夏草

読み書き音楽 / 水と草木と星と石 / 地に足ついた穏やかなものがすき / 音大卒 /…

夏草

読み書き音楽 / 水と草木と星と石 / 地に足ついた穏やかなものがすき / 音大卒 / 母ひとり子ひとり猫いっぴきで暮らしています

最近の記事

あけぼの

 わるい記憶とは都合のよいものだと思う。どんなに苦しくとも妬ましくとも。蓋をしたいと願う限り、大人は一時的にでも理性のもと抑えこめてしまう。  そしてそれは蓋の下で蒸されて燻り、のちのち何倍もの芳香をまとって襲いかかってくるのだ。まるでばけものみたいに。なにかと首をもたげるみじめで厄介なしろもの。決して消えはしないもの。 .  春が好きだ。日が長くなり光はやわらかさに満ち、あたたかさの中で草木も花もあざやかになってゆく。終わりと始まりがいっぺんにおとずれて、めまぐるしく世

    • 逃げ道

      気持ちの落としどころがなく暴発しそうだった週末、どうにかしたくてカメラ散歩に出た。 私は一眼レフ、息子はキッズカメラを握りしめ、当てどなく歩く小さな旅。ただただ撮りたいものの方へ。 各々が思い思いに立ちどまる。彼は行く先々の自動販売機に心惹かれるようだった。 おなじ世界を生きおなじ道を歩けども、たとえ血を分けた子であってもおなじ写真は存在し得ない。そこが写真のすごいところ。 3年足らず前、3歳の誕生日にカメラを贈ってよかったと思う。 自分や世界の一瞬を切り取ること。生きる

      • 而立の冬

        年末に高熱を出し寝込んでいる。 繁忙期の欠勤を電話とLINEでひたすら謝る。 発熱外来はどこもいっぱい。自宅で検査したらさすがに二度目の流行り病ではなかった。インフルエンザかアデノウイルスな気がするけれど、いずれにせよ3日間も熱が引かず身体中が痛い。 つらさに耐えかねてちょくちょく布団乾燥機の温風を浴びる。1日3回バファリンを飲む。とっときのよつ葉アイスクリームを出してきて食べた。子どもにはUberでご機嫌になってもらう。 今やなんでもスマホひとつで届けてもらえ、置き配なら

        • 積ん読で土星をめざす

          先日、遠山氏と積ん読について話しました。 というわけで、私の積ん読その他を見てください。 (遠山氏の積ん読はこちら) 積み小説 子どもを産んだら小説をまったく読めなくなってしまい(おそらく脳のキャパシティの問題)、どうしたって読めないことがかなしくて、物心つく前からの継続が断たれてさみしいなと思い続けています。 現実で子育てと生活と仕事とをまわしながら、余暇で突然に異なる世界へと頭をもっていくのはなかなかむずかしいことです。24時間体制で対応せねばならないから思考を止め

        あけぼの

          満足は罪なのか

          ハングリー精神みたいなものが0に近い。 そのことにかなりのコンプレックスがある。 むかし夫に「人生の目標がないなんてありえない」と言われてとても悲しくなってしまった。 ありえなかないだろ、そうはならんだろじゃないだろ。目の前でそうなってるだろ。 . 求められた場所にいく癖がある。誰かの役に立てれば・誰かがよろこんでくれればそれだけでうれしい。 「自分のために成長したい」と滅多に思わない。 「この人のために成長したい」とならとても思う。人や組織のために成長することは好き。

          満足は罪なのか

          家事をする

          フライパンにクッキングシートをひき、鮭をふた切れのせ、ホイルでおおって火の通るのを待つ。小鍋に湯を沸かし、水餃子をゆでる。水揚げし、小鍋を洗って拭き、そのまま多めのごま油を熱して卵を炒る。 穀物酢・きび砂糖・塩を合わせる。薄めの酢飯をこしらえる。 きゅうり不在。代わりに大葉をわさっと細切りに。野菜室の葉物たちをかき集めてサラダへ化けさせる。 焼きあがった鮭の骨と皮をとる。大きめにふわっとほぐし、炒り卵・大葉・たっぷりの炒りごまといっしょに酢飯に混ぜこむ。 夕飯の完成。子どもに

          家事をする

          生活のかたちを変えた話

          1ヶ月あまり前から夫と別居しています。 発達っ子のワンオペ育児はかなりきついですが、発達夫との暮らしにおける気苦労が完全になくなり、部分的にはかなり楽にもなりました。 夫の家は、我が家からは新幹線に乗っていく距離。山以外ほとんどなにもないところに住んでいるみたいです。 Facetimeで見せてもらった範囲でしか知りませんが、好きにしてくれ、と思います。 夫の仕事のための別居、つまり単身赴任です。でも個人事業主である夫は本来どこででも仕事ができるひと。 家族といっしょにいる

          生活のかたちを変えた話

          2021年の記録

          前回のnote更新から4年が経ちました。 途中ワードプレスでアドセンス収益を得ていた時期もあったけれど、なんだかむなしくなってやめちゃった。 文章の内容に関係のない利益を得ることは、なんとなく自分の拠りどころとしたい指標からは外れていたんだと思います。当時はよくわかっていなかったけれど。 ぜんぜん向いてなかったなって、今は思います。 子育てしたり、病気になったり、保育のパートを始めて辞めたり、また別の仕事を始めたり。いろんなことがあって、ちゃんと自分のことを自分のことばで書

