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冗談じゃない旅 本編結


映画『冗談じゃないよ』の
エンディングを含む ネタバレがあります
映画を見ていない方は ご注意ください

※この記事は本編壱,弐,参の順で公開しています

※映画の流れのまま 言葉を羅列しています

今回で映画が終わります
まだ全然書けていません
書く前から終わります言うてますけども
終わる終わる詐欺にならないよう
書いていきましょう

( )の中は本編の外での話や
私の感想、浮かんだ言葉などです

なお描写については、記憶を元に
シーンを書き起こしているため
順番が違っていたり
細かな台詞が違ったり
欠落なんかも多分にあると思います
だもんで、やんわり見ていただけたら…


最後まで駆け抜けていきます




本編


いちよん


高円寺の裏路地 丈は道の影に自転車を置く

居酒屋に入ると 新垣の他に何人か
卓を囲んで飲んでいる 塩谷進もいる
店内には ドラマ撮影でかつて共演した
俳優の姿もある 男が歓迎の声を上げる
「おっ丈くんじゃん!誰?呼んだの」
新垣がオレオレ、と言いつつ手招きする
(丈と進と、共演した男の3人は
片桐壮主演のドラマ ロケの場面で
チンピラ役だった3人である)

新垣は丈を隣に座らせ ビールを頼む

大野という女性も 目の前にいる
既に酔いも回っている様子で聞いてくる
大「あたしのこと覚えてますかぁ?」
覚えてる訳ないじゃん!と、隣の男
男と女はワイワイと話していく

ぼんやりとそれを眺めている丈

新垣が丈の顔を覗き込む

新「どうしたん?」
丈「さぁ…」
自嘲気味に返す

新「柴田監督が丈くんのこと
  気にしとったで」

丈は何も言わない

新「それから阪神の岡田監督も
  気にしとったで」

新垣のボケに 丈は表情を変えない

新「なんかあったん?」
丈「あったんじゃないすかね」
丈は横柄に答える

新「最初に芝居した時のこと覚えてる?」
4年前のオーディションのフラッシュバック

丈の目の前には 煙草を片手に
酒を飲んで騒いでいる2人
陽気なガヤを じっと凝視する

不愉快そうな丈 

何もかもが気に入らない

ビールを丈は勢いよく飲んでいく

飲み干す1歩手前まで空いたグラスを
荒々しくテーブルに置く

進が心配そうに見ている
新垣の芝居の話にも
丈は聞いている素振りが見えない

進は 丈に ちゃんと聞くよう
声をかけるつもりだったのだろう
近づき肩に手をかけようとする

そんな進を 丈は振り払ってしまう

大きな物音

強く突き飛ばされ 壁に打ち付けられた進

瞬間 静まり返る店内

「マジでヤバいですよ」
警戒色を全面に表した大野
その声が異様にハッキリと響く
尻もちをついた形の進は 丈を見上げている
進を気遣う言葉がかけられる
大「え…だってシャレにならないでしょ」
小声でささやかれる

焦燥にかられる丈は 逃げるように
店を飛び出していく

自転車で 夜の闇を駆ける
丈はどこへ向かうのか

(酒の席で 丈は周囲から
ドラマに出演中の俳優に対して
手を挙げたとみられたのかもしれない

丈が普段から鬱屈としていたのなら
同じ事務所の人間だったら
察していた可能性もある)

(丈にとって 新垣洸の存在は
大きな壁として 立ちふさがっている
憧れに似た存在も 目の上のこぶのよう
丈の迷いや悩みを 長い時間をかけ
煮込んで 煮詰めて 焦げ付かせている
今ではその原因のように思えた

進の存在もまた 新垣同様のようにも思える
生き辛さと相まって 丈の感情を混迷させる

売れっ子俳優の進 主演俳優の新垣
それと対局の 無名の丈
状況が首を絞める
変わらない内面 変えられない環境
それでも憧れや夢だけは 瞬いている)

(新垣の丈にむけてられる言葉や冗談が
純粋な心配だったり 優しさからくる
愛情なのは ちっとも変わっていないのに
丈に届かないのが あまりに切ない)

