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hacomono conferenceーレポート②成功する異業種から学ぶ、顧客を惹き付けるサービスづくり



登壇者
株式会社アルテサロンホールディングス 取締役 大山 高寛氏
株式会社WORKOUT 代表取締役 土屋 耕平氏


美容室「Ash」。皆さんもこれまでに一度は目にしたことがあるでしょう。株式会社アルテサロンホールディングスはその「Ash」を始めとする美容室を全国に300店舗以上展開する美容業界のリーディングカンパニーです。パーソナルトレーニングジム「REAL WORKOUT®」を展開する土屋氏も、自身でビジネスを立ち上げる際に同社のビジネスモデルを参考にしたと言います。そんな同氏が直接大山氏にインタビュー。業界は違えど、成功の鍵が新規顧客の集客と継続であるのは同じ。フィットネスビジネスにも活かせるであろう多くのキーワードを語り合いました。

※ここでは、大山氏含め異業種で活躍する方をお迎えした2つのセミナーレポートを連続でお届けします。

コロナで変わる優先度、ポイントは“信頼”を得るサイトづくり

コロナ禍、美容室業界も休業などにより例外なく大きなダメージを受けました。しかし、アルテサロンホールディングスにおいては、決して悪いことばかりではなかったようです。

「今まで美容室というのは『行きたいサロン』『カットしてもらいたいスタイリスト』が第一優先で、立地はその次だった。しかし、コロナ禍で電車移動を控え『地元でいい美容室はないか』と探す方が増え、『地域で一番愛されるサロン』を掲げてきた取り組みがここで活きた」と大山氏。

確かに、自分の過去を振り返っても、雑誌などで気になった美容室を発見→立地を確認、という順番でした。それがコロナ禍では優先度が逆転。GoogleMapで自宅近くにある美容室を調べてから来店、という流れが主流になったため、大山氏は「企業側はGoogleビジネスプロフィールを整えておくことが大切」とアドバイスを送っていました。

さらに、同社に起きたもう1つの大きな変化が「HPのPV数の増加」。なんと2020年は2019年の倍のPV数を達成し、その数は現在も伸び続けていると言います。「コロナに対してどういう安全対策が取られているのか」を確認する方が増えたこともあり、「10年前は認知→施術→信用だったが、これからは信用→認知→施術だと思う。信用してもらえないと、まず来店してもらえない」と大山氏は分析します。

HPのなかでも特に伸びが顕著なのがスタッフページだそうです。こちらもコロナ禍、「どのようなスタッフが自分の髪を触るのか確認したい」という意識が高まったためだと思われます。

ここで大事になるのがスタッフ自身に清潔感があるかどうか。「そんなことは当たり前」と思うかもしれませんが、今一度、改善ポイントがないか見直してみることをお勧めします。

一般的に総合フィットネスクラブなどのスタッフページではユニフォームを着用し、正面からの笑顔写真など、明るく、ポーズも統一感のあるものが多いですが、小規模なパーソナルトレーニングジムなどでは、各々が手持ちのプロフィール写真を持ち寄ったらしい場合も見受けられます。

もっとも良いのは既述のような統一感を出すことですが、それが難しい場合は、衣服に着古した感じが出ていないか、また、猫背でやや覇気がないポーズなども清潔感がなくなる要因となりますので、注意しましょう。大山氏もあるスタッフの写真が気になりいくつか手を加えたところ、PV数が2倍になるという結果につながったそうです。

“信頼”をあらかじめユーザーから見えるかたちにすること。これが、コロナ禍におけるビジネスの成功ポイントの1つであることは間違いなさそうです。これまでのフィットネスビジネスでは、まず体験で施設やサービスをよく知ってもらい、そこからクチコミや紹介などで集客するという流れが一般的でした。

しかしこれからは、まずは信頼できる施設であるかを打ち出せなければ体験すら獲得できないことになるかもしれません。ぜひ意識して、ユーザーの信頼を得られるHPづくりに取り組んでみてください。


【外食業界 & フィットネス業界にイノベーションを起こすCRISP SALAD WORKS x hacomonoで語る、リアル店舗 x テクノロジー最前線】

登壇者
株式会社CRISP 代表取締役 宮野浩史氏
株式会社hacomono 代表取締役 蓮田健一氏

日本初のカスタムサラダ専門レストランとして2014年に1号店が東京にオープンしたクリスプサラダワークス(以下、クリスプ)。サラダのみの提供という日本では馴染みのないモデルを成功に導き、近年も医療従事者に無償でサラダを提供する「CRISP CONNECT」プロジェクトを実施したり、顧客体験スペースを併設した新店など、次々と新しい取り組みを行っています。以前より同社のミッションなどに共感するhacomonoの蓮田が、その原動力を探りました。


提供場所で大きく変わるモノの価値

最初に蓮田が注目したのは、宮野氏のちょっと変わった生い立ち。「それが現在のビジネスにも影響しているのでは?」と、セミナーは宮野氏の学生時代の話からスタートしました。

