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歌詞の意味を直接理解するともっと感動できるー英語歌詞の理解のすすめ

自分の子供によくする自慢なんですが、TOEICの最高スコアが985点です。最後に受けたのは13年くらい前でそのときのスコアなので、今どうなっているのかはわからないんですが。
社会人になってからの海外留学経験があるものの、中高と普通の公立学校の英語教育を受けて育ちました。大学の外国語もフランス語選択だったので、特別な英語教育は受けていないんですが、中学校に入って英和辞典を手に入れてからすぐに、英語の文章の意味を読み解く作業が大好きになり、学校の授業はつまらないの極地だったので、教室にいる時間はいつも英語の教科書を端から端まで翻訳する作業に使っていました。
そうすると、教科書って2ヶ月くらいで翻訳が終わっちゃうんですよね。なので、その次は学校で配ってくれる副読本みたいなものとか、たまに手に入る英語の新聞とかそういうのを使うのです。まだインターネットがない旧石器時代の頃ですからね。

で、大好きだったのは、海外ミュージシャンの曲の歌詞を翻訳する作業です。中学校の頃好きだったのは、エアロスミスとかガンズ・アンド・ローゼスとか、当時はそういうロックバンドが人気あったんですよ。鬼奴さんとかすごいシンパシー感じます。もちろんボンジョビも。

で、うちはCDプレイヤーもないような極貧家庭だったのでですね、友達にCDをカセットテープに録音してもらうのです。さらにライナーノーツっていうんですかね、歌詞が書いてあるぺらんとしたやつ、あれを本屋さんでコピーさせてもらって、それを後生大事に使うんですけど、根は真面目な田舎もんの女子なので、ロックにインスパイアされて何をやるかというとスタディなんですよw
まず、大学ノートを用意して、一行おきに、すべての歌詞を書き写します。
次に、わからない単語をすべて英和辞典で調べます。
最後に、文法などもひとつひとつ調べながら、ひねり出した翻訳を空いた行に書いていきます。

わからない単語っていってもですね、ガンズ・アンド・ローゼスとかレッチリとかなんでですね、fxxkとかaxx  xxxxとか、そういうのも含めた歌詞を座卓に向かって、辞書と首っ引きで一生懸命調べて、なるほど、「おねぇちゃんをはべらせて」か!みたいなwww そんな歌詞ばっかりじゃなかったですけどね。「おまえのスーツケースがさよならと言った」とかね。ボンジョビですけどw ださっ、みたいなw 今思えば、りんごみたいなほっぺした少女が夢いっぱいに変な歌詞をクソ真面目に翻訳しては感動している、ほんとに微笑ましい日々でした。

でもこの勉強法、モチベーションの維持も著しく高く、辞書というヒント集をもとにパズルを問いていく知的な楽しみもあり、ほんとに毎日夢中でやったなぁ。大人になってからも、仕事から逃避したいときなんかは、歌詞を見ておもしろそうだなと思ったら、じっくり歌詞とにらめっこして、そのアーティストの背景なんかもしらべて、なるほどこういうことが言いたいんだね、と感動したり、あと、自分が歌詞を覚えているような昔の歌も、大人になってあらためて噛みしめるとちょっと違った側面が見えてきたりして、カーペンターズとかシンディー・ローパーとか、今でもとても楽しい作業です。

DeepLさんのおかげで訳文は簡単に表示されるようになりましたが、この文章だけではなく作者の思いも含めたパズルを解く喜びはみんなに理解してもらいたいなぁと思います。今はいくらでも原文が手に入るし、情報もすぐに調べられるし、本当にいい時代ですね。

大人になってからはこの作業は、「翻訳を書く」ではなくて、いろいろ調べて理解するっていうところまでなんですが、そのプロセスがおもしろいので、理解するプロセスをそのまま見せることができたら楽しいかなと思い、今日は、ひとつみなさんと一緒に一曲紐解いていきたいなと思います。

私は医療分野の翻訳の仕事に携わっていたのですが、文芸やカルチャーの方はまったく経験がないですし、英会話もインターナショナルスクール育ちの人たちみたいにぺらぺらではないし、背景になる文化の知識も中途半端だし、TOEICスコアのわりに語彙が少なくイディオムもあんまり知らないので、まちがったことを言うかもしれませんが、気づいたらコメントでおしえてくれたら修正しますので、一緒に考えられたら嬉しいです。それから、あくまでも私の解釈なので、みなさんも自分で考えてもらえると楽しいと思います。

題材は、最近私が好んで聞いているTaylor Swiftさんの歌詞にします。かわいいポップシンガーの印象が強い彼女ですが、おさない頃から自分で作詞作曲をしているミュージシャンで、自分のプライベートな思いを歌詞にすることでよく知られています。ストレートな気持ちを表現するのがとても上手なミュージシャンだと思います。

曲は「The Man」でいきましょう。
こちらの動画でも彼女自身が紹介していますが、常に感じてきた社会のダブルスタンダードについて、どうやったら端的に且つポップに伝えられるかに腐心して生み出された一曲だそうです。自分がこれまでやってきたことが、自分が男だったら世間にどう受け取られるのかな、という視点で作ったと言っていますね。女性が感じているモヤモヤがスカッと表現されていてあっぱれだなぁと思います。