(確信はないが
進は突き飛ばされてもなお
丈を信じていたと思う

これはただの 私の願望だが
進には 先輩後輩の気持ち以上に
丈を信頼している そんな絆が
あってほしく思った)

(新垣役の辻と この映画には
ちょっと面白いエピソードがある

辻は関西の 実力派お笑い芸人
当初 辻は映画に役者としてではなく
ただのクラファン支援者として参加していた

海老沢が辻とSNSで お礼のやり取りをし
日下監督がそのことを知ると
「空いている役があるけど…」と
オファーしたのが出演のきっかけだった

映画に出られる喜びから 深く考えず
快諾した辻だったが いざ台本を読んだら
主人公の兄貴分となる 超重要な役
「こんな大事な役
 空いとったらアカンやろ…」
芸人の自分に 大役が務まるか
心配があったという)

(観客として 伝えたいことは
辻の不安は杞憂だったということ

新垣役の辻の名演は 物語になくてはならない
極上のエッセンス 見どころと言っていい
丈との距離感 リアリティは見事だった)



家族の声


どこか閑静な住居の中
丈が廊下にたたずむ

パタパタとスリッパを鳴らせつつ
老齢の女性が現れる

「丈!あんたどうしたの!」
女性は 江田幸子 丈の母親である
ここは丈の生家であった

丈「近くで撮影があった」
息を吐くように 嘘をつく丈

幸「お腹減ってない?ご飯食べる?
  準備するから座ってなさい!」

慌ただしくキッチンへ行く幸子
丈はバツが悪そうに立ったまま

盆に夕飯をよそい再び現れる幸子

幸「何突っ立ったままなの
  ほら座ってたべなさい」

食卓につく2人
幸「どうなの最近」
丈「どうって?」
幸「仕事は?うまくいってんの?」
丈「良いよ」
丈はご飯を一口だけ口にするが
あとは、箸で茶碗の米をこねて
口にしようとしない

様子を察してか 幸子は話題を振る

幸「あー!あれ見たわよ!
  サラリーマンの」
丈「いつのだよ…」
幸「それくらい会ってないわよ~!」
明るく取り持とうとする幸子

幸「主演のあの子、なんて言ったっけ
  朝のテレビで特集してたわよ
  あの子言ってたわ…ええと
  アイドルみたいにみられることに
  ギャップを感じているとか…」

オーバーな身振りで話す母親とは
会話が続かない
丈はうつむき加減で黙っている

幸「まっ、あんたにこんなこと言っても
  住む星が違うか」

丈は震える声で聞き返す

丈「昔っから、聞きたかったんだけど…
  その、住む星が違うって、なに?」
幸「何って、なによ」
丈「父親が違う星に行っちゃったとか
  あれ、なに?」

幸子はカラカラと笑いだす
幸「アッ!アハハ!あれ?あれね…
  アレ、どっか行っちゃったの」
丈「どっか行っちゃったってなんだよ」

怒りと混乱で 丈は今にも泣きそうだ
幸「別に会いに言ってもいいのよ?」
丈「何が」
幸「父親。あんたのファーストネーム
  付けたのは彼だし」
丈「会わないよ!」
声は涙声に震えている もう限界のようだ

幸「なんか、悩んでる?」
丈「悩んでないし!」
大きくなる 丈の声
その様子に幸子はストレートに尋ねる

幸「お金、困ってる?」
丈「困ってないし!」
涙と鼻を垂らし 叫ぶように答える

幸「今日、うち泊ってく?」
丈「泊まらないし!…もういいよ!」
幸「アラッ!ちょっと、丈!」
突然席を立ちあがった丈は
母親をしり目に 家を飛び出す

駄々をこねる子どものように
人から、街から、家族から
丈は逃げ出した

(丈は なぜ実家に帰ったのか
高円寺いちよんから近かった?
家族の声に救いを求めた?

