虚構


手羽先と手羽元の違いがわからなくてもなんだかんだ生きていける。

ASMRをスピーカーで聴いたって捕まりはしない。

ちぐはぐな生き方でも、世界がそれを認めなくても、それを誰に咎めることができるか。


うまくいかないと言ってしまえば片が付く。

責任が綺麗に収まるような在り処なんてなくて、大したキャパのない私ん家のゴミ箱にギュウギュウと押し込む。

人の為に活きる誰かの中に、其の誰かはいるのだろうか。

誰かの為を想う私の中に、私はいるのだろうか。


改札口の内側では、財布が見当たらないと話す二人組の男子学生が鞄をひっくり返していた。

改札口の外側では、隅でスマホを耳元にあてがう女性が、小さな嗚咽を繰り返しながら泣いていた。

波打つ感情は波紋し、揺れる心の目を奪う。

いびきのような雑踏は、波を打ち消し、目を閉じる。


虚ろな足取り。誰の為でもない空模様。溜息に濁る宙を見下ろす。

爪先はいつだって、前しか向いてくれない。


時計の針が最も精を出して駆け回る午前1時42分。

暗中を手繰って言葉を拾い集めた500文字に満たないnote。


私くらい、私を認めてあげたいな。



おやすみなさい。


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