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「このジョジョはッ!なにからなにまでッ!奇妙な友情まみれだぜーッ!」ジョジョ二部感想覚書

ジョジョ二部をアニメで観ました。

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出典:TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』公式HP
(https://jojo-animation.com/fb_bt/)

友情・努力・勝利。

週刊少年ジャンプの作風を象徴する三本柱として語られる、この格言をご存知でしょうか。
近年ではこの3つのワードだけではくくれない名作が数多く輩出されており、半ば過去の遺物となりつつあります。

しかし、過去の作品なら話は別。1987年に開始し、2013年にアニメ化した『ジョジョの奇妙な冒険 第二部 戦闘潮流』はその典型です。
かくいう私も、ジャンプ伝統のスリーワードをこれでもかと楽しませていただきました。


まずは頑張り嫌いの主人公ジョセフ・ジョースターが波紋の修行に打ちこむ努力!


次に知恵と勇気を駆使して圧倒的スペックを誇る柱の男を撃破する勝利!


そして最後に友情!


石仮面をめぐる戦いの中心にあり続けるジョースター家の影として「未来を託して散る」運命をまっとうしたシーザー・A・ツェペリとジョセフ・ジョースターの友情ッ!


1万数千年の時を「ひとりの戦士と出会う」ためだけにあったと遺した柱の男ワムウと誇り高き戦士に敬礼を贈るジョセフ・ジョースターの友情ッ!


自分で同属を皆殺しにしておきながらも生き残ったエシディシとワムウの前では本性を隠し、善き長としてあろうとした本性ウィンウィンカーズの友情ッ!




ジョジョの奇妙な友情に改題しろ。

※「最後に~四部から見てよかったわ」には、ジョジョ第四部のネタバレがあります。これから第四部を楽しみたい方はご注意ください。


二部の奇妙な友情①シーザーとかいうOP詐欺男

最初はいけすかないキザ野郎として登場し、やがてジョセフと唯一無二の友情を結んだシーザー・A・ツェペリ。ジョジョ二部を語るうえで、どうしても外せないキャラだと思います。

シーザー最大の見せ場といえば、やはりワムウ戦でしょう。それまで戦闘で目立った活躍のなかったシーザーが本領を発揮、柱の男随一の戦士ワムウを1対1で追いつめます。

しかし、最後の最後でワムウが上回り、敗れるシーザー。
自身の死期を悟ったシーザーは一矢報いる反撃……ではなく、ジョセフの命を救う解毒剤を奪取。未来に意志を託して散るツェペリ魂とともに、壮絶な最期を遂げました。

シーザーの死は私の胸に強く打ち、その日の視聴をとりやめ、ひたすらOP「BLOODY STREAM」ガン流しによる対症療法に走る始末。とてもショックでした。

なぜなら私は、恥ずかしながら、シーザーが死亡するとはまったく、一切、予想していなかったのです。

だってOP映像でジョセフとシーザーおもっくそ共闘してるじゃん!

でけぇ岩に突っ立ってる柱の男たちと肩を並べて挑むジョセフとシーザーがクソかっけえ1分半はなんだったの!?
結局ジョセフとシーザーのタッグバトルは寄生脳みそエシディシ駆除だけだったんだが!?

そう、すべては「闇を欺いて~」のくだりがあまりにもカッコイイOPのせいです。
私はすっかり「なるほど第一部はジョナサンがひとりで戦ってばかりだったから、第二部はジョセフとシーザーのバディものか」などとのんきに構えてしまいました。
おのれOP詐欺。絶対に許さんぞ神風動画。最高の映像をありがとうございます。


しかし、第二部OPこと「BLOODY STREAM」、なにも視聴者を騙してばかりではありません。
とくに印象的なのが、ジョセフがシーザーのバンダナを巻くカットで流れる「血脈に刻まれた因縁に 浮き上がる消えない誇りの絆」です。

それまでは世界で一番カッコイイ「闇を欺いて 刹那をかわして 刃すり抜け 奴らの隙をつけ」からもわかるように、ジョセフを象徴する歌だったのが、ここで突然シーザーに切り替わります。