混乱して分からなくなって
自然と足が向いた実家で
丈はさらに混乱することとなる

身近だから 聞きたくないことも
見たくない現実も見せられてしまう
そんな経験は 自分にもある

丈が なぜ実家に帰ったのか
明確な理由は語られていない)


(母親演じるは竹下景子
思い返してみて気付いたが
「ドラマ見た」という台詞から
丈もドラマのO.A.に乗ったと推察できる
あのロケのシーンとは明言されていないし
別の撮影があったのかもしれない)

(長年会っていなかった 親子の会話
どうにも 話の腰が落ちつかない感じ
竹内のオーバー気味な身振りと接し方で
それがうまい具合に表れている
そんな中でもパッと思い出された
『アクションヒーローサラリーマン』は
母親にとって、息子がメディアにでた
喜ばしい貴重な経験だったのだろう
それが例え何年も前のドラマであっても)

(超絶細かい話で恐縮ですが
母親の耳の後ろあたり
髪を編み込んでいるの
とってもオシャレだなと思いました)


惑星ニューラゴーン

丈はわき目もふらず 自転車を漕ぐ
視界は夜の闇 頭の中は混乱の渦

次第に 音も景色も 曖昧になっていく

荒い呼吸だけになった瞬間
丈は惑星にたどり着く

他人を拒絶していたはずの
丈の心象風景には 得体の知れない人間たち すべてが灰色の世界

記憶をたどるように
高速で映像が 逆戻りしていく

…実家の光景 居酒屋 オーディション
仕事の仲間 このみとの思い出 進との出会い
少年期 幼少期 生まれる前…
極彩色の幼少時代は
ただただ純粋に 笑ったり 泣いたり

いつしか壁に当たり 擦り切れて

道を見失って 愛するものさえ消えてしまって

憧れたものはつかめないまま

もがいて 苦しんで それでもなお
丈は砂丘を突き進むしかない

自転車は足を取られて 前に進まない

それでも丈は自転車を 必死に漕ぐ

歯をくいしばり 生まれたのは叫びだった

「俺の!俺の人生の主人公は!俺だ!」

魂からの 雄たけび

進まない自転車は掴んで 投げ飛ばし

砂丘を駆けてゆく


(日下監督はこの惑星のシーンの編集に
苦心したと語っている うまくいかないので
海老沢の幼少期の映像を彼の実家から
参考までに送ってもらい 確認したところ
江田丈の奇妙な踊りと 寸分違わぬ踊りを
海老沢が幼い頃に 踊っていたという話

少年時代の江田丈として踊る海老沢の映像は
短い走馬灯のようなカットで確認できる
まさに、DNAに刻まれた踊りのよう)

(心象風景の砂丘は
さまざまな印象や
イメージを与えてくれる
シュールな場面であるものの
映画的でとても効果的な演出
丈の迷いや混沌とした気持ちを
言葉でなく 視覚情報から表現されている)


覚醒

早朝 郊外の 田んぼの中
自転車と共に 丈が倒れている

丈が目を覚まし のそりと起き上がる
なにかを見つけたように 駆け出す
「おい…おーい!」
わめきながら 農道に飛び出す
「ワァァ!!」
急ブレーキと運転手の叫び声
丈は 軽トラの前に飛び出したのだ

ギリギリで止まった軽トラ
フラフラと運転席に近づく
運転手が顔を見て声を上げる
「ジョー!」
丈も驚きつつ相手の名を呼ぶ
「エド!」
彼の名前は 小沢エドワード健(たけし)
エドは 丈の幼い頃の友人である
エ「な、え、どうしたの!?」
田んぼから飛び出してきた男へ
エドは当然すぎる質問を投げる

質問にどきまぎして即答できない丈へ
エ「乗ってく?」
丈「うん!」
助手席側に回り込んでから
丈「自転車!自転車乗せていい!?」
再び田んぼへ向かいだす丈 戸惑うエドだが
エ「えぇ!?いいよ!」
と了承する

