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筋トレ後に急な吐き気や腹痛になる現象は何?

筋トレ後に「吐き気」や「お腹の調子が悪くなる」などの症状が出る原因と対策について、最新のスポーツ科学の観点から見直してみましょう。

筋トレ後の体調不良の原因

筋トレ後の体調不良の主な原因は、運動によって筋肉への血液供給が増え、消化管への血液供給が減少することです。これにより、消化管の虚血状態が生じ、消化管の機能不全を引き起こす可能性があります。特に、高強度の運動を開始してから10分以内に腸の血流が50%以上も減少し、重度の虚血状態が生じることが報告されています(van Wijck K, 2011)。

筋トレと消化管の機能不全

筋トレでも消化管症状が生じることが確認されています。リップスコーン大学のHartらの研究(2022年)では、筋トレ経験者の70%が吐き気などの消化管症状を経験しており、その原因として腸の上皮細胞の障害や透過性の増加が挙げられています。

筋トレによる腹腔内圧の上昇

筋トレは他の運動に比べて、特に腸への圧力が生じやすいとされています。これは「腹腔内圧」と呼ばれ、スクワットやデッドリフトなどのリフティング動作では、体幹の安定性が非常に重要となります。しかし、腹腔内圧の上昇は体幹の剛性を高めるだけでなく、消化管(胃や腸など)に圧迫を加えることになります。

対処法

筋トレ中にどのようなトレーニングが腹腔内圧を高めるかを調べたのは、プラハ・カレル大学のBlazekらです。その結果、スクワットが腹腔内圧を最も高めるトレーニングであることが明らかになりました。一方で、ベンチプレスは腹腔内圧が最も低いトレーニングであることが判明しました。

筋トレ後に消化管症状が生じるメカニズムは、腹腔内圧の上昇と低下による虚血と再灌流が繰り返されることに起因します。特にスクワットやデッドリフト、レッグプレスなどのリフティング動作や脚の多関節トレーニングを行うと、腸の機能不全が促進され、吐き気や下痢、食欲低下、気分不良などの消化管症状が生じやすくなります。

対策としては、筋トレ直前の消化しにくい固形物の摂取は控えたほうが良いでしょう。また、筋トレ後の1時間は腸の機能不全が残存するため消化吸収能力が低下することが報告されています(van Wijck K, 2013)。そのため、筋トレ後に消化管症状が生じやすい場合は、筋トレ後から十分な時間をおいて食事を摂取したほうが良いでしょう。ただし、筋トレ直後は筋肥大に効果的なタンパク質摂取のゴールデンタイムでもあるため、消化吸収しやすいプロテインなどの食品からタンパク質を摂取することが望ましいです。また、スクワットやレッグプレスなどの腹腔内圧を高めるトレーニングを連続して行っているのであれば、間に負荷を減らしたセットを取り入れたり、レッグエクステンションなどの単関節トレーニング(アイソレーション)やベンチプレスのような腕のトレーニングを入れることによって消化管を休ませるメニューを組んでみても良いかもしれません。

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