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【オンラインツアーのつくり方】02.役割を分担しよう:ガイド、MC、うなずきん

 観光の新しい定番となりつつあるオンラインツアーのやり方・ノウハウを、わかりやすくご紹介していく動画シリーズ『オンラインツアーのつくり方~やってみよう!野外ライブ配信ツアー~』。
 今回は、オンラインツアーを実施するときの“役割分担”です。前回までにご紹介したように、この連載で目指すオンラインツアーは「現地(野外)」と「スタジオ(室内)」の2台体制でお客様をご案内します。今回は、それぞれの場所で必要なスタッフ配置と作業内容をご紹介します。

現地の役割①ガイド

●景色とお客様の仲介人 

 まず何といっても大切な役割は、現地をご案内する“ガイド”です。オンラインツアーのガイドは、カメラの向こう側からお客様がこちらを見ていることを想像しながらご案内します。

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 リアルのツアーと同様に、現地の今の景色を存分に堪能していただきたいですよね。ただ、オンラインだと香りや味、温度などをお届けすることができません。視覚と聴覚を使って現場の空気感をどれだけ伝えることができるか...ガイドの腕の見せ所です。「天気は?」「気温は?」「どんな香りがする?」「どんな音が聞こえる?」「足元はどうなっている?」リアルのツアーの時よりも意識して現場の状況を細かめに伝える工夫が必要かもしれません。

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 言葉で伝えるだけが手段ではありません。少し静かにしてみんなで波の音に耳を傾けたり、木の葉が揺れる様子を眺めて風を感じてみたり、小道具を使って解説してみたり、方法は工夫次第ですし、それがガイドさんの個性となりますよね。また、ついつい一方的に喋ってしまいがちですが、主人公はお客様。ガイドは景色とお客様をつなぐ仲介人です。ガイドのお勉強の成果発表会にするんじゃなくて、お客様が景色を堪能できる方法を“ご提案する”ということを心がけたいですね(詳しくは次回、お伝えしようと思います)。

 そうして景色とお客様の間にある長~い距離を、ガイドができるだけ縮めていきます。その距離が極限まで縮まると、お客様はまるで現地にいるかのような感覚に浸れるはずです。こうした技術は「インタープリテーション」と言い、オンラインツアーに限らず相手に何かを伝えようというときに役立ちます。調べれば書籍や研修会がありますので、身に着けておくと良いと思います。

参考書籍:「もう一度会いたい」と思われる人になる インタープリターが伝えるコミュニケーションと探究の極意(菊間 彰 著/学事出版)


現地の役割②カメラマン

●お客様の目になろう

 ガイドと一緒に現地の景色をお届けするのが、カメラマンです。スマホを取り付けたジンバルを片手に、現地の撮影をします。ワイヤレスイヤホンを使う場合は、片耳をガイド、もう片方をカメラマンが装着すれば、ガイドもカメラマンも音声を聞くことができます。

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 オンラインツアーは映画やテレビ番組ではありません。旅番組のようなものをイメージして撮影するのではなく、自分自身がお客様になりきって撮影し、臨場感のある映像をお届けすることが大切です。

 ガイドと程よい距離(2~3m)を保ち、「こちらを見てください」と言われたらそちらにカメラを向ける、「しゃがんでください」と言われたらしゃがむ。ガイドの手法にもよりますが、ガイドが話しているときは腰か胸から上が映るぐらいの距離感がちょうどよいと思います。全身が見えるぐらい離れると、お客様からすると「遠いな」と感じてしまいます。現地の美しい映像をお届けする、というよりも、“お客様の目になる”という意識でいると良いと思います。

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●なめらかに、シンプルに
 カメラマンが心がけておくと良いことがもう一つあります。カメラの動かし方です。野外を案内する場合、歩き回ったり、向きを変えたりすることが多々あります。このとき、カメラを急激に動かすことは避け、“なめらかに動かす”ことと、行ったり来たりするような複雑な動きもせずに最小限の移動で済むように“シンプルに動かす”ことです。目安として、90度向きを変えるのに2~3秒ぐらいかけるとよいと思います。

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 映像の動きが激しいと見ている側は疲れてしまいますし、酔って気持ち悪くなってしまうこともあります。また、Zoom等のビデオ会議システムは映像の変化が激しくなるほどデータ通信量が増えて画質が悪くなる場合があるので、通信に負荷をかけないためにも余計な動きはしないようにしましょう。

スタジオの役割①MC

●ガイドとお客様の仲介人
 続いて、スタジオの役割分担です。まずはMC、オンラインツアー全体の進行役です。ツアーにおいて、ガイドとお客様の関係性や居心地の良い雰囲気をつくれるかどうかが満足度に直結します。周りは知らいない人、ガイドさんもどんな人かわからない、そんな緊張の中で1~2時間...楽しめませんよね。参加者同士で仲良くなったり、ガイドさんもフレンドリーに声掛けしてくれたりしたら「ツアーに参加してよかった」と心から思いますよね。

 ところがオンラインの場合、ガイドがお客様一人一人の顔を見て細やかな対応をすることやコミュニケーションをとることが難しいのです。そこでガイドとお客様のつなぎ役として重要なのが、スタジオからお客様の様子もガイドの様子も見ることができるMCなのです。

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 以下にMCの主な役割をざっくりと紹介します。

<ツアー開始時>
◆ 始まりのあいさつ
◆ Zoomの操作方法や注意事項をお伝えする
◆ アイスブレイクを入れて緊張をほぐす
◆ 現地の基本情報をお伝えする
<現地ガイド中>
◆ ガイドが不安にならないようにこまめに相づちを打つ
◆ チャットの質問や感想をガイドに伝える
◆ お客様の様子を常に観察しながらガイドのフォローをする
◆ 現地の通信が途切れてしまったときに場をつなぐ
<ツアー終了時>
◆ お客様に感想を伺う
◆ 〆のあいさつ

 いかがでしょう?結構、いや、かなり大変そうじゃないですか?