軽トラの荷台に自転車を積んで
助手席に乗り込む丈

旧知の友人との再会 しかも 昨夜から
自転車を漕ぎ続けたであろう 丈は
ランナーズハイの状態で
まとまらない頭の中を そのまま言葉にする

エ「大丈夫?」

丈「オレ、オレ…ずっと走ってて…!
  そしたら 知らない星にいて…
  そんで 人間に、人間に
  会いたい 会いたいって 願って…
  目が覚めて そしたら エドがいて!
  オレ、ずっと ずっと探してて
  だから 引き寄せたんだと思う!
  …久しぶりぃ!なにしてんの!」
エドは驚きつつも
ウン、ウンと相槌をうつ
エ「あっ、これから仕事
  …どっか向かってた?」
丈「駅…駅向かって!オレ、今…
  オーディション中なんだ!」

軽トラは 朝焼けの美しい農道を走り出す


小さな地方の駅 まだ早い時間
人の気配はない
自転車を下ろした丈は エドにお礼を伝える

エ「大丈夫?」
丈「うん、ありがとう…」
エ「よかった」
改まったように 丈は口を開く
丈「エド」
エ「?」
丈「オレ実は、ミドルネームあるんだよね」
エ「へぇ…何て名前?」
丈「マックス。江田マックス丈」
エ「江田マックス丈…いい名前じゃん」
丈「ありがとう
  小沢エドワード健もいい名前」
エ「ハハハ…」

改札へ向かう丈へ エドは別れを告げる

エ「じゃあね!マックス!」
丈「じゃあな!たけし!」

丈の顔に 曇りはなかった
冬の朝のような 清々しさがあった

(ここに登場するエドは かつて
このみとの日常会話に出てきた
「ハーフの友達」である

とても柔和な性格なのだろう
朝方、田んぼから飛び出してくる
どうみても不審者な旧知の友にも
エドは穏やかな対応をみせる

元々、激しく明るかった感情の丈が
悩み 迷い 折れて 走り続けた先で
心を吐露できる相手と巡り会えたことは
救いであったように感じられる)


オーディション会場に立つ 丈
その背中は 自身に満ちたように
広く 大きく映っている
(会場に現れるも 背を向けているため
丈の表情は 劇中で確認できない

また、オーディションについて
作中では「2日間」と言われており
選考自体は終わっている

丈がなぜ、終わったオーディションに
行かなきゃと言ったか
会場にボロボロのまま行ったのか
具体的にどうとは描かれておらず
その表情などは観客の想像にゆだねられている

心の澱を掃った丈は 彼らしさを
取り戻したのではないかと
都合よく 私は勝手に思っている)



雨のアパート

傘をすぼめて アパート廊下にいる丈
蛍光灯の冷たい明りの下 ドアのベルを鳴らす

ドアが開くと 住人の男がサンダルで現れる

対峙する2人 お互い声は出ない

しばしの沈黙

丈は頭を下げ 声を絞り出す
「…ごめんなさい」

男は 屈託のない笑顔になり
「…はい」
と、明るく答える
「僕からも一ついいですか?」

丈はまっすぐに 男と向き合う

「受かりました… 新垣洸の弟役」

丈は震える声で 短く返す
「お前になら ぴったりだよ…」

涙がこぼれる

「なに、泣いてんすか!」
震え声で

笑顔の男も涙をこぼし

力強く抱擁する

男の名前は 塩谷進

俳優 江田丈の 大切で可愛い後輩だ


(静かな 夜の玄関先のシーン
雨の雰囲気が より静寂を誘う

丈は自分を見つめなおしたのだろう
素直に 進へしたことを謝罪する

進は すべて受け入れ笑顔で許す
飲み屋での一件もそうかもしれないが
進の笑顔には もっと大きなものを感じた

それまで、1人で悩みを抱えていた丈が
少しでも 進に心を開き
頼って心情を吐露したことへの
安堵と喜びがあったように 私には思えた)

(シーンを記憶からトレースしながら
繰り返し思い出し泣きしてたのは内緒です)