          2021年の記録

          3ヶ月おぼえがき

          息子が生後3ヶ月をむかえた。 つまり私は母親3ヶ月、夫も父親3ヶ月。 出産前に不安に思っていたことはすべて流れ去り、今はただ、息子という目の前の人間に日々粛々と向き合っているだけ。 要するに、すべては取り越し苦労だったということ。産んだら、お世話したら、実際なんとかなっている。疑問や困難はその時々で乗り越えるしかなくて、必要な物もその時々で買ってみるしかなくて、産む前にあれこれ悩んだって何も近づけるわけがなかったんである。 最近の息子。 ・おっぱいを飲むのが上手になった。ち

          3ヶ月おぼえがき

          息子と我が家の1ヶ月

          母子の1ヶ月健診が終わった。 母である自分にとっては産後初の外出で、息子にとっては生後初の外出。それなりにビッグなイベント。 息子は夫の抱っこ紐に入れてもらい、ぐっすり眠ってご機嫌に見えた。 6/21に2.6kgで産まれたのが、7/24には母乳のみで4kgに。 この1ヶ月間は昼夜を問わず、眠くてもしんどくてもおっぱいを差し出し体液を飲ませてきた。 泣いたらおむつをチェックし、汚れていたら交換し、前回の授乳時刻をチェックし、空腹そうならおっぱいをあげ、特に理由がなさそうであれ

          息子と我が家の1ヶ月

          帝王切開前夜

          38w5d。予定帝王切開を明日の朝に控え、ついに入院した。 夫とともにたくさんの説明を聞き、検査を受けて、夕方見送るときちょっと泣きそうになった。 妊娠が判明してからの8ヶ月間は、思えば最高に楽しかった。つわりの時期に仕事をやめ、在宅勤務の夫とはほぼ毎日24時間いっしょにおり、これまでの人生でいちばんのんびりとした時間を過ごしたと思う。 子育てのことを考えて、考えて考えて不安になって、それでもやっぱり楽しみで、毎日なんにもしていないのにあっという間に過ぎていった。 8ヶ月を

          帝王切開前夜

          帝王切開を前に思うこと

          現在妊娠37週。 逆子はなおらず、加えて発育不全気味で低体重。頭囲も腹囲も短い。なぜか脚だけが長い。(!) 予定日よりも前に帝王切開の予定がストンと組まれ、すでにその日まで残り2週間を切っている。 手術日が決まってしまったとき、正直とてもショックだった。 母も私を帝王切開で産んだのだけれど、それを聞いて育ってきていてもなお、お産=経膣分娩という意識が底の方にあったと思う。 なぜかって、自然分娩=経膣分娩だから。帝王切開=異常分娩だから。そういう呼び名になっているから。 おし

          帝王切開を前に思うこと

          逆子

          29wの妊婦健診、逆子だと言われた。 なんとなくそんな感触はしていたので(やっぱりかー…)という気持ちにはなったものの、あらためて医師から指摘されてしまうとたいそう落ち込む。 まだ回れる時期だから!と言われ、逆子体操や寝る向きの指導も入らず。というより助産師さんは逆子体操にあまり熱を込めていないようだった。調べたら、逆子体操を推す病院と推さない病院とあるらしい。 私の通う病院では、そもそも「逆子=直すもの」ではないもよう。いたってスムーズに帝王切開へと移行しそうな雰囲気。

          ザーメン騒動について

          筒井康隆を読まない自分が、氏の発言のどこにどうモニョったのかを考えるため、ツイッターで賛否両論眺めていて思ったこと。 からまった中身をまとめるべく勢いのまま記しているため、あくまで個人的な感想にとどまるものであり、社会的・政治的問題には一切関与しません。 (倫理的に)口に出していいことと悪いことというのはどうしたって存在していて、だめな内容と認識しながらもそれを敢えて口に出すのは、けっこうイキってトガった子どもじみているのではないかとまず思う。 言っちゃってる俺、人と違う俺

          ザーメン騒動について

          4Dエコーを体験してきた話

          いつも通っている総合病院とは違うところで、おなかの子の4Dエコーをやってもらってきた。 駅前商店街の中腹にある、院名に名字が入っているような規模の産婦人科。小さな待ち合い室はいっぱいで、椅子が足りず、立っている人もいたくらい。 服をめくったり着たりも含め、計30分で5,500円。撮影時間は15分超で、そのすべてをDVDに焼いてくれる。4Dエコーだけやりたい!という私のような妊婦の受け入れもしているので、人気があるのもわかる。 1ヶ月前からWeb予約を入れて、本当に本当に楽しみ

          4Dエコーを体験してきた話

          すくい上げてくれたもの

          おなかの子の性別がわかった。 あっけなかった。 夫いわく「レアガチャを引き終えてしまった感じ」と。なるほどそれ。 「課金してもう1回引きたい」わかる。重課金したい。 経腹エコーでうごうごと探られている途中、ん?と思ったけれど先生は何も言わず。なので「性別って今日わかりますか?」と控えめに聞いてみた。 そうしたら「わかったらお伝えしますか?」と返されたので、はい、お願いします、と。 後から夫に聞くと、夫も同じタイミングで、ん?と思っていたらしい。 ぅにょ〜んとかドゴ!とか存

          すくい上げてくれたもの