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「岸辺露伴が男子高校生にウザ絡みするところを見たかっただけなのに」-ジョジョ四部感想覚え書き-

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出典:Amazon.co.jp(https://www.amazon.co.jp/dp/B01DSV9KDU)

みなさん、ジョジョ四部って読みましたか?見ましたか?私は2021年12月30日まで読みも見てもいませんでした。ジョジョを通らず育ってきた人間です。

あの日の私はただ、年末年始にSNSを中心にまことしやかにささやかれる『岸辺露伴は動かない』が少し気になっただけ。だからドラマを見始めて第1話で「畳の縁~~~~!!!」とその面白さに夢中になっていただけなのです。

そんな私に、こんな話が飛びこんできました。

「岸辺露伴がめちゃ頼りにしたりウザ絡みしたりする男子高校生がいるんですよ」


岸辺露伴がウザ絡み?男子高校生に?高橋一生が男子高校生に「尊敬」だの「親友」だのと言うと?

なんだそれ幻覚か?


「動かない」のあまりの面白さ、完成度の高さ、顔100点才能1000点良心-1億点岸辺露伴の不思議な魅力に捉われた私の脳みそに、その言葉は鮮烈に届き、これでもかとかき回しました。

「岸辺露伴が男子高校生にウザ絡みするところが見たい」


その一心でジョジョ四部をアニメ(1、2巻部分のみ漫画原作)を見始め、2022年の正月三が日が過ぎ去るころに完走しました。


いやはや。


メチャクチャ面白いなこの作品。


ジョジョ四部ここが面白い①仗助が二面性ヤバい


くり返しになりますが、私は「岸辺露伴が男子高校生にウザ絡みするところを見たかっただけ」でジョジョ四部を見始めました。

ところがどっこい岸辺露伴が登場するはるか手前、主人公・東方仗助に夢中になっていたのです。

まず東方仗助、頭がいい。あのリーゼント学ランの見た目で頭脳派ファイターです。それだけでもう無理でしょ。

しかも「なんでも直せるスタンド」ことクレイジーダイヤモンドを、


「じゃあどてっぱらに穴開けてすぐ直せばよォ~~~腹ン中のスタンドを除去できるよなァ~~~!?」


そのセンスなに?


「自分は直せねえが口内のゴム手袋は直せる!」


そのバトルセンスはなんだ?承太郎さんが来るまでスタンドが使えるだけの一般人だったってどういうことだ?

その明晰な頭脳と決してくじけない精神力から繰り出されるさまざまな名勝負。
私は正月元旦の朝にパンツ履いてスタープラチナに情けなく助けを求めるリーゼントとしか思ってなかった自分を恥じました。

そんな東方仗助ですが、それでも根っこは日本で生まれ育った一介の男子高校生。非日常バトルの合間には「日常」の顔ものぞかせます

スタンド「ハーヴェスト」を持つ重チーと出会う回はとくに印象的で、なんと500万円の宝くじをだまし取るためだけにクレイジーダイヤモンドを使うのです。
詐欺目的で固有能力を使うジャンプ主人公がいるらしい。いやジャンプ主人公そういうの結構いたわ。両さんとか。

その後はひどい目にあいながらも最終的に166万6666…円を手にした仗助。
ほかにも実の父親から小遣いをねだるためにクレイジーダイヤモンドを使ったり、その実の父親を「親父」とどうしても呼べず距離感を掴めなかったりと、なんとも年頃の男子らしい俗っぽさを兼ね備えたキャラです。