冗談じゃないよ


解体現場近くの路上
大工風の若者2人が 何やら打ち合わせ

台詞を練習しているようだ
「俺がこう言ったらお前がこう…」
「ああっ、ごめんごめん」

無理に付き合わされているようで
片方の男 木田は うまく台詞がつなげない

丈が現れる
丈「台詞、練習は良いけど…仕事しよっか」
怒鳴るような調子ではなく 静かに諭す

台詞の言えない木田は「アッ、ハイ…」と
気弱な声で 足早に持ち場へ戻ろうとする

練習を止められた男 中島は
少し苛ついた様子で反抗する

中「俺、本業 役者なんで」
首に下げていたタオルを 乱暴に取る
丈「ああ、そう」
丈は動じない
丈「でも今は現場だし…ヘルメットは?」
中「あー、あっちに(置いてある方を指さす)」

丈の正論に 中島は面倒そうに諦め顔
ヘルメットを取りに ダルそうにしている
丈も中島へ話しかけつつ同行する
丈「え、なに。役者してるの?」

(丈は大きく成長しているように描かれる
感情に任せることなく 自分を御している
仕事にも一定の理解と情熱がある
人に対する 思いやりさえ垣間見える
何より表情も声色も 非常に穏やかだ)

(演技の練習に付き合わされる男
木田樹歩役 川端康太
仕方なく友人の頼みを聞いている感じ
うまくできなくて悪いなぁ…って感じ
やっぱり怒られちゃったよ…という雰囲気が
最高にうまい いい味を出している

中島舞人役 山田ジャンゴは
新人大工で 役者という役回り
過去の丈と被るような部分もあり
対比して見てみると面白い

演技練習について「仕事して」と
言われた時の 不満そうな態度
「本業役者」と言い放った時の
若さからくる根拠ない自信 無頼な感じ
焦燥と不満を内包した若者といった感じ

木田と中島 2人のシーンは短いが
旨味がよく出ている

丈の胸中に 2人はどう映ったのだろう
想像してみると楽しい)


一服

荷揚げメンバーが集まって
道端の自販機で 休憩している

望月は煙草を片手に
どこかへ連絡を取っている
望「材料ここしかないんすよ。置き場は…」(棟梁の姿がないことから
現場のリーダーになったのだろうか
チームを引っ張る力があるのだろう
岡田の姿も確認できる)

丈は中島らと 談笑をしている
丈「疲れた?」
中「むっちゃ、キツいっす(笑)」

自販機の前に セーターを着た男性が
小さな娘を抱っこして現れる
女の子は3歳くらいだろうか
可愛い声で 男とおしゃべりしている

丈たちは 自販機から1、2歩離れて
2人にスペースをあける

男の来た方に車が止まっている
丈は 車の方を眺めている
(ボーンホワイトのVOLVO
240エステートだろうか)

少し離れた路肩に車を停め
飲み物を買いに降りてきたようだ
後部座席にも 顔は見えないが
誰か乗っている気配

娘と会話しながら飲み物を買い終え
2人が車に戻っていく

丈はぼんやりと それを見送る

男は後部座席に娘を預け 運転席に乗り込む
後部座席にいるのは母親だろう
チャイルドシートがロックされると

車は発車する

丈の横を 車が駆け抜けていく


瞬間



丈は 後部座席に座る人と 目を合わせる


そこにいたのは 石間このみだった


このみも 丈と目が合う

だが 次の瞬間 視線は外される




車は走り去っていく



車内
娘はのんきな調子で 歌を口ずさんでいる

隣に座る このみの目には
動揺と涙が浮かび 呼吸が浅くなっていく


自販機前
丈は黙ったまま 持っていた飲料を置き
自販機横に置いてあった 自転車にまたがる
突然の行動に 思わず岡田が声をかける

岡「おい、それ人のだろ…オイ!」
岡田の声が届く前に 丈は駆けだしていた



景色が後ろへ吹き飛んでいく



一点を見つめ自転車を漕いでいる


心は無心からほど遠い


去来するのは 手にするはずだった

幼子との思い出 このみの笑顔

愛おしい時間 憧れた生活


走馬灯のように 記憶にない思い出が
丈の心に次々と生まれていく


気持ちは抑えきれず 自転車を漕ぐ足は
いつしか地面を蹴っていた




自転車を打ち捨てて 全力で走る



呻くような 叫び声は 言葉にならない



息を切らせ 走り続ける





「冗談じゃないよ」

(センターにタイトルバック/暗転)



