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自己実現したいお嬢様が世間から顰蹙を買い続ける

私は以前、平原依文に関する記事を2つ書いたのだが、

いずれもView数がかなり伸びており、「学歴よりも経験重視」問題への関心の高さが窺える。2つも記事を書いてしまった手前、公開されている動画は見ておいた方がいいかと思い、PIVOTの番組を視聴した(平原の動画だけコメント欄が閉鎖されていた。批判的なコメントが殺到したのだろう)。

16:26あたりから教育論を語っている。
「受験勉強を頑張った人たちでは日本という国を成長させることはできないので、受験勉強をなくしたい」ということだった。
そのとき提示されるのが経済産業省「未来人材ビジョン」の資料である。

https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf

労働市場で要求される能力が大きく変化していくので、それに合わせて教育も変えていかなければならないという提言である。
数年前のAIブームの時によく聞いた話だ。AIは単純作業が得意だがクリエイティブな仕事は苦手である。だからレジ打ちやドライバーなどの仕事は将来AIに奪われてしまうので、AIが苦手なクリエイティブな能力を伸ばし、AIに奪われにくい仕事に就こう。
AIを取り上げたメディアではそんな話をよく耳にしたが、果たして本当に将来そうなるのかは誰にもわからない。あくまでも予測に過ぎないからだ。

だがつい最近、MidjourneyやStable Diffusionといった画像生成AIの登場により、むしろ画家やイラストレーターのようなクリエイティブな仕事こそ奪われるのではないかと言われるようにもなった。

そして、クリエイティブとは対極にある肉体労働こそAIに奪われにくいのではないかという考えもある。
モラベックのパラドックスによれば、「高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要する」ゆえに、頭脳労働よりも肉体労働の方がAIに仕事を奪われにくいとされる。
であれば、クリエイティブな能力よりも肉体労働者としてのスキルを伸ばした方が子どもたちは将来食いっぱぐれないのかもしれない。

また、数学者の新井紀子が『AI vs 教科書が読めない子供たち』において指摘したのは、日本の子どもたちの多くは文の意味を正確に読み取ることができておらず、それゆえに教科書を読むこともできていないという衝撃的な事実だった。
だとすると、クリエイティブな能力よりも、小中高と時間をかけてしっかりと文章読解能力を身につけさせた方がいいのではないか。

経産省「未来人材ビジョン」における2015年と2050年に求められる能力一覧の対比は、そのまま工業化社会/ポスト工業化社会、肉体労働/頭脳労働、機械/人間の対比でもある。
機械から人間へ、単純作業から創造へ。ここに見られるのは、時代が進み、技術革新を経ることで私たちは本来の人間性を回復することができ、より高次の存在に至ることができるという一種の美しい進歩史観ではないだろうか。
AIによりつまらない仕事から解放され、人間はよりクリエイティブな仕事に関わることができるーーそのような未来のビジョンは確かに美しいのだが、美しいビジョンが正しい未来予測であるとは限らない。

機械から人間へ、単純作業から創造へーー平原はお役所が掲げるきれいごとをそのまま反復しているだけである。
平原は番組内で「高度経済成長期ではみんなと同じことができる人間を大量に必要としたが、これからは自分のアタマで考えて問題発見・問題解決できる人間を増やすべき」といった趣旨の発言をしているが、平原こそお役所のスローガンは本当に正しいのかどうか自分のアタマでよく考えてみるべきだろう。

ネット上では平原に対する盛大なバッシングが起こったが、平原個人を叩くだけでは仕方ない面もある。平原のような薄っぺらい発言しかできない若い女を好んで出演させているメディア側の問題が大きいからである。

徳島の高校からスタンフォードに進学した松本杏奈もメディアから大きく持ち上げられていた。今年の4月ごろ、松本の著書のAmazonレビューに長文で批判が書かれたことで話題となったが、そこには大変親しい身内にしかわからないような詳しい情報が曝露されており、批判というよりリークとか告発に近いものだった。松本は「周囲のサポートなしで独力でスタンフォードに合格」と喧伝していたが、実際は非常に恵まれた環境に生まれたお嬢様が高額な塾代や留学費用などを親から出してもらい、湯水の如くカネをかけてもらった結果であることがそのレビューにより世間に知られることとなった。そして「貧困層から貧困を奪うな」とネット上で苛烈な批判が相次ぎ炎上することとなった。

平原と松本に共通しているのは"自己実現したいお嬢様"であることだろう。自己実現したいのは男も同じであるはずなのだが、なぜかメディアに持ち上げられた結果炎上するのは女ばかりである。
つい先日も女子受験生が不利になるよう得点調整していた東京医大に損害賠償を求めた訴訟の判決が下され、その際に弁護団が発した"男性の特権性"ツイートによりネット上では医学部女子受験生差別問題が再び議論の的になった。
これも自己実現したいお嬢様が世間から顰蹙を買った問題の一つである。

お嬢様の自己実現なんて知らんがな」ーーこれはオープンレターで袋叩きにされた呉座勇一の発言であるが、世間の気分を端的に言い表しているように思う。

金持ちの家に生まれただけの自己実現願望が高いお嬢様がメディアに持ち上げられ、恵まれた環境があったからこそ成し遂げられた結果を自分の実力だと勘違いして偉そうに天下国家を語ることに私たちは心底うんざりしている。お嬢様の自己実現になぜ私たちが付き合わされなくてはいけないのだろうか。

いま、世間にはこのようなうんざりした空気が確実にある。これからも自己実現願望が高いお嬢様がメディアに取り上げられ、そのたびに炎上するだろう。メディアもいい加減そういった若い女を持ち上げるのをやめたらどうだろうか。

そして、自己実現願望が高いお嬢様も天下国家を語る前にこの国の現実を見てほしい。この国は加速度的に少子化が進行しているのである。
平原は番組内で「お受験勉強で育まれた人材が日本の成長につながるのか」などと発言しているが、これだけ少子化が進み、それを止める手立てもなく、人口が減少し続けていくことが確定した国で成長もクソもない。本当にこの国を成長させたいのであれば平原や松本のような若い女が早く結婚して子供を産むべきである。

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