ヒーローの顔と、普通の男子高校生の顔。そのふたつの顔が当たり前に同居している人間らしさ。それが私の感じた、東方仗助の最大の魅力です。

日常と非日常が境界なく混じりあう杜王町を舞台とした、ジョジョ四部の主人公にふさわしい個性ではないでしょうか。

PS.アニメEDの作画イケメンすぎるだろ。

ジョジョ四部ここが好き②広瀬康一には「納得」しかない


再三のくり返しですが、最初は岸辺露伴がウザ絡みする男子高校生目当てでジョジョ四部に手を出しました。

そんな動機の根底にあったのは、

「岸辺露伴がそんなデレデレする男子高校生ってどんな奴だよ……?」

「動かない」ドラマの岸辺露伴は基本的に人付き合いが悪いです。編集にはそっけないし、同業の漫画家には冷たいし、そのくせ面白そうなイベントにはすぐ食いついてひどい目にあう通り魔読書魔です。

ドラマから入った私からすると、他人とのコミュニケーションを積極的にとるイメージがまるでなかった岸辺露伴。

彼をそこまでさせる男子高校生とは、広瀬康一とは、いったい何者なのか?



これに尽きます。

前提が間違っていました。そもそも広瀬康一くんは岸辺露伴だけでなく、誰彼かまわず惚れさせてしまう好感度モンスターだった。それが私の結論です。

なにがすごいって、そのクソ高好感度を読者/視聴者に納得させてくる動きがとにかく多い。

最初はけっして戦闘向きではないエコーズを発現した康一くん。「音を貼りつける」って、だからなんだ?そう思いました。

でしたが、彼はそれを理由に戦いを避けたりしません。むしろ積極的に街の異変にかかわっては、仗助にも劣らない機転でエコーズを活用し、危機を突破していきます。
「弱い」と「戦わない」がイコールではないキャラは無条件でカッコイイ。みんな知っているね?

康一くんで特に印象的なのはシンデレラ回でしょうか。康一くんに恋心を抱く山岸由花子は、彼を振り向かせるために辻彩の「愛と出会えるメイク」を受けます。

最初はメイクの力で康一くんとの距離をぐっと縮め、とうとう康一くん自身も由花子を好きになります。
しかし、由花子はメイクの代償として、自分自身の顔を失ってしまい、だれともわからぬ醜い顔に成り果てました。

自分の顔を取り戻せなければ由花子は一生醜い顔で生きなければならない、と知った康一くんはこう言いました。

「『エコーズ』の目を傷つけて、ぼくの目を見えないようにしてください」


「(由花子が)違う顔になったら、きっと僕に見られるの嫌だと思うんだ」
「僕、由花子さんのこと好きになっちゃったもんで」
「そうなるの、すごく嫌なんです」


「だから、僕が見なけりゃすむことだろうと思うので!」


SHIT!!!!(康一くん好感度メーターが上がる音)

一事が万事こんな調子。康一くんは、とにかく自分のやりたいこと、すべきことを曲げない男です。
障害が高くても自分が傷つく未来が見えていても、それを言い訳にせず目標に向かいつづける精神が康一くんにはありました。

康一くんは最終的に岸辺露伴、山岸由花子、そして承太郎さんに「君と出会えてよかった」とまでいわせる好感度モンスターにまで成長します。
最初は冴えない一般人だった彼が奇人変人に好かれるその姿。ともすれば「ご都合主義」とも言われかねないはずのキャラ設定を背負った康一くんには、ただただ納得しかありません。

そりゃ岸辺露伴がウザ絡みしても親友呼びしても尊敬の念を隠さないのもわかるわ!と。

ジョジョのここが面白い③吉良吉影はRiJ(RTA in Japan)に出ろ

「とても狡猾な殺人鬼」

それがジョジョ四部のラスボス・吉良吉影への第一印象でした。

なにせ前フリからして「15年間も逃げ延びている」「被害者から切りとった手を持ち運ぶ大胆不敵さ」「同僚から影の薄い男と認識させる生活態度」「森川智之」と、いかにも計算高さをぷんぷん匂わせているじゃないですか。

しかし実際に本編に登場するやいなや通りすがりの中学生に被害者の手をパクられて焦り、さらには通りすがりの一般人を装うも仗助のクレイジーダイヤモンドを知っている素振りを見せて正体バレ、顔を変えて別人になりすませば主人公たちとは一切関係ない場面で金庫の番号を聞かれて汗をかく

