統合失調症の私が伝えたい5つの事Vol23

31統合失調症とは?

では、私が診断を受けた「統合失調症」とは、いったいどんな病気なのだろう?

「統合失調症」は、幻覚や妄想と言った症状を特徴とする、精神疾患の一つである。以前は、「精神分裂病」と呼ばれていた。その病名から、「人格が崩れる怖い病気」「一生治らない、病院から出られない、悲惨な病気」など、誤解と偏見に満ちたイメージが抱かれがちだった。そのせいもあってか、受診の機会が遅れたり、治療が思うように進まなかったりして、回復を困難にしているケースも多かった。
 

しかし、近年は病気の研究が進み、早期に適切な治療を施せば、症状の回復も十分可能であることが分かってきた。薬物療法をはじめとする治療法も進歩し、社会復帰を果たす患者は格段に増えているのだ。
 

2002年に、「精神分裂病」は「統合失調症」に病名が変更された。
 

「統合」は、思考や感情、判断や行動などと言った精神活動の要素を一つの目的に沿ってまとめる能力を意味する。「失調症」は、その能力が一時的に変調をきたしている状態を意味する。
つまり「統合失調症」とは、「精神活動が一時的に変調をきたした状態」といえる。統合失調症の場合、脳内の何らかの障害によって、引き起こされる症状が、幻覚であったり、妄想であったりするのだ。
 

つまり、統合失調症は、「脳の病気」であり、体の病気と同様、治療が必要な病気だと理解しておく必要がある。
 では、統合失調症の患者数はどのくらいいるのだろう?
 

2014年の厚生労働省の調査によると、統合失調症、またはそれに近い診断名で医療機関かかっている患者数は、77万3000人と推計されている。これは。アルツハイマー病の患者数よりも多い。
 

世界各国の報告から、統合失調症の発症率は、およそ1%と言われている。統合失調症を発症しても、医療機関を受診していない人や、治療を中止・中断している人もたくさんいると考えられる。つまり、我が国の統合失調の患者数は、100万人を超えると推測される。統合失調症は100人に1人が発症する身近な病気であり、いつだれが発症しても不思議ではない病気なのだ。 
 

32 統合失調症の発症の要因は?

 

では、なぜ、統合失調症を発症するのだろうか?残念ながら、統合失調症を発症する確定的な、そして根本的な原因は、現在のところ分かっていない。ただ、原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って、発症すると考えられている。
 

よく言われる要因の一つが、「遺伝的な要因」である。だが、統合失調症賞を発症する原因となる遺伝子は、まだ見つかっていない。仮にその遺伝子を受け継いでいても、病気を発症するとは限らない。統合失調症の発症には、遺伝以外にも、「脳内物質の変調」や、「ストレス」、「環境的な要因」が、関わっていると考えられる。
 

これまでの研究から、統合失調症の発症には、「脳内物質(神経伝達物質)の変調」が大きく関わっていることが分かってきた。中でも、統合失調と特に関係が深いと言われているのが、ドーパミンである。
 

ドーパミンは、感情、注意、意欲、認知機能、運動調節に関わる物質で、気持ちを興奮させたり、緊張させたりする働きがある。統合失調症では、ドーパミンが過剰に放出されることによって、異常な興奮や緊張が起こり、注意力や集中力が低下してしまうと考えられている。また、気にしなくてもよいことが異常に気になったり、頭の中に色々なことが湧き起こったりするため、幻覚や妄想を誘発するのではないかと考えられている。
 

最近では、ドーパミンだけではなく「セロトニン」や「グルタミン酸」などのさまざまな神経物質の変調が、統合失調症に関係していることもわかってきている。

ストレスが、心身に影響を与えることは、よく知られているが、統合失調症も例外ではない。しかし、大きなストレスを受けたからと言って、誰もが統合失調症を発症するとは限らない。その人の持つ、ストレスへの「脆弱性」が大きくかかわっているからである。

ストレス脆弱性を抱える人は、日々の慢性的なストレスに耐えうる力も弱い。そこへライフイベントのような大きなストレスが加わり、その人のストレス耐性の限界を超えた時、統合失調症を発症すると考えられている。
また、統合失調症は、遺伝やストレスだけでなく、環境も大きく影響していると考えられている。


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