タイトルはThe Man。定冠詞theの意味についてわかったようなわかってないような、という方も多いかなと思います。自分で作文するときに日本人だとついついつけ忘れたりまちがえたりしがちですよね。ストレートに訳して考えるとわかりやすいような気が私はしています。
ここでのThe Man、は、The Hotelみたいな感じで、最高級の、とか、唯一無二の、みたいな意味じゃないかなと思います。

で、この曲は基本的に、If I was a man, I would be ~で構成されています。おなじみの仮定法過去ですね。If I was a bird, I could flyのあれです。実際は違うけどそうだったら、っていうやつで、後ろの文節が助動詞の過去形になるやつです。

歌詞を見ていきましょう。
I would be complex. I would be cool.
いきなり見てもわからないけど、If I was a manなら、っていうことですので、「複雑な男になる(に違いない)、かっこよくなる(に違いない)」って感じ。

They'd say I play the field before I found someone to commit to.
ちょっと難しくなりましたね。play the field。イディオムっぽいですね。調べます。もともとは競馬用語で、人気馬以外にも全部の馬に賭けるってことから派生して手当り次第に女遊びをするってことみたいですね。before以降はコミットできる誰かを見つけるまでは、という意味(ビジネスでよく使われるcommitは恋愛で本気になるとか一人に絞る、結婚しておちつくというような意味でも使われます)。Theyは一般的な「周りの人、みんな」って感じですから、「人は私が本気の相手を見つける前は手当たり次第に遊んでいたって言う(に違いない)」という感じ。訳すと逆さになっちゃうけど、感覚的には「前は遊んでたけど、最終的には本気の相手を見つけた」みたいな印象だと思います。まだ仮定法過去が続いていますよ。

And that would be OK for me to do. Every conquest I had made would make me more of a boss to you.
前の歌詞の女遊びってところを受けて、「でもそうしたって許される(だろう)」。conquestは征服ですよね。成功者が若く美しい女性の妻を迎えるとtrophy wifeなんていわれたりしますが、「ゲットしたもの(女性)が多いほうが、ボスっぽいでしょ(ボスとしてはより良いでしょ)」って言う感じでしょうか。ここのyouもみんなっていう感じです。

I'd be a fearless leader. I'd be an alpha type.
「怖いもの知らずのリーダーになる(に違いない)。アルファタイプになる(に違いない)」。アルファタイプってなんでしょうね。なんか理想的なリーダー像として話題になった概念って感じしますね。ちょっとググってみましたが、男性の性格の分類(科学的なものかどうかは確認できてません)にあるもので、アルファタイプの男性、リーダー、というと、意思が強く、自信が強く、支配的で、いわゆる「男性的」なリーダーということになるみたいです。Taylorを見ているとそんな感じはしないですけどねw

When everyone belieaves ya. What's that like?
「みんなが信奉してくれる。それってどんな気分?」
yaはyouで、直訳するとみんながあなたを信奉する、となりますが、あなたは特定の誰かじゃなく自分も入りうるという使い方です。なんかちゃんとした文法的な呼び方あるんでしょうか。

いよいよサビです。ここからは直接的なメッセージになりますね。
I'm so sick of running as fast as I can.
sick of ~はうんざりする、なので、「全力疾走しつづけるのにはうんざり(つかれた)」
Wondering if I get there quicker if I was a man.
「もし私が男だったらもっと早く(ゴールに)たどりつけるのかな(といぶかる)」
I'm so sick of them coming at me again.
come at 人で誰々を攻撃する、とか、報道なんかで叩くこともcome atといえるので、「彼ら(世間・報道)がまた私を叩くのにもうんざり」という感じ。
余談ですが、Taylorは有名な芸能人と過去に何人か付き合っていて(現在は4年以上つきあっているイギリス人の俳優さんととてもうまくいっているようです)、自信の失恋を曲にすることが多いのと、やはりポップスターなので、どうしても注目を集めてしまうみたいですね。彼女自信はこちらのドキュメンタリーでも話していましたが「good girl」(おりこうさん、ちゃんとした子)でありたいという意識が強いようで、真剣な交際をしているつもりなのに、遊び歩いていると書かれることにうんざりしているそうです。

’Cause if I was a man, I'd be the man.
「だって、私が男だったら、the manになるんだから」

2番目以降も、男ならお金を見せびらかしてビッチやモデルをゲットして、悪くても頭がおかしくてもOK、なのに、自分がお金も見せびらかしたら成功者じゃなくてビッチと言われるんだから、私が怒るのは当然でしょ?って感じの納得な歌詞がつづくのですが、だいぶ長くなってしまったのでこの辺で。

グラミー賞の授賞式の壇上でカニエウエストにビヨンセのビデオのほうが良かったと言われるというひどい仕打ちを受けたこともありましたが、今や押しも押されぬベストセラーのTaylorがこう言ってくれるとなんかスカッとしますね。


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