平群開墾日記 #2 根(ルーツ)

開墾を始めて3ヶ月が経とうとしている。
夏野菜は終盤を迎え、畑では冬野菜の準備を始めている。
夏の間、毎週のように畑に通った。ハイキングの誘いを断ってすら。
このハマり具合はなんなんだろうか、と自分でも思う。

開墾は草刈りから始まった。
草刈り機は背丈ほどもある草たちをギュインギュイーンと圧倒的なパワーをで刈っていく。そして、視界を一変させる。雑草のジャングルが平地へと変わる。ある種暴力的な行為でもあるようにも思う。三本爪の備中鍬を振り下ろし、土を掘り起こす。やっかいで手ごわい雑草の地下茎をブチブチ引きちぎる。何かを破壊したいという欲求が満たされていく気がする。力いっぱいサンドバッグを殴るのはこんな感じなんだろうか。

もし一人で作業していたら、と考えると絶望的な気分になるが、草刈り機2台に、草集める係2人の共同作業の進みは早い。一日で雑草ジャングルが平地に変わる。
翌週には朝から畝を作り、昼から苗を探しにホームセンターへ出掛けた。種蒔きするのであれば、春先から始める必要があったのだろうけど、その時点で既に初夏。今植えられる苗をコメリの店先で物色する。時期が遅めなために値引きしているものもある。オクラ、きゅうり、アイコトマト、ナス、キャベツ、白菜、ししとう、伏見甘長とうがらし、ツルムラサキ、ブロッコリーと茎ブロッコリーで苗11種。枝豆は種から蒔いてもまだ大丈夫だと知って全12種。
たまたまホームセンターで出会った地元のセミプロ農家の方に、必要なものやおすすめを教えてもらい、石灰や8-8-8の肥料、牛糞、鶏糞も購入して畑へまく。
畝を整え、ビニールマルチを掛けて、苗を植える。キャベツや白菜には防虫ネットで覆う。きゅうりやトマトには支柱を立てる。その日のうちに、すっかり畑が出来上がる。

真夏に畑に一日にいれば、汗だくになる。駅前にコンビニはない。凍ったドリンクと昼ご飯を保冷バッグに入れ、長靴麦とわら帽子を背負って電車に乗り、最寄り駅から徒歩10分の畑へ向かう。水分補給に2、3リットルの飲み物が必要になる。朝から夕方までトイレにいかなくて良いくらい汗が出る。そんな日には近鉄電車に3駅乗ってスーパー銭湯で汗を流す。サウナでさらに汗をしぼり出してからビールを頂く。至福。

毎週末走っていたのが嘘みたいだ。本当に走っていたんだっけ?くらいに思える。もうランニングじゃなくても良い気がしている。畑の作業は体力あってこそ。実質、そのための体力作りとしてランニングをしている、と言っても良いかもしれない。
なんとなくそんな気はしていたけど、農作業は「アウトドア」だったんだということを、やってはじめて気づく。これまでしてきたアウトドアスポーツの延長線上に「畑」があって、何の違和感もない。一日中体を動かして汗をかき、土や植物に触れて、季節の変化を感じる。まさに、アウトドア。ウェアだって流用できるし。

田舎に育ち、早くここから出ていきたいと都会に憧れてた若者が、20代で野外フェスにハマり、30代でマラソンとトレランを始め、中年になった今、地元で暮らしている定年退職した70過ぎの親父と、現在進行形で同じことしている。
どうやら根っこはしぶといようだ。雑草の根のように。

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