親知らず抜歯記録①
遂に腹を括って親知らずの抜歯をすることにした。
私は四本とも既に生えていたが、内一本だけが七番を押すような形で曲がって生えているという、なんとも心中複雑な状態だった。
噛み合わせ上の観点から、一本だけ抜くという選択肢はない。
この一本のために四本すべてを抜くか抜かないか。
決断はそこにあった。
今まで、虫歯にしないように、懸命に歯磨きをしてきた。
鏡を使い、歯ブラシ二種類を使い分け、フロスまで入念に行ってきた。
おかげで、虫歯は一本もなかったし、歯を削ったこともなかった。
でも、親知らずだけはどうにもならなかった。
磨いても磨いても、着色は進行していった。
歯医者に行くときは、常に戦々恐々としていた。
もう潮時かもしれないと思った。
かかりつけ医では処置が難しかったため、近場の口腔外科を持つ総合病院へ紹介状を書いてもらっての抜歯だった。
担当の先生は、サバサバした感じの女医さんだった。
歯医者も、痛いのも、注射も、ドリル音も苦手な私。
その上超ビビり。
処置室から聞こえてくるドリル音だけで気が遠くなりそうだったが、何とか無事、問題の一本目を抜くことができた。
麻酔の注射針はほとんど痛くなかった(ぶっちゃけ採血とかの方が痛い)ので、滑り出しは好調だったが、根が曲がってなかなか抜けなかったらしく、処置は思ったより長引いた。
私はというと、先生があの手この手で抜こうとしている間、ものすごいドリル音(実際に何をされているかは「目をつぶっていてください」と言われていたのでわからない)から気を紛らわすため、コナンの映画に出てくる山村警部の面白いシーンを永遠ループ再生していた(笑)
(多分わかる人にはわかるが、『漆黒の追跡者』で彼が警部に昇進したと自慢気に警察手帳を見せる、あのシーン。
山村警部ありがとう。おかげで気がまぎれたよ。)
「もう抜けたから後は縫合するだけだよー」と先生に言われ、ようやくホッと一息。
抜くのは大変だったし怖かったけど、抜けて初めて間近で見た八番の黒ずみように、やっぱり抜いてよかったな、と思った。
八番、今まで本当にありがとう。
貴方は永久欠番。そこに無くても、これからも一緒だよ。
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