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セミと私

今まで、セミがというか虫全般の恐怖症で(今も決して得意ではありません汗)。物心ついた時から都内の街中のマンションで育ち、身近な生物といえばスズメ、カラスそしてG...セミはたまにマンションの廊下にひっくり返った亡骸が落ちていて、その肉厚でメタリックなボディに縮こまった脚がむしろ見慣れている? Gよりも恐怖でした。

この春から、訳あって海のない横浜市の庭付き戸建てに住むことになり、生まれて初めて”地に足のついた”暮らしをしています。周囲の家々は今どきコンクリートや砂利で固めた庭が多い中、ここの庭は古風な土の仕立て。それが何を意味するかは梅雨が明けた7月下旬頃に判明しました。そう、庭の地面にボコボコと穴が開き、木と言わず草と言わずコンクリート塀や車のタイヤに至るまで、あらゆるところにセミの脱皮した抜け殻が出没し始めたのです。
そんなある晩、駐車場から玄関までのアプローチで「なんだろう?コレ?」と夫が立ち止まりました。先を歩いていた私もその声に戻ると、そこには地上に出てきたばかりのセミとその抜け殻が!!

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言うまでもなく脱皮したてのセミとその抜け殻なんて見るのは生まれて初めてだったのですが、そのセミはペパーミントグリーンの羽根をしていてとても美しく、そして幼さ故に緑色とのコントラストが際立つちょっと離れ目の顔が、不覚にもかわいいとすら思えてしまいました。何年も地中の暗闇で過ごしてきたセミの眼に、夜明けとともに広がる世界はいったいどんな風に映るんだろう。短い地上での命が、まばゆい夏の太陽に祝福されたものでありますように。思わずそう願わずにはいられない程、この生命の神秘を思わせる脱皮したてのセミは美しかったのです。今もまだ両手を挙げて好きとは思えないし死んでも触れないのには変わりないけれど、これを機に、私とセミとの心理的距離は徐々に縮まっていくことになりました(あくまで心理的にです笑)。その話はまた次回に。

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