笛の音の邂逅 終章

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 季節が何度巡っても、風花の舞う季節は思い出す。天下を獲った男達の最期を。それを大夫に告げた日を……
 輝信が詠心を手に入れたその年、とうとう直義の子も逝った。後の政権は輝信が継いだ。
「帝、そのお姿ではお寒いでしょう。中に戻ってくださいませ」
「あんたが温めてくれりゃあいい。」
「ご冗談を……この様な場所で何をなさっていたのですか?」
「只の散歩だ。」
「兎に角、お戻りください」
 詠心は輝信の肩に羽織を掛けた。だが輝信は空を見上げたままその場を動かない。
「お風邪を召しますよ」
「これが俺の宿命(さだめ)か」
「は?」
 詠心は怪訝な顔をしたが、すぐにまた穏やかな笑みを浮かべ、暖をとるように促す。輝信は詠心の手を取った。
―俺よりも冷えてるじゃねえか―
 この間だって熱を出したばかりだろう。先程掛けられた羽織で詠心の身体を包み、そして正面から抱き締めた。男にしては細いが、多少力を入れてももう折れそうにはない。手を伸ばしてもすり抜ける事は無く、詠心の身体は輝信の腕の中に収まった。
「あんたは先に逝くなよ」
「はい。最期まで輝信様にお仕え致します」

――終――

『笛の音の邂逅』これにて完結で御座います。最後まで読んでくださり、ありがとう御座いました!  

明日は詠心の視点で輝信様との出逢い〜彼の求婚を受け入れるまでのお話を公開していきます。よろしければそちらもお付き合いくださいませ。

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素敵な原作はこちら

『非天の華』著 : 葛城 惶

          

原作…葛城 惶さま(@1962nekomata)

表紙…松本コウさま(@oyakoukoudesu1)

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