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2023/04/28 人類が最後に食べるドーナツ

少し前に見たミスタードーナツの人気ランキングで、オールドファッションが2位だった。
今から、何らデータに基づかないものすごい偏見と下世話な難癖を述べなければならないことを心苦しく、申し訳なく思うが、これは大嘘だと思っている。

ある日の営業時間終了間際の店舗に行ったら、残っていたのは少しのマフィン、フレンチクルーラー、そして大量のオールドファッションだった。それはもう、孵化余りしたポケモン並に余っていた。
年老いたむく犬みたいな色合い、自販機のコーラ並の値段がして、味はプレーンなドーナツと聞いて最初に想像する呑気な甘さ。その割にカロリーは300キロ弱、三匹寄ればペヤング大盛りに肉薄する。最適化された未来の食事かも知れない。
あんまりにも余り散らかしていたから気の毒に思って、ネタ的な意味でもたくさん買って帰ろうと思ったけど、どう考えてもフレンチクルーラーの方がうまそうで、オールドファッションは一個だけにしておいたけど、実食してみてそれで正解だったと知る。

私はおにぎりの中で丸裸の塩むすびが一番好きなので、オールドファッションを好む向きがあるのはわかるけど、個人的にはドーナツという内臓に糖と油で暴力を振るいアドレナリンを分泌させて喜ぶような食品で、そういう素朴さを求めるのは矛盾を感じてしまう。森を焼いて作った灰の野原に寝そべって星を見るのが好きなんだ、と言うようなものだと思う。そこまで行き着いてしまったということは、ある種の呪縛、倒錯を背負っている。オールドファッションという輪っか、むく犬色の穴の向こう側に「ドーナツを食べる自分」という抽象の夢を見ている。
考えて見れば確かに、明日地球が終わるとして、ドーナツを食べないと出られない部屋に閉じ込められたら、ひとはミスドのオールドファッションを食べると思う。世界の終わりにハニーチュロやドーナツポップでは締まらない。オールドファッションの飾り気の無い味と食感を堪能して、ドーナツ食ったわ……と思いながら、みな揃って果てていく。

オールドファッションは人類が最後に食べるドーナツなのだ。その日を待って今日もだだ余り続ける。

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