「血脈に刻まれた因縁」は「だれかに未来を託して散るツェペリの運命」でしょうし、「浮き上がる消えない誇りの絆」は血のシャボン玉に違いありません。

思うに「BLOODY STREAM」とは、ジョセフとシーザーふたりを歌う曲なのではないでしょうか。シーザーはジョセフとともに歌われるべき、もうひとりの主人公なのだと私は感じます。

「未来に意志を託す」という、勇気とは違う、もうひとつの人間賛歌を体現する運命のツェペリ。
彼らの血筋もまた、ジョースター家と並び立つ『ジョジョの奇妙な冒険』影の主人公なのです。


奇妙な運命によって出会い、本人同士の意思で絆を結んだふたりの主人公。私は本当にすばらしい友情を見せていただきました。

尊敬する祖父や父親のように、ツェペリをまっとうして散ったシーザー。彼が天国で明るい家庭を築く夢を見ていることを祈ります。

でも私はやっぱり仗助の話を楽しそうに聞くヨボヨボのシーザーおじいちゃんが見たかったんだよォ~~~~~~~ッ!!!!!


※筆者はジョジョ四部を視聴済みです


二部の奇妙な友情②:その日、運命に出会うワムウ

それがワムウに対する第一印象でした。

ジョジョ二部最大の敵として立ちはだかる柱の男たちのなかで、もっとも高潔な武人として描かれるワムウ。

第一部でジョナサンとディオの、敵同士でなければ育めない友情を見せつけられた私は「こいつヤベェな」と思いながらも視聴を進め、やっぱりヤバかったです。

ワムウについて強く印象に残っているのは、ジョセフとワムウの戦車戦に決着がついた後のふたりのやりとりでしょうか。

お互いを倒そうと全力を尽くしたジョセフとワムウ。戦いを終えたふたりの間にあったのは憎悪でも怒りでもなく、相手に対する深い敬意でした。

胸に生じた敬意に従い、ワムウの痛みを和らげる血を与えるジョセフ。
「強者こそが真理」自分の中の掟のため、ジョセフを守るワムウ。

相手を徹底的に破壊する。そんな暴力的なまでに清々しい関係を貫いた間柄だからこその友情が、両者の間にはありました。

そしてワムウはこう言い残し、消えていきます。

「俺は、おまえに出会うために1万数千年もさまよってたのかもしれん」
「さら、ば、だ……ジョジョ……」

第一印象では「人間に生まれていればいい友達になれたかも」と思ったワムウですが、今はあまりそう思いません。このふたりはこれでいい。

戦士として出会い、戦士として殺しあい、どちらかが生きて、どちらかが死ぬ。

そんな殺伐とした友情を結んだジョセフとワムウだからこそ、いいのです。

1万数千年を生きる不老不死の怪物が、ほんの数分の戦いに命を燃やしつくし、運命の出会いを自覚して死んでいく。
無限を生きられる人外が刹那に価値を見いだす展開は全国民が大好き。みんな知っているね?


第一部のジョナサンとディオとはまた違う、敵同士だからこそ成立する友情をジョセフとワムウは見せてくれました。敵同士の友情レパートリーが多すぎませんかこの作品。

二部の奇妙な友情③カーズイズノット戦士


ことはワムウ死亡後、リサリサ先生VSカーズの決闘で起こりました。


「勝てばよかろうなのだァァァァァッ!」


それまでは通りすがりの犬を助けたり、ワムウに理想の上司としてふるまったりと、なにかと人格者としてふるまっていたカーズの突然の豹変。

影武者を立てての不意打ち。吸血鬼による横紙破りの一斉攻撃。
飛びだすネットミーム「勝てばよかろうなのだァァァァァッ!」。
そして謎のウィンウィンウィン。

視聴時はゲロ以下のにおいがプンプンしてたまりませんでしたが、こうして感想をまとめている内に、カーズの豹変はそこまでおかしな話でもないかもしれないとも思うようになりました。

第二部は副題に「戦闘潮流」とあるように、戦闘がテーマの作品です。そのためか、誇り高く戦う者として「戦士」のワードがよく出てきます。
ジョセフやシーザーは波紋戦士と呼ばれますし、ワムウも戦士としての矜持を持っていますよね。

