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デンマークでガン検診を受けた: (3)大腸カメラ検査

冒頭のサムネ写真をみて、腸管洗浄剤だとすぐに分かった方は、デンマークで大腸カメラ検査をした人ですね。
そんな日本人がどのくらい存在するか知りませんが。

前回に書いたとおり、幸いにもCT検査では大きな問題は見られませんでしたが、ファスト・トラック検査はそれだけでは終わりません。


まずは専門医との面談

総合病院で面談にあたった専門医は、GPに続いてこれまた女医さんでした。(便宜上、女医2としておきます。)

女医2:「とくに問題は見当たらないけど、便秘症ですか?画像によると、       けっこう溜まっているように見受けられますが。」
葉隠:「最近、急に便秘がちになりました。」

意図しない体重減少に加えて排便習慣の変化、それも年齢が50代となれば、医師がするまっとうな提案は内視鏡検査です。
女医2:「大腸カメラ検査を受けてみたほうがいいかも。」

ですが、私はためらいました。
葉隠:「え、ちょっと待ってください、大腸カメラをする必要があるんですか?腫瘍マーカーでも造影CT検査でも、特に異常なかったんですよね?」

大腸カメラはしんどいと聞いていたので、ビビりの私は食い下がりました。こういうゴネる患者はうっとおしいです。案の定、たしなめられました。

女医2:「あなた、何のためにここにいるか分かってますか?悪性のものがない事を確認するために検診をしてるんですよ。」

彼女曰く、ファスト・トラック検査は、体の中のパンドラの箱を開けるようなものだと。腫瘍マーカーやCT検査では見つけられない異常もあるので、たとえ予想し得ない問題が出てくるかも知れないし、疑わしき部位はちゃんと調べておくべきである、と力説されました。

「分かりました… 」と、しぶしぶ返事をしたものの、気が進まないなぁ、とうなだれていると、「麻酔を使いますか? あなた痩せてるから、通常の鎮静剤だけだとちょっとキツいかもしれないし」と言って下さいました。

厳しい女医さんだと思ったけど、こういう気づかいがあるのはやはり有難いです。痛みがないと知るや否や、私は一気に大腸カメラ検査に前向きになりました。痛みに対しては子供並みに弱虫なので、痛くないよー、といわれると、子供並みに喜びます。単純です。

大腸カメラ検査の準備

内視鏡検査を受ける前の準備は日本もデンマークもほぼ同じだと思います。日本で検査したことはないので憶測ですが。

病院でもらった説明書きには、5日前から種子類や全粒粉パンおよび食物繊維の多い食べ物など、消化に時間のかかるものは避けよ、とあります。ふだん食物繊維の多い物を食べている私に取ってこれはなかなか難しく、面倒くさいので、お粥ばっかり食べてました。

3日目から緩下剤を服用して前処置をした後、検査前日の夜と当日の早朝、2度にわたって冒頭にあげた腸管洗浄液を服用します。ひと箱に粉末の袋が2回分入っています。

日本語のSNSなんかで、腸管洗浄液を飲むのがつらいとか不味いとか文句を言ってる人が結構いますが、文句のつけどころはそこか?と思います。大事な検査なんですよ? それに、カメラ挿入のほうが不安じゃないですか?

とはいえ、日本で大腸カメラ検査を受ける場合、2リットルくらいの量の液体を飲まないといけなかったらしく(今は改善されたと思います)、確かにちょっときついかもしれません。とくにお年寄りとかは。

私の場合は、洗浄剤 Plenvuの粉末を 500mlの水に溶かして飲み、それとは別に、さらに500mlの水分を30分以内に摂取せよとのことなので、一回あたり合計1リットルの水分を飲むことになります。まぁなんとかなる分量ですが、寒い季節だとちょっとしんどいかもしれません。

味については、一回目に服用する薬剤はマンゴー味、二回目のはフルーツポンチ味である、と説明書にあります。そう書いてあるからそのつもりなんでしょうが、ぶっちゃけ言ったもん勝ちやな、という感じです。

腸管洗浄剤は通常の下剤とは違うので、お腹が痛くなることもなく、最後のほうになると、ほぼ透明の洗浄液が泡立った状態で排泄されます。洗濯機のすすぎ過程をみるようで、この薬剤を開発した人、地味にすごいな、と私は妙なところで関心していました。

いよいよ検査:麻酔の威力ってすごい

検査の予約時間は昼前でした。麻酔を使用するので、待ち時間もかなりリラックスできました。

診察室で準備を整え、静脈麻酔をうつ直前の段階で、内視鏡スコープで診断にあたる医師が、「私が担当です」と、ひとこと挨拶に来られました。インド系とみられる、これまた女性の医師でした。女性が医療の現場で活躍されているのは大変心強いです。

麻酔担当の看護師が、「じゃ、麻酔うちますねー、すぐに効きますから」というのを聞いた数秒後には眠りに落ちていました。麻酔ってすごいですね。

一瞬ぼんやりと意識が戻ったのは、検査が終わって、ガラガラと音を立てて移動するベッドの上でした。この時、私はこれから診察が始まるのだと勘違いし、"I am still conscious...Why am I not asleep yet? (私、まだ意識があるんですけど… なんでまだ眠れてないんだろう?)" と言ったのを覚えています。

おぉ、私はこの状況でも英語で口走るのか、成長したもんだ、と変な感心をしながらまた眠りに落ちました。ベッドを移動させている看護師に私の声が聞き取れたとは思いませんが、もし聞こえていたら、「おまえ 爆睡しとったろーが」と、ツッコむところでしょう。

麻酔が完全に切れて目が覚めた時は、休憩室のベッドで横になっていました。看護師さんに時間を聞くと「1時 15分前です」とのこと。麻酔室に呼ばれたのは確か正午すぎだったので、全過程が40分足らずのうちに終了したことになります。痛みもなく、あっという間です。

お金を払ってでもしたほうがいい

大腸カメラ検査日の前後に、乳がんの検査(マンモグラフィとエコー検査)と、上腹部((胆のう付近)のエコー検査も受けました。一連の検査はファスト・トラックの一環であり、医師の判断に基づくものなので、全部無料です。税金が高いことで悪名だかいデンマークですが、その一部は当然、医療分野にも貢献しているので、文句を言わずに税金は払おうという気になります。

日本だとどうなんでしょうね。今の日本の保険制度は知らないのでわかりませんが、一部負担になるんでしょうか。人間ドックとかの自費診療だと、けっこう費用がかかるのかもしれません。

でも、大腸カメラ検査に限って言うと、腸内は洗浄されるし、異常があるかないかが確認できるし、お金を払ってでもしたほうがいい気がします。痛そうで怖い、という人は、麻酔を使って検査してくれる医療機関を探しましょう。最近は、日本でも増えてきていると聞きます。

たとえ費用がかかるとしても、大腸カメラ検査ってそんなにしょっちゅうするものではないですから。多分、数年に一回とか、異常がなかったら5年に一回とか、そういうレベルの頻度です。

自分への投資だと思ってやりましょう。物を買うとか、飲み食いに使うとか、なんなら株式投資するなんてことよりも、ずっと有意義なお金の使い道だと思います。

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