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「未開の議場 2023」って、どんなお話?

萩島商店街青年部、ハマカワフミエです。

noteはじめとなった前回、「萩島商店街青年部」について、その生い立ちからご紹介させていただきました。

今回は、上演する「未開の議場 2023」のお話、内容についてのご紹介です。


フライヤーや公式H Pの「story」に載っているテキスト以上の内容に直接触れる解説、つまり「ネタバレ」をする箇所は、


-------------ネタバレ線------------


こんな感じの線で区切っていきます。

事前情報は少なめで観劇したいんだ!ネタバレ、やめて!という方は、この線で区切られている箇所を、薄目で、駆け足で、通り過ぎていただければと思います。

それではさっそく「未開の議場 2023」、その内容に迫っていきます!



*どんなお話?


「未開の議場2023」のあらすじ。

公式H Pのstoryから引用すると、こんな感じです。

(公式からの引用なので、ここにはネタバレ線は引きません。)


トメニア人労働者が多く住む地方都市、幸笠県亀井郡萩島町。
商店街の青年部が主催して「萩島フェスタ」なるお祭りの実行委員会の会議がはじまる。基本的には進行の確認と、拍手の承認くらいで終わるはずだった。が、銭湯の女主人が口にしたタトゥーの入ったトメニア人の入湯拒否が訴訟にまで発展した話題から、各々の委員が抱えるトメニア人との問題が噴出し、会議は思わぬ方向へと走り出すのだった。

未開の議場 2023公式HP


こちらを、さらに詳しく見ていきたいと思います。


まずは、舞台となる「幸笠県亀井郡萩島町」。

これは一見してお気づきになられるかと思うのですが、架空の地名、となっています。「トメニア人」という在留外国人の存在も触れられていますが、この「トメニア」という国も、架空のものです。

ちなみに今、ふと思い立って調べてみたのですが、地方自治体が「市」として発足するためには、人口が5万人以上必要、ただし、市町村の合併の特例等に関する法律の規定が適用されれば3万人以上でも認められる、という決まりがあるそうです。

つまり、萩島町は、どんなに多く見積もっても人口は5万人未満。

地方にある、こぢんまりした、ちいさな町と言えるでしょう。

そこに、在留外国人である「トメニア」からの労働者やその家族が、全国平均を遥かに上回る割合で、住んでいる。

どうでしょう。作品の背景となるこの町の設定、なんとなくでもお分かりいただけたでしょうか?


その次です。

商店街の青年部が主催する「萩島フェスタ」。

作品は、このお祭りの実行委員会たちによる、会議の様子を描きます。

商店街の青年部(40歳以下で構成される、という設定になっています)、つまり若手仕切りのイベントとして、在留外国人であるトメニア人との交流を念頭に置いたお祭りをやろうとしている、というその準備段階。そのさなかで行われる会議で起こる、けんけんがくがくの色々が、繰り広げられていきます。

これは、映画「12人の優しい日本人」などに見られる、いわゆる「会議劇」と呼ばれるタイプの演劇になります。

会議劇というのは、場面が移り変わることもなければ、派手なセットや音響照明などの聴覚・視覚効果をあまり必要としない、比較的簡素なしつらえで作品を構成することが可能、という利点が(創り手側には)あるのですが、

同時に、脚本の強度と俳優の技量がもろに出る、試される、という怖さも(創り手側には)あります。

個人的に、会議劇のすごく好きなところとして、「作中の人物たちと全く同じ時間を客席で共有することになる」というのがあります。場面転換や、時間の移動がないので、舞台上で流れる時間はそのまま客席で体感する時間とイコールになるんですね。省略も飛躍もない分、登場人物が感じた時間を、全く同じ流れ、同じ尺で、感じることができる。これは会議劇の大きな魅力だと思います。


では、作中、青年部の面々はどんな会議をしているのか。

ここから、少々のネタバレをします。







---------------ネタバレ線開始---------------














最初のHPからの引用部分からでもお察しいただけるかもしれませんが、

この町、決してトメニア人に対してなんの壁もなく、みんな仲良くハッピーに共存できているわけではありません。

アンチがいます。それはこの商店街青年部の中でも例外ではなく、

会議は親トメニア派と反トメニア派に割れてしまう場面も、あるのです。

しかしそれは、トメニア人に対してどのような感情を抱くに至ったかの背景が各個人に、それぞれの自分の物語として根付いていることに由来しています。

作品は、会議の模様を描く内容ではありますが、この各個人の、それぞれの物語を浮かび上がらせるものでもあると思っています。

メンバーの中には、タトゥーの入ったトメニア人の入湯を拒否した銭湯の従業員もいれば、

トメニアで暮らした方が活躍できそうだよ、とまで言われてしまうほど親トメニアなひとも、います。

そんな、トメニア人たちとの距離感も関係性もバラバラな面々による会議です。

会議の大枠は「フェスタにトメニア人ボランティアの参加を認めるべきか否か」という比較的シンプルな議題を大命題として掲げたものなのですが、そんなバラバラな人たちが話し合うものですから、これがとっても、まとまらない。

それゆえ、お芝居が一本できてしまうほどの時間を使い、二転三転の展開を見せることになるのです。

痛みも描かれます。気持ちよくスパンと解決することができない現実も、宙ぶらりんのまま放り出される想いも、あります。でも、希望も、前に進む勇気も、大人たちが見つけ出した「落とし所」みたいなものも、救いも、ちゃんとあります。それからほんのちょっと、皮肉も。













---------------ネタバレ線終了---------------














と、ここまで書いておいてなんなんですが、「ネタバレ一切気にしない!むしろ重箱の隅までつつけるくらい予習がしたいぜ!」という方に、おすすめなのがこちらです。これを観れば、もう予習は完壁です。


「未開の議場オンライン」英語字幕版千秋楽のアーカイブです。

字幕を読みながらだと、とあるセリフの中でだけ登場する人物についての謎が解けるのと、前回演出だった北川大輔氏が「字幕千秋楽が結局、みんなオンライン慣れもして芝居的にも熟れて一番よかった」との評価をしていたので、こちらを先にご紹介しましたが、字幕うっとおしいよ、という方は、こちらをどうぞ。


ちなみにどちらのバージョンも、30分ごろから本編開始となっています。それまでは、客入れです。苗山さんが鼻歌を歌い続けていますが、本編にはひとつも関係ないですし、一生懸命全部聴いたり曲名をリストアップしてみたりしても、特になんの伏線にもなっていませんのでご容赦ください。


ここから、「オンライン」だった部分を劇場版に変更し、

2023年現在のコロナ禍との整合性を取り、

キャスト変更に伴う改稿を経て、「未開の議場2023」は出来上がる予定です。

ちなみに、変更となったキャストは以下の通りです。

大崎龍介
 川本ナオト→鍛治本大樹(演劇集団キャラメルボックス)

馬場倫彦→馬場倫子(役名・性別変更)
 内山拓磨→大塚由祈子(アマヤドリ)

北川タルフィ→渡邉タルファン(役名・性別変更)
 北川大輔→渡邉とかげ(クロムモリブデン)


アーカイブ視聴で予習をしながら、キャスト変更に伴う改稿に思いを巡らす、なんていうのも「未開の議場2023」ならではの楽しみ方かもしれません。

どうぞ、お楽しみに!



***


今回は、「未開の議場2023」作品内容そのものについて、お話しさせていただきました。

読んでくださった皆様、どうもありがとうございます。

次回は、今回noteを立ち上げるきっかけとなった、新しい企画のご紹介をしようかな、と思っています。乞うご期待、です。


それでは皆様、次の記事でまたお会いしましょう!

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