がん患者さんにおけるCOVID-19ワクチン(ファイザー)の有効性と安全性
血液腫瘍を含めたがん患者さんでは、ワクチンの有効性(抗体を獲得する確率)が一般の人々より低いのではないか、という話が今までも何度か出てきましたが、なかなかデータがないのが実情でした。
今回紹介するのは、世界的な医学雑誌Lancetに報告された「がん患者さんに対するCOVID-19ワクチン(ファイザー)の1回投与と2回投与の安全性と有効性:前向き観察研究の中間解析」です。
背景:がん患者さんにおけるCOVID-19ワクチンの有効性と安全性は明らかではありません。そこで、がん患者さんにおけるBNT162b2(ファイザー社製)ワクチンの安全性と免疫原性を評価することを目的として、この試験を計画しました。
方法:この研究では、2020年12月8日から2021年2月18日の間に、ロンドンの3つの病院からがん患者さんと健常者(主に医療従事者)を募集しました。2020年12月8日から12月29日の間にワクチンを接種した人には、21日間隔で2回筋肉内注射し、それ以降にワクチンを接種した人には、1回のみ接種し、12週間後に再度の接種を計画しました。ワクチン接種前、初回接種から3週間後および5週間後に血液を採取し、抗体を測定しました。主要評価項目は、 ワクチン初回接種後のがん患者さんにおける SARS-CoV-2 スパイク(S)タンパク質に対する抗体と,21 日後の2回目の接種がが抗体産生に及ぼす影響でした。
大事なのはスパイクタンパクに対する抗体です。
結果:151名のがん患者さん(固形がん95名、血液がん56名)と54名の健常者が登録されました。この中間データ解析では、2021年3月19日までに得られたサンプルとデータを分析しました。ワクチン1回接種後約21日目の抗体価が陽性であった割合は、健常者95%(32/34名)、固形がん患者さん38%(21/56名)、血液がん患者さん18%(8/44名)でした。健常者16名、固形がん患者さん25名、血液がん患者さん6名には、21日目に2回目の接種を行いました。2回目の接種後では、健常者100%(12/12名)、固形がん患者さん95%(18/19 名)、血液がん患者さん60%(3/5名)が抗体陽性でしたが、2回目を接種しなかった人では、健常者86%(18/21名)、固形がん患者さん30%(10/33 名)、血液がん患者さん11%(4/36名)が抗体陽性でした。
本ワクチンの安全性は高く、重篤な副作用は報告されませんでした。最も多く報告された副作用は、注射部位反応で、ワクチンに関連した死亡例は報告されませんでした。
結論
がん患者さんでは、BNT162b2ワクチン(ファイザー社製ワクチン)の1回のみの投与では有効性が低いと考えられます。固形がん患者さんでは、初回投与後21日目に2回目を接種してから2週間以内に抗体が有意に上昇しました。これらのデータは、がん患者さんワクチンの早期(21日目)の2回目の投与を優先的に行ったほうがよいことを示しています。
つまり、抗体獲得率は下記ように解釈できます。
健常者 固形がん 血液がん
1回接種のみ 95% 38% 18%
2回接種 100% 95% 60%
血液がんでは一般の人々より確かに抗体獲得率は低いですが、それでも2回目接種が1回のみより有効なことは明らかです。安全性に関しても大きな問題がないことはわかっているので、血液がん患者さんも必ず2回うつべきですね。日本は3週間毎の2回接種で進めているところがほとんどだと思いますので、問題ないとは思います。
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