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ハゲ小説#4 ハゲが一瞬死んだ日と妙な体験 編 02

走り出してしばらくすると、三神がこう言った―――。

「グラウンドまで競争しようぜ!!」

こいつ、おれの愛車が20インチ(変速なし)なのを分かって言ってるのか!?
菊宮弟と安斎のは忘れたが、同級生の菊宮と三神の自転車は変速ギア付きの22か24インチ。その性能とタイヤ径の違いからして、有利なのは圧倒的に菊宮・三神だ。しかし、やらないとも言えず、おれは答えた。

「ええよ!やろうや!」

「先にグラウンドに着いたヤツが勝ちな!」

そして、ダービー馬の如く、横一線におれたちは並んだ。

READY GO!!!


負けじとみなが皆、一斉にペダルを踏む!スタート地点からグラウンドまでの距離は300mもない。心のどこかで、女子の見ていないとこで頑張っても仕方ないよな~。と、おれは邪(よこしま)な気持ちを抱えながら、愛車を運転した。

シャーーーッ!!必死に走る。全意識が、自転車を進めることだけに集中する。流れる景色も、空を飛ぶ鳥の声すら入ってこない。

グラウンドまで残り15m。
気づけば、20インチのおれの愛車は先頭を走っていた。

「よっしゃ!!おれ一番!」心の中で勝利を確信した。

その時!


「ドガッシャ―――――ン!!!!!」


信号もないグラウンド前の道路、右側からきた自動車にはねられ、おれと
ジャイアンツ仕様の20インチ自転車は吹き飛んだ。

互いにノーブレーキ。

さすがのおれも変速ギア付きタイヤ2個のマシンには勝てたが、変速ギア付きタイヤ4個のマシンには勝てない。

『狭い道から広い道に出るときは、必ず止まって右左を~』の交通安全標語みたいなのが、一瞬頭に浮かんだが、グラウンドへ1番で入りブレーキを握ることだけを頭で考えていたおれに、右左を確認する意識などあろうはずがない。

やはりバカな男子が5人も集うと、ロクなことになりゃしない・・・・・。

そして意識せず頭に流れてきたのは、それまで生きてきた短くて儚い人生の場面・場面が高速パラパラマンガで再生されるような走馬灯だった。

「これ死んだわ」

単純にそう思った。そして闇の中へ―――――。
その後の記憶はない。

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ハゲが一瞬死んだ日と妙な体験 編 03に続く(気が向いたら、だ!)





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