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【コトダマ006】「脱獄の成功要因は四つ・・・」

脱獄の成功要因は四つ。タイミング、計画、運、信念。

トレント・ダルトン『少年は世界をのみこむ』(池田真紀子訳)p.201

麻薬中毒の母に育てられ、父親代わりの男は麻薬の売人。兄オーガストはある時からいっさい言葉を発しなくなり、時々宙に指を動かして文字を綴るだけ。唯一の友人であり人生の先輩は、スリムという元脱獄囚の老人。そんなとんでもない環境で育ち、ジャーナリストを目指して成長する少年イーライが主人公の小説から、上の一節をご紹介します。

とはいえ、まずはこの小説がとてもいいので、強くおススメしたいと思います。きれいごとなど一切ないリアルの底辺社会でのたうち回りつつ、自分の手で何かを掴んでいくイーライの姿には誰もが胸が熱くなるでしょうし、府福祉に携わる人なら多くの発見があると思います。ちなみにネットフリックスでドラマ化もされているようですが、こちらは未見。

さて、上のフレーズはイーライの人生の師である老人スリムが語ったものですが、この「タイミング、計画、運、信念」の4つの要素がとても良いと思えたので、コチラに紹介させていただくことにしました(「脱獄」だけに使うんじゃもったいない!)。ただソーシャルワークに活かすなら、順番は「信念、計画、タイミング、運」のほうが良いとは思いますが。

まずは「信念」。これは「倫理」と置き換えても良いかもしれません。ソーシャルワーカーとしての考え方やスタンスがブレていると、そのあとの支援すべてがブレてきますからね。

そして「計画」。情報を整理し、アセスメントして、起きうる事態を想定したプランニングです。まあ、これは言うまでもないでしょう。

次は「タイミング」。これは計画に含めておくべき要素でもありますが、どの段階、どういう状況になったら誰が何をするかを決めておくこと、にもかかわらず予想外の事態が起きても、それをひとつのタイミングと捉えて躊躇せず介入すること。ソーシャルワーカーの力量が一番出るのがこの「タイミング」の捉え方、使い方です。同じ支援、同じアプローチでも、タイミングを間違えるとすべて台無しになってしまいますよね。

そして最後に「」。「人事を尽くして天命を待つ」というコトワザがありますが、私はこれこそがソーシャルワークの神髄なのではないかと勝手に思っています。どんなに熟練のワーカーが絶妙のタイミングで介入しても、ダメな時はダメ。逆に、客観的に見ればヘタクソなアプローチでも、あるいは何もしなくても、なぜかうまくいってしまうことはあるものです。このあたりがソーシャルワークの難しさであり、面白さではないかと思います。

ということで、「信念・計画・タイミング・運」の4つ。ソーシャルワーク実践の際に、どこか頭の片隅に置いてみていただくと良いのではないでしょうか。あ、もちろん「脱獄」の時も、この4つをお忘れなく!

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