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デンマークでガン検診を受けた: (1)突然のファスト・トラック検査

海外で現地組織にお勤めのかたはご存じでしょうが、海外では、職場での定期健康診断は義務化されていないことが多く、自分の健康は自己管理せよ、というスタンスが多いです。軽い気持ちで海外移住にあこがれている人に対して、これは特に注意を喚起しておきたい点です。

日本ほど職場での健康診断が充実している国は、他にないんじゃないでしょうか。

自分は健康だし体も丈夫だから平気、とタカをくくってはいけません。私もそうでした。ですが、人は老います。若く見えようが、体形を維持していようが、病気やケガは予期せずおこり、自分ではコントロールできないから怖いのです。

なんでこんなことを言うかというと、最近、自分の健康への過信を思い知っ
たからです。ただし、結論から言うと、一連の検査の結果、幸い大きな問題は見つかりませんでしたが。


ことの発端:急激な体重減少

体調の変化に気づいたのは今年の1月末頃です。私は昔から結構ひんぱんに体重を計るんですが、20代の頃から50代後半の今まで体重はほぼ変わらないので、カレンダーの日付を見るのと同じくらい、日常の些細なルーティーンとなっていました。

ですが、冬季の講義期間が始まる直前あたりに、2kgぐらいガクッと減っていました。あれ、減った? 新学期の準備でちょっと忙しかったからかな?くらいに思っていました。論文執筆もたまっていて、寝不足の日が続いていたこともあり、特に気にも留めず。

でも、体重は2月3月と減り続け、48㎏あった体重が4月には43kg台 まで落ちました。3ヶ月たらずの短い期間で5㎏減、普段の体重から約10%減少したことになります。私の身長は157cm なので、BMIでいうと、普通体重に分類される19.5 から低体重の17.5まで減ったことになります。4月頃には生活は通常モードになっていたし、いつも通り食べているし、大幅な体重減少となる要素に心当たりはありません(理由は今もわかりません。)

何これ、怖い。

というわけで、地元のGP(一般医)に診察を受けることにしました。
が、かかりつけのGPは長期疾病休暇を取っており(なにそれ、医者の不養生じゃん)、代理の若い男性医師の診察を受けることに。この代理医師、長髪でジーンズ姿といういでたちで、全く信頼できない。そして案の定、「体重って変動するよー、女の人って気にしすぎなんだよねー」と取り合わず。

あ、こいつダメだわ、と瞬時に思い、別のGPに登録し直しました。デンマークでは、自分の都合でGPを変える際には登録変更料を払わないといけません(日本円に換算すると5千円くらい)。ですが、そんなことを気にしている場合ではありません。役所のオンライン・システムで料金を払い、今度は迷わず女医さんのGPに登録しなおしました。

検査の流れ

4月半ばに診察してもらった女医さんは私と同じ年代のかたで、問診のあと、すぐに触診と内診がなされました。この時つくづく、GPを変えて良かったと思いました。あんな若造の軽そーな男性医師に、触診や内診などされたくありません。

女医さん曰く、「うーん、特に異常は見られないけど、右側にちょっと腫れがあるかなぁ。でも、あなた痩せてるから、筋肉とか、たまっている便とかが触れて感じられるだけかも。念のために血液検査しましょう。」

この診療所は人気があるようで、当日は後に空きがなかったので、二日後に看護婦さんとのアポをとって採血。

その後すぐに連絡があり、翌週、総合病院で、腫瘍マーカーとCT検査を行うから来院せよとのこと。その際、「がんの疑いを除外するためのファスト・トラック(最優先)検査であると理解して下さい」と言われました。

がんの「疑い」を「除外する」ためと言われても、病名のほうに気がとられてやや気が動転しました。こういう時、「海外ぐらし」で「独身」という要素は心理的にマイナスに働きます。自分がどれほど不安定で脆弱な立場であるかを思い知らされます。

一連の検査の詳細は追って書きたいと思いますが、ざっくりまとめると、腫瘍マーカーとCT検査をおこなった次の週に、その総合病院で、検査結果について別の医師と面談がありました。万が一を考えて、さらに検査するとのこと。そこからの1週間は、乳がんのマンモグラフィ、大腸の内視鏡検査、上腹部エコーと続きました。

マンモグラフィ以外はすべて初めての経験で、問題がはっきりわからないまま検査が進むので心配のほうが先に立ち、心理面のほうがきつかった気がします。

デンマークは癌の罹患率が高い

再度いうと、私の場合は(少なくとも今の段階では)異常なしということでした。いろいろ見聞きする限り、癌のファスト・トラック検査に回されることは結構あるようです。というのも、デンマークは、癌の罹患率が高いからです。

これは近年かなり改善されたようですが、ひと昔まえ(10年くらい前)は、デンマークは「世界最悪」の癌罹患率といわれていました。国際がん研究基金の統計によると、2020年時点のデータでも、男女を合わせたがん発生率が最も高かったのはデンマークで、10万人当たり334.9人となっています。 
まぁ、デンマークは喫煙率も高いし、アルコール摂取量も肉食も多いし、不思議ではありませんが。

当然、デンマーク政府もこの問題には対策をとっており、その一端が癌のファスト・トラック検査の頻度とスピードに表れているのだと思います。
ただし、やや流れ作業的になっているのも否めないです。

日本にいる皆さんには関係ないでしょうが、私自身の今後のために、一連の検査で感じたことを、備忘録として何回かに分けて書いていきたいと思います。

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