッコミを入れてくる人もいるだろうし、そういうじぶんもいる。ほんとにそう思うが、それは少し置いといてほしい。
しかし、双葉双一のソロライブで、一曲だけでも横でギターを弾く、というのはそうではない。同じところにいないからだ。みんな、双葉双一の歌を聴きに時間を作って、予定を立ててきている。これも当たり前の話だ。それがぼくが参加することによって、ノイズ(邪魔)になってしまってはたった一曲でも問題だからだ。

そんなことを考えて、数秒固まってしまった。ただ、また違うぼくもいて、そんなお誘いを断る、というのもとても失礼な話だ、とも思った。何をお前如きの奴が誘いを断るんだよ何様だお前は、と言ってくるぼくがいた。学校イチのマドンナからデートに誘われているのに、どんな理由があるにしろ誘われているのに、何をお前が断っているのだ、という話に近いかもしれない。いや、これはぜんぜん違う話かもしれない。ぼくのお得意の、人にわかりやすくする為にある例えというものを例えとして用いてよりわかりにくくしてどうする、というやつだ。この例えはやっぱりなかったことにして頂きたい。申し訳ございません。

いろいろありつつ、一曲参加させて頂きました。アルバム未収録曲の「星が輝く夜に」という曲で。反省しかないのだが、なのでノイズになってしまった可能性大なのだが、お店を出たあと、緊張と興奮が一度ほぐれたときに、ぶわあっとなんて楽しい時間だったんだ、という気持ちでいっぱいになった。ぬぬぬぬぬ、と反省がまたやってくるんだけど、ちょっと待って、いまは待ってて、と楽しいという気持ちが反省を堰き止めている場面があった。

ほんとに楽しい時間だった。ありがとうございました。

この週末に他にもいろいろとずんずんとぼくのなかで特別なことがあったんだけど、それはまた別の機会に、ということで。

今週末も楽しかった。

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