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あおよ やすらかに

今から76年前、そしてそれ以前の日本では、毎日のように空襲警報のサイレンが鳴り、次々に爆弾が落とされていました。

昭和20年3月10日の東京大空襲は、たった一夜にして約10万人の人命が奪われました。その他に、当時市民の生活、市街地の物流を支えていた「ばん馬」が、この空襲で約1000頭以上が亡くなったといわれています。

私は、小さいころに見せてもらった紙芝居「あおよ かえってこい」を思い出しました。

主人公である「ぼく」の友達である、運送屋の子供けんちゃんの家にいた「あお」という馬が、ふとしたことがきっかけで「ぼく」と仲良しになります。ところが、けんちゃんは疎開することになり、「あお と仲良くしてやってね」と言い残して、けんちゃんは東京を離れてしまいます。そして、あの大空襲の夜がやってきます・・・・・・

ちなみに、「あお」はばん馬といっても実は仔馬で、あおの父馬、そして母馬は戦争に徴られ、大陸に送り込まれたということです。

戦中当時は、現在のようにトラックが少なく、いわゆる荷役の中心は「馬」が担っており、今も残る大手の運送会社も、戦前、戦中は馬を使って仕事をしていたのでした。

毎年3月10日には、東京各地で慰霊祭が執り行われますが、コロナ禍により、昨年、今年と規模を縮小して執り行われました。ですが、人とともに生活してきた馬への思い、無念は、何年経っても消えることはありません。

あの日、あの夜、いったい何頭の「あお」が、焼夷弾によって焼け、川に落ち、命を落としていったことでしょう。人を信じ、人に寄り添い、人のために働いてきた馬たちのことを思うと、胸が張り裂けそうになることがあります。

「あお」は、もう帰ってきません。私たちは、あの日旅立った千何百頭の「あお」に手を合わせることしかできませんが、今いる馬たちの未来を、そして平和を守れるのは私たち人間です。私は、これから出会う馬たちにやさしく声をかけ、接していければと思います。

これからも、馬と人との暮らしが、平和で、幸せなものでありますように。

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