成り済ました男の筆跡を自室で練習していたら息子に疑われる

その息子に追い詰められてカッとなり殺害する

勝利を確信して本名を名乗ったら主人公に聞かれていた

etcetc……。

 
このラスボス、とにかくガバが多い。
そしてそのガバを補ってなお余りある強運の持ち主なのがまたタチが悪い。体育倉庫では体育教師が現れ、川尻早人を殺せば時間を爆破しすべてをやり直すバイツァ・ダストが発現する。

RTA走ったらものすごいミスするけどTASが魅せるような神リカバリを偶然で発動させてそう。
それが吉良吉影に対するいまの私の印象です。でも吉良はRTAのような気の休まらない遊びはしなさそうですね。平穏もへったくれもないし。

そう、平穏です。吉良吉影の最終目標は、ただ平穏に生きること。ファンタジーのラスボスとしては少々チンケな気もしますが、むしろ相応なのかもしれません。

ジョジョ四部は日常に潜む闇をテーマにした伝奇である、と視聴中に教わりました。ならば、その最後の敵が自分なりの日常をこよなく愛する異常者というのは、なんだかしっくりきます。

仗助がじいちゃんの意志を継いで杜王町の平和を守ると誓ったように、吉良は人を殺さずにはいられない人生を静かに暮らしたい、と考えていた。
「正義の反対はまた別の正義」とはよく聞くフレーズですが、ジョジョ四部にあわせるなら「日常の反対はだれかの日常」と言いかえられる気がします。

ラスボスでありながら穏やかに生きたいという小市民のような目的。その実態は他人の人生を蹂躙しつづけている異常性。
どこまでもちっぽけスケールでとんでもない歪さを抱えていた吉良吉影は、私のなかでとても印象深いラスボスとして残りつづけると思います。

でもバイツァ・ダストはインチキ。

ジョジョのここが面白い④全部面白い


大変です。キャラ3人語っただけで3000字を超えました。ジョジョ四部には目立つネームドキャラだけでざっくり20人はキャラがいたと思うから……このままでジョジョ四部の話だけで20000字になってしまう!?

さすがにキリがないのでトニオさんがいかにジョジョ四部の世界観を広げてくれたかとか億泰がバカなりに必死に考えている真摯さとか

岸辺露伴は漫画でもドラマでもどうしようもねえし「だが断る」の一貫性にはド肝抜かれたわ
とか

オメーこんな終盤も終盤のド終盤に川尻早人とかいう主人公を投入するってなに考えてんだペース配分ってモンを考えてくださいよォーッ!!


といった話はまた機会にさせていただきます。

あらためてジョジョ四部こと『ジョジョの奇妙な冒険第四部-ダイヤモンドは砕けない-』。本当にすばらしい作品でした。
ドラマ『岸辺露伴は動かない』から入り、「岸辺露伴が惚れこむような男子高校生とは何者なのか」なんて不純な疑問を抱いてのスタートだったにもかかわらず、心から楽しませていただきました。

調べてみたところ、四部は1992年から1995年のジャンプで連載していたようで、2022年から数えて30年近く昔の作品になります。
いま現役でたくさんの人を楽しませているあの漫画、アニメ、ゲーム、各種コンテンツの奥底には、ジョジョ四部のエッセンスが流れるものも少なくないでしょう。

「むしろこれが土台にあるなら、いまのアレやコレだってそりゃ面白いに決まってる」

ジョジョ四部を今更ながら知った身としては、そんな気持ちすら抱きます。他のシリーズでもこう思えるのか、いまから楽しみですね。

それでは今回はこのへんで。ではまた。


※備考

https://togetter.com/li/1826038

動かない含めジョジョ四部を楽しんでいた時のナマの反応はこちらから。

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