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デンマークでガン検診を受けた: (2)造影CT検査

日本で人間ドックや健康診断で「要精密検査」と言われたら、たぶん次に来るのはCT検査だと思います。それはデンマークでも同様です。私の場合は、血液検査(腫瘍マーカー)と造影剤を使ったCT検査を同じ日にしました。


まずは腫瘍マーカー検査

腫瘍マーカーについては、がんの早期発見には不向きだとも言われています。本来は、すでに癌の治療を受けている患者の予後を見るためのものだからです。健康な人の場合、実際にはとくに異常がなくてもマーカーが高値になったり、あるいは逆に、問題があるのに数値にあらわれないこともあるとか。

なので、健康な人が初見の検査で腫瘍マーカーをする意味はない、という意見もあるようですが、一応の目安というか、少なくとも気休めにはなります。ようは通常の血液検査の「より詳しいバージョン」なので、やっておいて損はないんではないか、と個人的には思います。

検査当日の朝、まずは採血セクションへ行き、番号を呼ばれてブースに入ると、中年の男性看護師と若い女性の看護師さんがいました。どうもトレイニー(実技研修中の看護師)にあたってしまったようです。

男性の看護師:「僕は彼女のスーパーバイザーです。採血は彼女がします。」とのこと。そうですか。まぁ練習台として私でお役に立てるなら幸いです。

トレイニー看護師:「どちらの腕がいいですか?」
ここで私は右腕を出しました。採血はいつも右でするからです。私の右腕の血管は太くて柔らかく、日本にいた数十年前も、イギリスにおいても、採血検査や献血のたびに、看護師さんから「やりやすいわー♡」、と褒めていただきました。なんの自慢にもなりませんが。

ただ、この日の検査のあと、ちょっと気になって調べて知ったのですが、造影CT検査では、造影剤をスムーズに循環させるために右腕から注入することが望ましいらしいです。なので、その直前に採血をする場合は左腕ですべきとか。日本の医療機関のネット情報を見ると、これを明記していることが多い気がします。

私がそんなことを知る由もないので、本来なら、「あなたはこの後すぐ、造影CTがあるから左腕で採血しましょう」と看護師のほうから言ってもらわないと困るんですけど。

とはいえ、そんな微に入り細にわたったケアは海外で期待すべきではありません。そして、デンマークの医療関係のウェブサイト、あと、念のためにイギリスのNHS (国民保健サービス)のページもざっと見ましたが、「造影剤注入は右腕推奨」の記述は見当たらなかったなので、絶対そうでないといけないわけではないのかもしれません。

それはさておき、腫瘍マーカーって、かなりの量の血液を採るんですね。どんだけ採るのよ、って感じです。

造影CT検査:生理食塩水注入で予想外に苦しむ

続いて造影CT検査なわけですが、CTスキャン担当の看護師がどことなく軽いノリです。そもそも、私は軽薄な奴が嫌いです。この状況においてはどうでもいいことですが。

どうもこの看護師、自分の英語は上手いと思い込んでいるようで、英語で雑談したいらしく(というか、被験者をリラックスさせるためなのか)、私が検査台に上がるまでどうでもいいことを喋り続け、何を聞いても「ノープロブレム!」を連発して、テンションが妙に高いです。

ま、それはいいんですが、検査台に横になっていざルートキープをする時、「あの、さっき右腕から採血したところなので、左でやってもらえますか?」とお願いしました。

CT担当看護師:「ノープロブレム!」

きみ、ちょっと落ち着けや、と思わず言いそうになるのをおさえ、大人しく注入針を刺してもらいました。ここまでは良かったのですよ。

ご存じかもしれませんが、造影剤を注入する前には、まず生理食塩水が注入されます。これがけっこう勢いよく入れられるので、私は思わず、「うぅぅぅぅっ」と、終始うなっていました。今まで経験したことのない痛みというか不快感です。

左腕から入れたのが影響したのかもしれませんが、たとえそうであっても、私のほうから「左からして下さい」といったので、文句は言えません。

今さらながらに白状すると、身体的な痛みに対して、私はかなり弱虫なのですよ。造影剤注入よりも、最初の生理食塩水のプッシュで苦しむ始末です。そして、CTスキャンが終わったら終わったで、低血糖になったらしくガタガタ震えだすし(低血糖症状も、私にとってはこの時が初めての経験です)。

葉隠:(検査台の上でガタガタ震えながら)「あの、震えが止まらなくて、コントロールがきかないんですけど…。」

さすがにこの時ばかりは、チャラい系の看護師も「ノープロブレム!」とは言わず、CT撮影室の中にいた別の看護師を呼んできて血圧を測ってくれました。(結局、その後なんとか起き上がって、検査室そとのベッドでしばらく休んだらおさまりましたが。)

帰宅した時、たとえ今回異常がなくても、将来もっと歳を取った時、こんなにヤワくて体の不調や治療に対応していけるのだろうかと情けなくなり、かなり落ち込みました。一連の検査過程のなかで、一番ネガティブ思考になったのはこの時です。

とはいえ、腫瘍マーカーもCT検査も、結果は1週間前後でわかるし、幸いにも大きな問題はなかったので、いつまでも鬱々とせずにすみましたが。

しかしながら、これで終わりではなく、検査結果について医師と面談をした際、「念のため、一般的にリスクが高い臓器をチェックしておきましょう」と、さらなる検査予定が組まれました。
というわけで、次回に続きます。

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