しかし、カーズはそもそも戦士ではありません。本人も「ワムウのような戦士になるつもりはない」と語っています。

「究極の生命になりたい」目的と「長い時をかけて方法を探る」手段は、むしろ探究者とか、研究者とかの表現が似合うのではないでしょうか。

だからだまし討ちも喜んでやるし、約束だって平気で破る。なぜなら戦士としての誇りがないから。そう考えれば、あの豹変もしっくりきます。


ではなぜ、リサリサ先生との決闘までは、本性を隠して人格者のように行動していたのか?
これは私の勝手な想像になりますが、カーズはワムウやエシディシにカッコイイとこ見せたかったんじゃないでしょうか。

ワムウは純然たる戦士ですし、エシディシも言動こそ奇抜ですが仲間への情はジョセフが認めるほどのものがあります。
そんなふたりの前で、カーズはカーズなりにかっこつけたかった。
自分にない高潔さを持つ同属たちに尊敬の念があり、彼らの気持ちを優先したかったのだと私は思います。


カーズはかつて、目的のために自分の同属を皆殺しにしました。ワムウやエシディシ、サンタナだけを残してほかの仲間を虐殺した男が、生き残った同属には猫を被っていたのです。
そんな歪でとても強い同属意識もまた、ジョジョ二部における奇妙な友情のひとつの形なのかもしれません。


カーズの同属に対する想いは、彼が究極生命体になっても残りました。「ワムウやエシディシの復讐」と称して、ジョセフの抹殺をもくろみます。
その直前に「波紋戦士などどうでもいい」と言っておきながら、ジョジョの死こそが究極生命体の誕生を祝う儀式だ、とすら言いきるのです。

地球で最高の超生物になっても、ひとりぼっちの新種族になっても、かつての情を捨て去らない。同情の余地がないラスボスだったカーズですが、彼にも友情はあったのだと、私は思います。

むしろさまざまな友情が渦巻く戦闘潮流の話だったからこそ、歪な友情を抱えたカーズは第二部のラスボスにふさわしかったのかもしれませんね。その執着こそがカーズ自身の敗因となったわけですが。

最後に~四部から見てよかったわ


くり返しになりますが、筆者は第四部をすでにアニメで観ています。その時から今回の第二部はとても楽しみにしていました。

「ジョセフじいさんの全盛期が見たい」という気持ちからです。

第四部では若き日の見る影もないボケ老人として登場するジョセフ・ジョースター。しかしアニメ13話ではすばらしい機転を見せ、とある赤ん坊の命を救います。

見ず知らずの赤ん坊のために命をかける勇気と、主人公の仗助すら思いつかなかったその閃きに、私はすっかり魅了されたのです。

そして第二部でのジョセフ・ジョースターは、私の期待を大きく上回るヒーローでした。
スペックでは圧倒的に負けている柱の男たちとの戦い。それを策略とハッタリと勇気で切り抜けていくその姿は、第四部で私が夢中になった東方仗助を思いださせるものでした。

第四部の主人公でありジョセフの息子でもある仗助もまた、その見た目とは裏腹に、土壇場のアイディアで戦闘を進める頭脳派ファイターです。

本来は「ジョセフの息子」として仗助を見るのでしょうが、私は逆に「仗助の父親」としてジョセフ・ジョースターを見たわけです。

動かないドラマ→四部→一部→二部とジョジョを楽しんできましたが、この順番だからこそ、策略家ジョセフ・ジョースターを思いっきり満喫できたように思えます。

ほかにも、

「ジョセフはシーザーを失ったが、仗助は億泰を失わなかった」

「第二部最終回で『日本人嫌い』とか言ってるけど、時期的にもうジョセフは朋子さんと浮気してるのでは?」

などなど、第四部を知っているからこその捉え方もできました。
入門の順番がテキトーでも楽しませてくれる『ジョジョの奇妙な冒険』の懐の深さに、あらためて心から感謝したい気持ちです。

さて、第四部といえば第三部の主人公・空条承太郎も出てきましたね。
杜王町では頼れる大人として、仗助たちをサポートしてくれた承太郎さん。彼が主人公である第三部とは、いったいどんな物語なのでしょうか。


いやマジでどんな話なの。

あとディオはジョナサンとあんな終わり迎えといてどのツラ下げて蘇るんだよ。

今回はこのへんで。ではまた。


※備考

 第二部を楽しんでいたナマの反応はこちらからどうぞ。

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