 そうなんです。実は、オンラインツアーの成功のカギを握っているのは、ガイドではなく全体の進行役であるMCだと思っています。現地のガイドがいくら上手でもMCが下手くそだと台無しだし、逆に現地のガイドが多少つたなくてもMCがフォローすれば上質なツアー体験を提供できます。コミュニケーション力があって、状況に応じて臨機応変に対応ができる人材を配置したいですね。


スタジオの役割②アシスタント

●パソコン操作の専門スタッフ
 オンラインツアーにおけるMCの負担の大きさがわかっていただけたと思います。しかもZoomですから、パソコン操作をしながらやらなくてはならないのです。これらスタジオの作業をすべて一人でこなせるような超人はなかなかいないと思います。そこでアシスタントが必要になってきます。MCがツアーの進行に集中できるように、主にパソコン操作を担当します。

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 以下にオンラインツアーでの主なパソコン(Zoom)操作を紹介します。

◆ マイクやビデオのオン・オフの切り替え
◆ スポットライトビデオ等の画面の切り替え
◆ 画像や動画資料の共有
◆ チャットの確認や返信
◆ 配信状況の確認

 MCの負担が少しでも軽減し、ツアーの進行に集中できるようにする仕事です。MCが一切パソコンに触れなくても良いぐらいの気持ちで働いてくれると、MCはかなりやりやすくなると思います。Zoomの操作や機能を熟知していることや、細やかな気配りができる人がいてくれると安心ですね。


“うなずきんちゃん”のススメ

●うなずき専門家
 最後に、必須ではないけどこんな人がいると良い、という役割をご紹介します。お客様にまぎれてツアーに参加し、相づちを打ったり、大げさにリアクションしたり、積極的に質問したりする人...簡単に言えばサクラです。うなずきの専門家なので、私たちは“うなずきんちゃん”と呼んでいます。

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 うなずきんちゃんは、MCがツアーの雰囲気づくりをするのを参加者側から援護する役割です。「質問はいつでもOKですよ」と言われても、誰も発言しない中で質問するのは勇気がいりますよね。でも他に質問している人がいれば、そのハードルはぐっと下がります。

 それから、MCやガイドからしても相づちを打ってくれる人がいるだけでリズムよく進行することができるようになります。Zoomあるあるなのですが、話をしている以外の参加者はジッと画面を見て真顔で微動だにしない、ということがよくあります。この状態が続くと何が起こるかというと「伝わってるんだろうか...」「つまんないのかな...」「ひょっとして怒っている??」と、話している人がどんどん不安になっていくんです。そしてどんどん声は小さくなり、カミカミになり、テンポが悪くなり...ツアーの質が下がっていってしまいます。

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 うなずいてくれる人がいると「伝わっているんだ!」「面白がってくれてる!」とどんどん勇気が湧いてきて、声は自信に満ち、饒舌になり、テンポよく進めることができます。人前でしゃべったことがある人は、そんな経験あるんじゃないでしょうか。

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●「リズム同調」で一体感!
 実はこれ、脳科学的にも裏付けられています。“リズム同調”と言って、うなずきがあると、話し手と聞き手の脳の血流量や脳波のリズムがそろうという現象が起こることが知られています。これは人が互いに共感しあっている時によく見られる現象だそうです。うなずきがあると、共感や一体感が生まれるということですね。ガイド、MCそして参加者、その場にいる人たちとこの瞬間だけの景色を眺め、感動を共有する喜びこそがツアーの醍醐味ですから、これは利用しない手はないですよね。

参考:心をつなぐ パワー!ビデオ通話の極意 - NHK ガッテン!
https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20201111/index.html


現地の機材と人材をそろえてパートナーを探そう

 ここまで、オンラインツアーの役割分担をご紹介してきました。いかがだったでしょうか。「こんなに大変なのか...」と思う方が多いのではないでしょうか。人材が豊富なチームであれば別ですが、なかなかここまで人手を割くって大変ですよね。

 でも諦めなくても大丈夫です!全部を自分たちでやる必要はないのです。

 現在、多くの旅行会社さんがオンラインツアーの提供を始めていますが、スタジオは自社スタッフが担当し、ガイドのみを現地の人にお願いするといった形式のサービスを提供しているところがあります。そういう会社と組んでツアーを企画すれば、自分たちとしては現地の機材とスタッフ、つまりスマホ・ジンバル・イヤホンを用意して、ガイドとカメラマンの最低2人がいれば良いのです。ツアーの質を左右するMCも、ある程度の知識と技術が必要なパソコン操作も、全部プロにお任せできます。

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 実はオンラインツアーで一番苦労するのは“集客”だったりしますが、それも旅行会社の発信力やリピーターの力を借りることができます。まずはいろんな会社のオンラインツアーに参加してみて、パートナー探しをしてみてはいかがでしょうか。

参考:琴平バス「オンラインバスツアー」
https://www.kotobus-tour.jp/online/
あうたびオンラインツアー
https://autabi.com/online-tour/


 次回は「03.感動が伝わる企画にしよう~離れていても心は1つ~」です。お客様により満足していただくための参加体験型オンラインツアーの工夫をご紹介します。お楽しみに!

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