同氏は中学までを日本で過ごし、卒業後は知り合いがいたアメリカの高校へと進学します。高校卒業後、お世話になったホストファミリーから誘われるかたちで天津甘栗を販売するビジネスに携わり、そこで得た気づきがクリスプの起業にも影響を与えたと言います。

「日本において、天津甘栗はそこまで売れているイメージがなかったが、アメリカでは『懐かしい!』『子どものころによく食べた』と、飛ぶように売れる。同じものでも場所が違うだけでこんなに価値が変わるんだということを知った。そのときに、例えばアメリカでは当たり前にあるが日本になくて、日本に住んでいる現地の方に『懐かしい』と喜んでもらえるようなサービスを提供したいと思った」

さらに、現在のクリスプのミッション「熱狂的なファンをつくる」が生まれっるきっかけとなったのは、帰国後に経営していたメキシカンレストランにて、アメリカ人の顧客から握手を求められ「お店をつくってくれてありがとう。大好きなこの味が日本にはなくてずっと待っていた。値段が倍だったとしてもまた食べたい」と感謝されたことだったと語ります。

「あんなに喜ばれたら、働くほうのモチベーションだって大きく上がる。ある食べ物を、それをまったく知らない人に『これ、おいしいんですよ』と紹介して『ふーん、そうなんだ』という反応をもらうよりも、もともとその食べ物が好きな人にフォーカスして、もっと好きになってもらえるように取り組んだほうがやりがいも大きいと思った」

そうして、サラダ専門店であるクリスプが誕生しました。オープンすると、そのクールなブランディングやサービスが日本の若者や健康意識の高い人々から注目を集め、ヒット。売上は順調に伸びましたが、当時の宮野氏の心境は次のようなものでした。

「お客様は喜んでくれたが、スタッフはトイレへ行く暇もない状況。常連さんが来てくれたのに声をかける余裕もなく、混んでるからと買うのを諦める方もいるなど、ワクワクする状況ではなかった」

その後も、成長するビジネスと反比例するように店舗の魅力が薄まっていくことに危機感を覚えた宮野氏は、どうしたら変わらず価値を届け続けられるのかと海外で成長している外食企業を調べ、そこには“テクノロジーを上手に使いこなしている”という共通項があることに気づきます。

今では一般的となっているモバイルオーダーもその1つです。お客様の利便性を高めることはもちろん、運営側はユーザーの利用データをチェックできることで、新人スタッフでも「○回も来てくれてありがとうございます!」などの声かけが可能となります。

これは、同社が掲げるミッション「熱狂的なファンをつくる」ことにもつながります。例え短くても「自分だけに向けてくれたメッセージ」に喜ばない方はいないはず。フィットネスクラブでも「会員様をお名前でお呼びする」ことに取り組んでいる施設はありますが、さらに「最近お孫さんが生まれたのですね」「今○○のトレーニングに取り組んでいるようですが、いかがですか?」など、その方独自の情報をもう一言加えられれば、“その施設に通う理由”にもつながることでしょう。アナログではなかなか難しいこの情報共有も、テクノロジーを導入すれば簡単に実現できます。

デジタルの活用で“変えるモノ”と“変えないモノ”を正しく選定

オープン当初から変えていないクリスプのメニューも話題に上りました。顧客のニーズに応えるためや集客を目的にプログラムを定期的に見直すフィットネスクラブと大きく異なる部分です。

1つの定番をカスタマイズしていく方式はアメリカなどでは一般的なスタイルとしつつ、その理由について宮野氏は次のように述べました。

「多くの人を喜ばせるというより、わずかでも熱狂的なファンがいてくれればいい。それにメニューを更新するとなると、レシピを考案して、商品調達、在庫管理、スタッフ教育など、多くの関連コストが発生する。認知を高める面では一定の効果はあるが、一方で既存顧客が新しいメニューに移るだけ、ということもある」

あなたの施設でも、顧客体験への取り組みについて今一度見直してみてはいかがでしょうか。ただ、そこでは肌感覚ではなく、きちんとしたデータを元に議論することをお勧めします。hacomonoしかり、予約段階からテクノロジーを活用すれば、各プログラムの集客数、参加者の年齢や性別などが簡単に把握できる時代。集客数がそれほどではなくとも、ターゲットとしている層がきちんと参加してくれているのであれば、アピールが足りないだけかもしれませんし、実施時間を変えてみるのも1つの策です。

なお、もう1つデータを元にするとよいことがあります。それは、会員様に理由を具体的に説明できるようになること。「なぜあのプログラムをなくしてしまったの」「この時間に変えたら参加できない」などのご意見に対して、事実に基づいた、より納得性をもったご説明ができるようになるはずです。

テクノロジーの活用で得た情報を元にスタッフがアイデアを創出することで、会員様がよりクラブのファンになってくれるよう取り組んでいきましょう。