見出し画像

場末雀荘日記 その1 「一姫」

ネオ所沢にある雀荘Pで、俺(40代半ば)はS君(20代後半)、N君(30代半ば)、K君(30代前半)と同卓していた。K君はN君の後輩で、俺との同卓は初めてだった。

K君はどうもフリー雀荘、というかリアルの麻雀に慣れていないようだ。
手つきがいかにも初心者といった感じで、しょっちゅう山の牌をこぼしたり、アガった際に手牌を開ける時も、うまくいかずグチャグチャになったりしていた。

俺も過去にはそういうこともあったな、などと感じながら、少しでもK君の緊張を解こうと思い、打ちながら彼と軽く話をした。
場末のホームグラウンドならではだ。

どうやらK君は、もともとネット麻雀をプレイしていたようで、フリー雀荘は最近行くようになったらしい。

見ている限り、K君は牌効率や押し引きなどはしっかりしている。フリー雀荘に慣れていないだけだ。

点数申告も少しだけ時間がかかるが、大丈夫なようだ。
リーヅモピンフドラ1を「イチサン・ニーロク」ではなく「1300・2600」としっかり言っているあたり、スレていない今時の雀士といった印象を受ける。

K君は少しだけ和んだようだが、まだ緊張しているようだ。
俺の対面に座るN君が「落ち着いてやれ」とアドバイスしているが、それがかえってK君を委縮させてしまっているような気もする。

上家のS君は都内でメンバーをしていた経験があり、摸打のスピードも速く、終始無言で淡々と打っている。そして強い。

俺自身、口ではK君に「リラックスだよ」と言ってはいたが、会話をしながらもシビアに打っていた。
N君も平静を装いながらも、真剣な表情だ。
K君は緊張のせいか、ツモって切るたびに大きく息をついている。

そうこうしているうちに、俺はテンパった

六萬を切ればカン三萬待ちの確定イーペーコー。
だが俺はノータイムで二萬に手をかけた。俺はすべての牌の中で伍萬が一番好きだ。俺の伍萬好きは、もはや宗教と言っていい。

この店には白ポッチもあり、リーチ後はオールマイティ扱いである。そしてまだ場には姿を見せていない。

「リーチにゃ!」

二萬を切りながら『雀魂』のキャラクター・一姫を真似て俺は言った。俺なりに場の雰囲気をほぐすための愛嬌だ。
話の中で、K君は『雀魂』をプレイしていることがわかっていた。

三人が現物やスジを切ってきた。
俺のツモ番。親指の腹に好きな感触があった。



「ツモにゃ~!!」

ツモッた伍萬は赤だった。赤は通常の牌よりマイルドな手触りだ。

裏ドラは乗らなかったが、立直一発ツモタンヤオ赤赤で跳満だ。

「3000・6000の三枚、はねにゃん!

俺が申告すると、K君はまるで一姫がふるえているスタンプのように手をプルプルさせながら点棒とチップを渡してきた。

内心で俺の行儀はあまり良くないな、と思いつつも、彼にはたくましく成長して欲しい、そう願った。


今日も場末は平常運転である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?