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ラオス~メコンの流れにたゆたう時間③

時間だけはたっぷりあった旅人時代、宿や町や食堂で出会った人たちと夕方になると誘い合ってメコン川へ出かけ、夕日を見るのがお約束だった。もちろんビアラオ片手にね。

まだ日が高いうちからビアラオを飲みながらだらだらと過ごし、夕日が沈んだ後は「今日もいい夕日だったね~」と笑いあう。あの時一緒に夕日を見た仲間たち、今頃どこで何してるんだろう?

ルアンパバン二日目の朝は、地元の村のジミーな托鉢を見て、市場へ出かけ、パパイヤをひとつ購入。昔は1000キップで買えたのに今は8000キップ(それでも100円だけど)20年で価格は10倍の感覚だ。

500キップだった屋台のおかずも5000キップだし、カフェラオも1000キップが10000キップ以上に。しかも、コンデンスミルク入りのプリミティブなカフェラオなどどこにもなく、こじゃれたサードウェイブな顔したやつしかないからなんだかな~と思うも、飲んで納得。もともとの素材が良かったからだが、技術とセンス次第でこんなにも洗練された味わいになるのかと驚いた。でもその隣にはまだ、天秤棒で軽食を運んで家々を回るおばさんがいたりする。ずっと残っていてほしいラオ。旅人の郷愁。

朝は宿で会社の仕事を一つ片付けて、自転車を借りて織物の村へ。といっても民家でおかあさんたちが機織りしてるだけだけど、こちらもなんだかこじゃれたデザインが増えていて、もちろん値段も上がってた

お昼は川沿いのラオ式焼肉&鍋のお店にて。2人分のセットしかないと聞いて悩んでいたら、隣のオージー女性がやはりひとりだったのでシェアすることに。お店は川沿いの斜面段々に席がある凝った造り。ふたりで1000円くらいは安いっちゃ安いのだが、17年前に比べると…(以下略)

街を散歩しながら明日の宿を探し、ちょこちょことお店をのぞいたり、屋台でおやつを食べたりして、夕日の時間はもちろんメコン川にてビアラオタイム。昔も今も、圧倒的な夕日は変わらないが、私も街も時とともに変わっていく。だからこそ、その日その場所その瞬間に巡り合えた幸せを大切にしたいなんて思ったりする

ナイトマーケットもずいぶん変わった。昔は、民族衣装を着た少数民族たちが素朴な刺繍の入った小物や織物などを持ち寄っていたのに、市場のあった場所はこじゃれたフードコートになり、道路全体に大掛かりな屋台街ができている。どこもかしこも品ぞろえは変わらないし、そそられるものもあまりない。

世界中どこもそうだけど、ラオももう、伝統衣装のシンや部族の民族衣装を着ている人などほとんどいない。文化はこうして均一化されていくのだろうか。さびしいなあ(と和服を一枚も持っていない私がいっても説得力ないか)

宿に帰ろうかと歩き出したところで、なにやら魅惑的な調べが聞こえてきたので、探してみると、どうやら国立博物館の中らしい。音楽に引き寄せられてたどり着いた場所では国立バレー団のステージをやっているという。1時間のプログラムでもう半分終わっていたが、チケットを割引してもらって潜り込むことができた。

民族楽器の不調和な調べが面白く、ゆるやかなダンスよりもつい演奏者を見てしまう。ふらふらしていたおかげで、巡り合えた素敵な時間。

ステージ後は、昨夜同じ宿だった日本人の方がいらしてたので、一緒に夕食を食べに行く
彼にとってはルアンパバン最後の夜とのことで、洗練されたラオ料理で知られるタマリンドに入り、ビアラオで乾杯。ルアンパバン名物の盛り合わせに、水牛のラープ。もちろんビアラオをジャンジャン飲んで、最後はもち米で造る蒸留酒のラオラオ。

あんなに垢抜けなかったラオラオも、インフュージョンなんてこじゃれた手法ですっかりおしゃれなスピリッツに。カフィアライムとライムを使ったラオラオカクテルなんてのも見かけたりして、焼酎や泡盛よりずっと進化していろぞ!

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