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「君たちはどう生きるか」2回目鑑賞。雑感(ネタバレあり)

アカデミー長編アニメ賞受賞おめでとうございます!
ってなわけで、まだ観ていなかった妹を連れて2回目の鑑賞を楽しんできました。

物語は、太平洋戦争末期、母を火事(空襲)で亡くした少年が、疎開先の母の実家で経験する不思議な経験と成長のストーリー。
映像、音楽、効果音、全てが美しい物語。

で、ここからはかなりネタバレに踏み込んだ雑感。

母ヒサコが亡くなって、一年後に父勝一と疎開する眞人少年。疎開先では、母の妹である夏子が新しい母として2人を出迎えるわけなんだが、すでに妊娠中。
一周忌を迎える前に、母の妹を妻に迎える金満家の勝一が清々しいほど俗物で、デリカシーがない! 戦時中や昭和初期には、こういった再婚話がけっこうあったそうだが、にしたって! もう!
転校先の小学校にダットサンで乗りつけるわ、息子が喧嘩で怪我したと思い込んだらクレームがてら300園寄付してくるわ、海軍の失敗を自分んとこの会社が儲かるからって喜ぶわ、ある意味表裏のないお人。
眞人少年は表面上、かなり物分かりのいい礼儀正しい子だけど、中身は大人のあれこれに納得できない普通の子供。同級生との喧嘩の後、学校に行きたくなかったのか、石で自分の頭を傷つけちゃう。すんごい血が出てたが、頭の傷って血が出やすいんのよ。妹との喧嘩で経験済み…。
夏子さんだって、優しい笑顔の下に、姉の息子とお腹の子の間で複雑な胸中を隠している。
そういう意味では似ている2人。

前半は、お母さんの実家のお屋敷が舞台なんだけど、このお屋敷が本当にでかい。
ここには住み込みの奉公人と思われる老婆7人と数名の老爺がいる。ちょっと謎めいた雰囲気。
和風のお屋敷だけど、家具調度品は洋物。戦時中は、一般的に西洋のものが禁制品だったことを考えると、それが許されてる時点で、相当な力を持ってるんだろうなと。しかし、その洋風家具も、和風家具も、色や柄が見事に昭和初期〜中期の雰囲気。執念すら感じるほどの描き込み! これだけでも一見の価値あり。

そんな中、眞人が机から落とす本の装丁見て、「うわ、なつかし!」と思ってしまった人、自分以外にもいるんじゃないかな?
「君たちはどう生きるか」の初版本は持ってなかったが、それ以外の本、おそらく、世界童話全集とかだと思うんだよなぁ。従姉妹からお下がりでもらった世界名作童話全集。時代がだいぶ後なので改訂版だとは思うけど、子供向けとは思えないほど分厚くて重かった。当時は夢中で何度も読んで、読みすぎて、本の背表紙が外れてバラバラになったりした。図書館で一生過ごしたいと思ってた子供時代が蘇る。

ストーリーにも、全体的に童話や神話の世界観が和洋折衷で盛り込まれ、大変好みでございました。

こっからは本当に雑感を箇条書き
⚫︎夏子さんが鏑矢でアオサギを追い払うシーン。日本では古来から破邪に使われたり、神事に使われるもの。そこから母の実家は名家であるだけでなく、巫覡の系譜なのかなと推測。
⚫︎7人の老婆と、ヒミが運ばれるガラスの棺型神輿は、「白雪姫」?
⚫︎眞人が塔の下の世界に落ちていくシーンと、ヒミのドレス「不思議の国のアリス」?
⚫︎島にある墓の扉が「黄泉」への入り口だとすると、あの世界は生の世界と死の世界のはざまにあるんだろうなと思う。
⚫︎閉じられた世界に増えすぎたセキセインコ。スタジオジブリのある小金井市や井の頭公園のある三鷹あたりは、ワカケホンセイインコが野生化してよく群れなして飛んでるんだよね。
⚫︎ペリカンはなんでペリカンだったのだろう? 動物園とかでペリカン飼育してると、よくアオサギが勝手にくるらしいからそこらへんのイメージかな
⚫︎飛んでくワラワラは螺旋状のDNAのようでもあったけど、カエルの卵っぽくもあった。ちなみに吉祥寺はヒキガエルがむっちゃいる。住宅街でも普通に遭遇する。群馬の田舎では雨蛙の方をよく見たので、吉祥寺住んでた時は驚いた。
⚫︎ジブリ飯は基本美味しそうなんだけど、ヒミがくれたジャムパンはちょっとホラーっぽい。
⚫︎夏子さんがいた巌窟の産屋。禁域とされ、頭上には紙垂(しで)のついた二重の輪。紙垂が示すのは「神聖」や「清浄な」場所の境界。でも、かつて出産はけがれとされて妊婦は隔離されてたこともある。となると、守られていたのは内なのか外なのか…。
⚫︎大伯父さま、若い時は彫りの深いイケメンで、時の狭間ではアインシュタインのような風貌に…。崩壊のシーンでラスト手だけが見えるが、時の流れに晒され、細く干からびていくのが悲しかった。
⚫︎ヒミ、かわいかっこいい。正統派宮崎ヒロイン。炎はヒミの味方だから、きっと火事で炎に包まれたヒミ(ヒサコ)は別の世界で生きていると信じてる!
⚫︎隠しエンディングなどはないが、米津さんの「地球儀」まで聴いて余韻にひたって完結。なので、最後まで席を立ってはいけない。
⚫︎米津さんのお友達の菅田さんがアオサギなのも感慨深い

余談。ギレルモ・デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」も似たテーマなので興味ある方は是非。でも、少年「眞人」と少女「オフィリア」の進む道は似て非なるもの


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