ガーベラ

初めて自室に飾った花は、ピンクのガーベラだった。

ガーベラって、絵に描いたようないわゆる「お花」って感じでかわいいなあと思っていた。

たぶん中学生のころ。
プラスチック製の透明の花びん(薄ピンク色で、コップみたいにまっすぐで、表面にぼこぼこした加工が施してあった)に、一輪入れた。

その様子は、脳内に3D映像みたいに思い浮かべることができる。

当時マンションの5階に住んでいて、私の部屋は北側の4.5畳。

学習机と、ベッドと、タンスと、本棚と黒いカラーボックスがパズルみたいに配置されていて、床が出ている部分はわずかだった。

引き出しが付いた棚もあって、上にテレビデオやMDコンポを置いていた。

花びんを倒す危険のない場所は、部屋に入ってすぐのところにあるカラーボックスの上くらいしかなかったので、そこに飾った。

花も花びんも、自分で買ったような気もするけれど。
初めて花屋さんで花を選んだり買ったりするのって、心に残りそうなシーンなのに思い出せない。

ということは、誰かにもらったのかもしれない。お誕生日にプレゼントを渡し合ったりする文化があったから。

しかし申し訳ないことに、誰に何をもらったのかはほとんど覚えていない。
うれしかったら覚えていそうなものなのにな。

記憶って断片的で不思議だ。

入手先不明の安物の花びんと一輪のガーベラは、前後の記憶とは切り離されて、私の脳内にぽつんと置かれている。

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