(田野昌役
サトウヒロキの顔に気が付いたのは
彼が運転席に乗り込んで
車内で顔がアップになった時

グッナイ小形のMVや、知多良監督作品
映画『ゴールド』にも出演し
私にはお馴染みの顔だった彼に対して
「なんであなたそこにいるの…」って
思ったのが、初見時の正直な話

直後、後部座席に乗っていたのが
石間このみだったので
「なんであなたそこにいるの!」って
2回殴られた感じがした)

(サトウヒロキは…
大切なものを盗んでいきました…
あなたの彼女です…

そんな言葉が 浮かびかけましたが
ヒロキは なんにも悪くない

だって…めちゃめちゃ優しかったし
終止子どもに優しい男 子煩悩さが
日常に溶け込むような雰囲気

自販機のシーンとか
全然気が付かなかったし
…俳優ってすごい)

(車が発車する 一瞬のすれ違い以降
このみを演じる 日下玉巳の
車内での表情 目線から滲む動揺に
凄味を見せつけられる

日下監督は この映画を
ただのハッピーエンドにしたくなかった
そう語っている。

ラストの衝撃的な展開で
主人公の人生も、感情も
もうめちゃくちゃだよ!
「冗談じゃないよ!」
そう叫ぶ一方で。

爽やかなまでに
突き放したエンディングと
語りすぎない余白に
想像の余地を残してくれた)

(細かい視点で見ていきたい…ところだが
どうにも下世話な話になりそうだ

余白は余白として 想像の幅を
狭めないよう 明文化はやめておこう
「考察のしがいがある」とだけ記しておく)

(日下監督は 映画を「こうですよ」と
説明し尽くさないようにしたかった
余韻や想像の余地を大切にしたかった
そんな風に話してくれて
あの終わりかたが形として
素晴らしい映画の完成形だと納得した)



エンディング/エンドロール


熱量に圧倒される物語の終わりを
優しく包み込むような
柔らかいギターのイントロ

グッナイ小形の『千年』が
劇場に響きわたる


これは偶然なのだが
『千年』の歌詞の中にある とある言葉は

私の大切な人の 最期の言葉であった

彼女のおかげで 私は生きているし
私が私のままでいられる そう感じている

グッナイ小形との出会いにしたって
とても奇妙な巡り合わせだったわけだが

彼に繋がる世界に 導いてくれたのも
元を辿れば彼女の言葉や
共通の知り合いに 行き着いてしまう

夢の中でしか会えなくても それでいい
あの人の顔を 忘れずにいられる
歌はいつだって 思い出させてくれる

それだけで グッナイ小形は
私にとって 恩人なのだ


今回は、エンドロールを冷静に観賞していた。

泣きたいだけ泣いたんじゃから
そろそろよかろう まさかまた
自分の名前を見過ごすんじゃあるまいな?

そんなことはしませんよ、ほら。

4度目にして はじめて
エンドロールに自分の名前を確認する。

なんだかとてもたくさん
時間がかかったような気がする。
そして映画がやっと完結したような
そんな気がする。


本日はここまで

映画、完成おめでとう。公開ありがとう。
これから、全国でも たくさんの人へ
この映画が届きますように。

そして、映画の感想 走りきりました
おめでとう ありがとう もう夜ですよ?

ともすれば終わらないんじゃないかって
ちょっと無理かもしれんと思いましたが
どうにかこうにかいけましたね。
内容はこれまでで 一番長いんじゃないかな?

明日は手術なので
とりあえず『本編結』までは
どうしても終わらせておきたかったんです

このシリーズ、始めにも書いてる通り
5/24と5/27の旅の記録なので
まだ、終わりが見えてはいません。

映画の後の舞台挨拶の様子は、
記事がネットに上がってましたので
ボクの方から書くことはありません。

サイン会、からの土日の過ごし方~
月曜出発までの心境など
次回は書こうかなと思っています。


長々と おつきあいくださり
ありがとうございます ではまた、次回。



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